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ルート・スライム

 結局その日のうちに帰ってきてしまったのでそのまま次の街なり村なりを目指そうと思ったがユースベルが王と話をしたいと言うから次の日に見送ることにした。リカエルもリカエルでユースベルと話すのを何気に楽しそうにしていたのでまぁいいかという気分にさせられた。別にユースベルを連れて行かなくてもいいんだけど、ユースベルがついて行きたいと言っていたのでそうなった。

 そうして、俺はリベルを伴ってスライムの階層にやってきていた。増えに増えて十万を超えるようにスライム達を確認しにきたのだ。できるなら眷属化してダンジョンコアの守護を任せたい。


「と、いうわけで来てみたはいいが多すぎるな」


「そうですね。何でこんなにいるのに放置したのか」


「……めんどくさいし、管理する存在でもないだろ」


「そういうことをしているといつかダンジョンを攻略されますよ」


 全くもってリベルの言うとおりなのだが釈然としない。十万を超えるスライムをどう整理しろというのか。まぁともかく今回はそれを目的の一つとして捉えておこうか。

 さて、これからめぼしいものを見つけていこうと思う。


「……手伝ってくれるか?」


「はぁ……分かりました。後で覚えておいてくださいねお兄ちゃん♪」


 早まったかなぁとか思いつつもこの量ではリベルに頼るしかない。そのうち知能を持った眷属にスライムの管理を任せたいのだがそうそううまくいくわけがないのは分かっている。スライムにそういうこと個体がいれば話が早くて助かるのだけどな。

 リベルと分かれて一つ一つ見ていく。鑑定の魔法でスライム一匹一匹を見る作業もなかなかに地味だ。

 基本的にスライムは属性種と亜種とか変異種とかいうのに別れている。属性種というのはそのままの意味で属性を持ったスライムのことだ。属性には火、水、風、土、光、闇の六種類がある。これらは魔法にも同じ属性があり、属性種はそれぞれの属性をどれか一つを持っている。特徴としてはその属性にあった魔法を使えることだ。火であれば赤色、水であれば青色、風であれば緑色、土であれば茶色、光であれば白色、闇であれば黒色の体になっており一目見れば分かるようになっている。

 ここに来る前にリベルに聞いて分かったのだが野生のスライムにはそんな属性は見ないそうだ。というのも進化する可能性が少ないし、その前に魔物に倒されることが多く、発見されることが少ないからだそうだ。

 そういう意味ではここにいるスライム達は貴重な資料になるだろう。冒険者ギルドなるものがあると聞くし、スライムの生態系なんか調べる奴がいないのでそこに渡せば金になりそうだ。まぁもちろんそんなことをする気はない。人間に魔物の情報を寄与してやるほど俺は人間味溢れてはいない。今では立派なダンジョンマスターなのだ。スライムを研究して逆に殺す為にスライムの間を作り上げる計画まで建てている。ちなみに階層数は十一だ。リカエルを倒しても真ボスはスライムでしたというオチを地で行く俺のダンジョンを作り上げる。俺は今そう決めたのだ。

 俺は火属性のファイアースライム、水属性のウォータースライム、風属性のウインドスライム、土属性のアーススライム、光属性のライトスライム、闇属性のダークスライムを適当に良さそうなのをそれぞれ一匹ずつ選び、自分専用の部屋に戻った。


 部屋に戻ると早速スライム達のレベルや覚えてる魔法などを調べる。特別珍しい魔法もなく何となくがっかりしていた俺のところへリベルがやってきた。


「あ、こんな所にいたんですね。ほら、すごいスライム発見しましたよ」


「なんだこの微妙な色のスライムは」


 まさに微妙な色なスライム。なんといえばいいのか分からない。鈍色とでもいいのか?いや、そもそも鈍色とは何なのかすら分からんのだけど。

 分からないのであれば調べればいい。早速鑑定を発動する。すると驚くべきことが分かった。


「こいつ、賢いのか?」


「それはどういう意味です?」


 リベルが疑問に思う中で俺は思考に耽る。このスライムの名前はルート・スライム。魔法は並列思考とスライムの王の称号があった。

 ちなみにだがこの世界ではスキルと呼ばれるものがあり、その中には魔法も含まれる。中には魔法とスキルを別物だと言う奴もいるそうなのだが、俺達の場合は何故か全部魔法と呼ばれるようになっている。これは人間とダンジョンマスターの違いであるとしか今は分からない。ややこしいので俺達の魔法のことをアビリティとでも呼んでおこうと思う。使える能力には差はないので別にスキルと呼んでもいいんだけど、まぁそこは突っ込まないで頂きたいところ。どうせ俺とリベルと知性を持った知性位にしか使われない訳だしね。


「このスライムのアビリティは並列思考と称号にスライムの王がある。こいつは指揮するために生まれてきたとしても過言ではないスライムだな。原初のスライムというだけはあるのか?」


「それはすごいですね。スライムの王はスライムをまとめあげる者に与えられる称号みたいですよ」


「そんなことまで分かるのか。それも神の知識か?」


「はい。忌々しいですけど、その通りです」


 どういう思惑で神はリベルにそんな知識を与えたのか。もしかしてミスって与えたとかだったりしてな。いや、そんなことはないか。何にせよ、あるに越したことはない。役に立つ物は何でも使わせてもらう。俺に迷いはない。リベルのためになるのだから。


「じゃあ眷属にしよう。スライムの王なら充分にその力を発揮してくれるはずだしな」


「む、ついに他にも手を出すんですね。私だけではなくなるのですね」


「……そんな言い方されたら眷属にできないじゃないか」


 くそ、何だこのしょんぼりした可愛い生き物は。まるで天使みたいじゃないか。こんな奴が俺の嫁だとか未だに信じられない。俺はどうすれば……どうすればいいんだ。


「冗談ですよお兄ちゃん。そんなに必死に悩まれたら私も困ります」


 どうやら冗談らしい。質の悪すぎる冗談だ。俺のリベルを危うく泣かせるかの瀬戸際かと思うほどに悩んだのにそれほどあっさりと嘘だと言うのか。リベルよ、お兄ちゃんはそんな子に育てたおぼえはないぞ。


「お兄ちゃん、心の声が漏れてますよ。……その、ありがとう」


「うん、許そう。お前は俺の使い方を分かってるな」


 駄目だなこりゃ。リベルが可愛いすぎて何でも許してしまう。これではリベルの尻に敷かれてしまうではないか。リベルはリベルで俺にデレデレなので問題はず。

 そんなことはさておき、まずはルート・スライムの眷属化である。眷属化するに当たっては本人の了承がいる。リベルの時は強引にやったので気絶した。叛逆の意思を習得させた後に気絶したので我慢すれば耐えれるかもしれない。すぐに気絶することは決まっているが。

 というわけでルート・スライムに聞いてみた。何とも言えない色のスライムが跳ねている。どうやらいいらしい。本当にいいのかどうか判断しかねる所だけど、とにかくそういうことにしておこう。


「眷属指定・ルートスライム」


 これでルート・スライムは俺の眷属となった。魔力で繋がる感じが伝わってくる。俺がなんとなく感心しているとルート・スライムがいきなり光り出して煙に包まれだした。びっくりして目を閉じていたがやがて目をあけるとそこには侍風の男がそこにいた。

 侍風の男は俺の前で膝をつき、口を開いた。


「我が主よ、眷属にしてもらったこと誠に感謝いたす。我が身を最大限使い、尽力する事を誓おう」


「お、おう。よろしく頼むぞ。つか、おまえはルート・スライムなのか?」


「はい。自分はルート・スライムでございます」


 何というか忠誠心篤い部下みたいな侍風な男がルート・スライムだとはな。いつまでもルート・スライムと呼ぶのもなんだし、ここは名前を付けてみるか。

 そうだな……。


「ディレク……ディレクだ。お前の名前はディレク。これからお前にはスライムの指揮を執ってもらう。全てのスライムを選別して十一層に配置してそこを守れ」


「承りました。我が身の全身全霊にかけて守り抜きましょう」


 そういってルート・スライムことディレクは去っていった。リベルの方を見てみると口を開けて惚けていた。びっくりしすぎて開いた口が塞がらないといった感じだ。俺も驚いているには驚いているが人っていうのは他人がパニクっていると冷静になるようにびっくりしていても自分は冷静になれるようだ。


「おーい、リベルどうしたんだ」


「はっ、まさか人化するなんて思いもしていませんでしたから。お兄ちゃんどうやったのですか?」


「どうやったもなにも普通に眷属化しただけなんだが」


「そんなことで人化されたらたまりませんよ。全くお兄ちゃんは規格外でど阿呆ですよね」


「……ど阿呆なのは否定しないよ」


 割と自覚はあったりする。リベルのために何度も気絶したし。可愛い可愛いリベルの為なら何でもしてしまうってものだ。俺の心がそうさせるのだから仕方ない。


「まぁ何にせよこれでようやく一人目か。リベルは俺のそばにいてもらわないといけないしな」


「今でも充分だとは思いますけど」


「それでも神には勝てないさ」


 神はリカエルの力を使って初めてどうにかできる存在だ。そのリカエルの力も多大な犠牲を払わないと使えない。人の身と言っていいのかは分からないが神の力を受け入れるのには器が足りないとかそういうわけで代償がいるのだろう。そんな相手に用意しすぎるっていうのは有り得ない。例え、人間との戦争を起こされたとしても片手間に滅ぼせる程度には戦力を整えるつもりだ。できれば戦術級の戦力が欲しいところだ。何体もいれば何局もの戦を同時に行うこともできる。そこまでするつもりはないのだが備えあれば憂いなしであるし、何が起こるか分からない。どちらにせよ、無いよりはあった方がいいのだ。


「リベル、こっちこいよ」


「お兄ちゃん」


 リベルをいつものように抱きかかえる。暖かいリベルの体温が俺の心を落ち着かせる。神に届く為の布石はこれからいくらでも打つ必要がある。そのためにもまずは俺自身の力も強化していかなければならない。

 リベルの頭を撫でながらまだまだゴールが見えない神殺しの道のりに俺は溜め息を吐くのだった。

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