第22話「リーネの攻略はケインのスローライフのためにある!」
4/8 -- 2017/09/22 15:00
戦争VRゲームでのリーネの活動を用いたPVは、結局、FWOの宣伝にしかならなかった。当たり前である。アバター互換によるログインとはいえ、『リーネ・フリューゲル』はFWOのアバターである。
まあ、だからこそ、私をプレイヤーとして獲得したかったんだろうなあ、あの社長。それはあり得ない。ケインも一緒なら少しは考えるが、あの世界にケインの居場所はない。スローライフ要素が皆無だ。
「フィギュア販売も、断った」
「そ、そうですか、良かったです」
リーネのフィギュアの件も、結局私が直接断った。はあ…まあ、しょうがないか。これが、田中さんだ。やり手の社長のイメージは、きっと高橋さんも嫌がるかもしれない。
「戦闘マニュアルのオリジナル言語版も、手に入れた。あのプレイヤーに、見せてみる」
「何かわかりますかね?あの行方不明の社員については、当局に任せてしまった方がいいと思うのですが」
「あくまで、情報収集。何かわかったら、すぐに提供する」
まあ、その情報を個人的に使わせてもらうことはあるかもしれない。あくまで、仮想世界でのみね。
◇
定常活動に戻った、FWOでの活動。
―――この世の全ての魔を、攻略する。
リーネとしての私は、攻略して攻略して攻略する。ケインの新作収納セット、収納セット!
リーネの攻略はケインのスローライフのためにある!るんるん。あ、ミリーが引いてる。無表情なのが逆に怖いって、今更でしょ?
そして、ケインとしての私は。
「どうだい?」
「確かにこれはあの国の資料だが…すまん、詳しいことはわからん。傭兵といっても、あくまで趣味でな」
そりゃそうだ。
あの傭兵プレイヤーに、無理言って日本サーバに接続してもらった。リーネはボス攻略なので、ケインが対応。
でも、なんで野武士アバター?
「日本ならこれだろう!」
そうなん?
そう言えば、あの男の子も、刺し身とかお寿司とか、外国ではわかりやすい日本文化を志向してましたな。
「しかし、あんたもウチの方の言葉がわかるんだな。どうだい、今度こっちのFWOに来てみないか?」
「そうだなあ…リーネに聞いてみるよ」
「おう、リーネちゃんが来てくれれば、俺の仲間も喜ぶ」
ケインのスローライフ活動なら、帯域制限がある外国サーバへの接続でも問題ないだろう。
リーネも多少は討伐活動をするだろうけど、たまにはケインに付き添うだけでもいいかもしれない。
ん?なんか、一緒に海外旅行するみたいな感じだな。新婚旅行?一応、リーネとケインは夫婦っぽい設定にしてるし。プレイヤーはひとりだけどね!
◇
「それは面白い企画ですね!やりましょう!」
「記録、撮るの?」
「もちろんです!うまくすれば、映画のフィナーレが飾れますよ!」
リーネとケインとして、あの男の子や傭兵プレイヤーの住む地域のFWOローカルサーバに行くことを話したら、意外なほど乗り気だった。
「原点に戻るというだけですよ。映画はもともと、リーネとケインのロマンスが中心だったのですから」
「なら、本当にそうすれば」
「ああ、すみません、『リーネとしての春香さん』とケインのロマンスですな」
ちっ、ズラせなかったか。
まあ、海外ロケもしようとしていたくらいだし、大学生活の都合でそれが叶わないのなら、あの男の子のように、今度は私達の方からVRで出向いてもいいだろう。
ああ、そういうことなら。
「この間のメンバーも。ミリーとビリー、ミッキーと田中さん…『上司』さん、伊藤先生も」
「まあ、妥当ですね」
両親は旅@FWOの途中。あと、だいぶ仲良くなった民族資料研究会、民資研の先輩方も誘いたいけど、さすがに多いか。ていうか、現地サーバで『あーん』やられたらかなわん。
◇
早速、現地サーバへの転移の話をミリーとビリーに伝える。
「うおー!俺達、海外旅行したことなかったんだ。VRとはいえ、楽しみだぜ!」
「でも、結局FWOでしょ?別サーバだけど」
「エリア構成は、同じ。けど、街の作りやアイテムは、その地域独自」
「案外、江戸の城下町風かもね。日本サーバが中世ヨーロッパ風にしてるように」
食べ物くらいは現地風がいいかなあ。日本サーバの刺し身や寿司みたいにね。
「あれ?そういえば、その地域の言葉って、簡易翻訳モジュールが対応してなかったよな?」
「頑張った。伊藤先生と民資研の先輩達とで」
「うわあ」
「一緒に行く伊藤先生はともかく、民資研の方々にはお土産アイテムをたくさんもらってこないとね」
というわけで、リアルの今週末にみんなでその地域のサーバに接続することにした。
時差があるけど、10倍速なら長くても延べ6時間くらいの接続でいいよね。今回はボスもいないし。




