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神憑もの達  作者: 桐地栄人


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第六話

 桜が舞い散る季節。

 新しい制服に身を包んだシークは、セントラル学園の巨大な門をくぐる。


 新入生と思われる生徒達が明るい表情でシークと同じように学園の正門をくぐっていく。

 そして彼らと並んで一目見ただけでわかる高級ない服に身を纏い、周囲に見せつけるように大きな宝石がついたアクセサリーを身に着けたこの国の重鎮、もしくは巨大な企業の重役と思われる彼らの親達が横を歩いていた。


 世界最大の大国、ヘリオス国が誇る国一番のエリート校だけあって、入学式に参加する親も子も纏うオーラが違う。


 親子で歩く生徒達が明るい表情で歩いていく中、ただ一人、付き添いもないシークは周囲を観察しながら歩く。

 そんな周りの様子をシークの影の中で見ていたヨミがぼやく。

 

『馴染めそうにないのぉ、シーク』

「……」


 シークは無言で歩く。

 馴染める馴染めないではない。馴染まないといけないのだ。

 

 辺りをちらりと見渡せば、明るい表情の生徒ばかりではない。

 周りの雰囲気に委縮して、緊張気味に端っこを歩いている新入生もちらほら見える。

 一緒に歩いている親達も肩身を狭くしながら歩いている。

 

 おそらく彼らはお金持ちや国の重鎮などではない一般家庭の生徒なのだろう。


 シークはこの国のことをよく知らない。シークが元居た国とは違うからだ。

 世界最大の国のため、その情報はある程度聞き及んでいるが、そこで暮らさないと分からないこともあるだろう。

 それ故、まずは情報収集から始めなければならない。

 

 そのための友達作りから始めよう。


 そう思ったシークは、新入生に声をかけようとした。


 だが、それよりも早く背後で起こった騒めきに動きを止め振り返る。


 振り返ったシークの視線の先では、ふくよかな体型をした男子とその両親、そしてその前を肩で風を切りながら堂々と仁王立ちをする一人の少女がいた。


「控えよ! ここにおわすは偉大なるミネスト家が代々崇め奉るコロネオ様である!」


 コロネオと呼ばれたその少女は巫女のような格好をしており、この学園の制服や大人達がきているスーツの中では浮いた存在だった。


 しかし、まとうオーラは間違いなくここにいる生徒達の誰よりも神々しく、そしてきらやかだった。


「コロネオ……土地神か……」

『かっかっかっかっ! 土地神如きが早速威張り散らしておるな! 滑稽すぎて笑いが止まらぬ! かっかっか!』

 

 ジンから今年入学してくる可能性のある神憑とその神のリストは頭に入っている。


 コロネオというのはこの国の中都市の一つで崇められている神だ。


 神の序列は全部で6つ。

 第0位階始原神。

 第1位階原理神。

 第2位階上位神。

 第3位階中位神。

 第4位階下位神。

 第5位階眷属神。


 土地という場所に縛られる土地神というのはこの中でも一番下の眷属神に分類される。


 つまり、神の序列としては一番下なのだ。


 例外として土地神が収める土地に座す時は第3位階である中位神レベルにまで格上げされることがある。


 とはいえ、ここセントラル学園がある土地はコロネオが守護する土地ではない。


 今のコロネオは第5位階相応の神である。

 神格としては一番下。


 しかし、それでも新入生達は波が引いていくかの如く端によっていく。


 その様子を見たコロネオとその神憑と思われる少年とその両親が我が物顔で道の中心を歩いていく。


「ふぁーっふぁっふぁー! 愉快愉快!」

「オホホホホホ!」


 シークも周りの空気を読んで端っこにより道を空ける。


「……」


 目の前を通っていくコロネオと神憑の一族達。

 それらを横目に眺めながらシークはため息を吐く。


(これを何とかしろってことか? 面倒くさそうだな)

『人間が神を崇拝するのは当然のことじゃ。何の問題もなかろう?』


 シーク達の固有能力は神によって授かるもの。それ故、この世界の能力者達はほぼ全員が何かしらの神を信仰しているといっても過言ではない。


 もちろんここにいる生徒の多くはコロネオを信仰していない。しかし、ヘリオス国の国民としてこの国の神の怒りに触れてしまえば、ヘリオスでは生きていけない。


 それはこのヘリオスだけに限った話ではない。どこの国でも大なり小なりあるものだ。


 超能力無くしてこの国の生活は成り立たない故、その立場が逆転したり平等になることはない。


(そんなことはジンもわかってるだろうしな)

『つまり、解決すべきは他にあるということじゃな。かっかっかっ! 楽しみじゃのお!』

(全然楽しみじゃない……)

 

 二人で冷静に分析しながら心の中で会話する。


(まあこの程度なら思ったより楽な仕事だな。最悪ヨミがいるし)

『我? シークの依頼なんじゃからシーク一人で解決すべきじゃろ? 我は力を貸す気はないぞ』

(急に?)

『かっかっかっ! 冗談じゃ!』


 シークとヨミの間で冗談を言い合う。


 だが、この学園の闇の深さを、この時のシーク達にはまだ知る由もなかった。

 

 

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