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第18話「男のロマンだろう!運営は何もわかっちゃいねえ!」

 要は、サバゲーかガンアクションゲームのVR版だろう。そう舐めてかかると、すぐに光の粒とされる。様々な『担当業務』をこなしつつ、自分の身は自分で守らなければならない。


『第3小隊、右翼に展開』

「了解。第2分隊は後方で待機、30秒後に前進。第1分隊は、私と共に前進」

「「「了解」」」


 無線交信で指示を受けたり出したりしながらの陣形戦術。事前に仕掛けられた罠を避けつつ、相手にも罠をしかけていく。

 そして、対人戦闘。遠距離からの銃、近接でのナイフによる攻防。本来の戦争よりも多種多様な攻守で乱戦気味だけど、『殺し合い』には違いない。


 タタタタタタ!

 ドドドドド!


「があっ!」

「あっっ!」


 しゅっ。

 さっ。


「かはっ」

「ごふっ」


 まあ、この辺はFWOと同じく、アバターはスプラッタなことになる前に光と化すのだけど。だから、このゲームは一応、R18ではない。R13ですらなかったっけ?

 ちなみに、このVRゲームにNPCは皆無である。FWOが生産職プレイヤー増加の結果、NPCを減らしているのに対し、ここでは、通信業務や兵糧整備もプレイヤーが担っている。うん、本当に『実地訓練』のようだ。


「作戦終了。これより帰投する」


 リーネとしての私は、ふたつの分隊を率いる、歩兵部隊第3小隊隊長としての役回り。FWOのパーティよりも大規模で、得意としてきた剣技は使えない。戦闘は、単純に『佐藤春香』としての経験に基づくプレイヤースキルに依存している。

 18歳の乙女が戦闘経験アリってどうなんだって思うかもしれないが、私は本当に、本当にいろんなVRゲームを『リーネ』として長年体験してきた。現実では通用しないであろう(・・・・)技術も、VRでは割と役立つのだ。今回はある意味、嫌な役立ち方だが。


 ―――この世の全ての魔を、攻略する。


 だから、この言葉が聞こえない。この仕事はさっさと終わらせよう。終わらせたい。



 作戦を終え、兵舎に設置のシャワールームでシャワーを浴びる、リーネとしての私。


 …いや、ちょっと待って。戦闘専門のVRゲームなのに、なんでシャワールームがあるのよ。しかも、なんかヤケにリアルな作りで。

 このVRゲームはFWOとアバター互換があるから、なおさら奇妙な気分である。FWO内第1エリアの高級宿屋なら、雰囲気作りとして必要かもしれないけど。

 まあ、気分だけでもさっぱりしたつもりになるかもしれない。いや、やっぱりわからん。


 とりあえずシャワーを終え、戦闘服ではなく部隊の制服を着て、シャワールームを出る。ログアウト前の打合せのため、部隊のミーティングルームに向かう。


「なぜ、なぜ通路の先に進めなくなるんだよ!男の時は入れただろ!」

「こういうシーンは男のロマンだろう!運営は何もわかっちゃいねえ!」

「せっかく、無理してシャワー勧めたのに…意味ねえ…」


 そのミーティングルームで、同じ部隊の野郎共が床を叩きながら、なにやら意味不明なことを叫んでいた。シーンって何よ。

 ああでも、なんかこの辺はFWOでの攻略パーティの男連中に雰囲気が似てるなあ。ボス攻略しか興味ないから、ミリーのことしか気にしたことないけど。



「素晴らしい!これほど見応えのある戦闘シーンは、当社の記録でもこれまで見たことありませんよ!」

「FWOでの戦闘よりも、地味。私にとっては、派手なのも困るけど。あと、あくまで素材」


 戦争VRゲームの社長が直々に、私の協力に関する成果の確認。小さめの会議室に置かれている映像モニタには、私を含めた第3小隊の活動記録が映し出されている。


「佐藤様、やはり我々の専属プレイヤーに」

「お断りします」


 当たり前だ。FWOで過ごすケインのスローライフとの落差が激しすぎる。

 ていうかね、ケインのゲーム内露店収入だけだと、新作アイテムの魔方陣パック収納セットがいつまでも手に入らないのよ。まさか『ハルカ』として買ってやるわけにはいかないし…ぶつぶつ。


「そうですか…。でも、お約束の期間は間違いなく続けていただけるのですよね?」

「一週間だけの、約束」

「本当に、お願いしますよ?」


 本当は、さっさと終わらせたいんだけど。ああ、田中さんのハイテンション交渉がなつかしい。田中さんなら、いくらトンデモ提案をしかけてきても、こんな風に押し付けがましくない。

 それと、アレよね。今回の協力報酬も値切りに値切ってくるよね、きっと。今回の協力はあくまでお試しということで、一通り参加してから報酬額を決めるとかなんとか。

 個人的には別に期待していないからいいけど、FWOグループからの派遣という手前、そう単純にはいかないという側面はあるのだが。


 なお、今日は最近すっかりリーネっぽくなってしまった『春香』モードである。営業用のお姉さん(小)は要らない。あくまで、プレイヤーのひとりとしてだから。

 …しかし、『春香』モード、かあ。本当の私はどこにいるんだろ。ん、このツッコミしてる自分かな?愉快な存在だな、本当の私。黒歴史更新中。



 夜に少しだけFWOにログインして、姉弟に現状報告。もちろん、ケインも傍らにいるリーネとして。


「早速出てたPVを見る限り、問題はないみたいだけど…」

「そうだな、お約束のシーンもなかったし」

「シーン?」


 部隊の野郎共もなんかそんなこと言ってたな。本当に、なんだろ。

 と、いうことを話したら、ミリーだけでなくビリーくんからも呪詛のようなものが垂れ流れてきた。怖さ、倍増。


「そういえばさ、今回のリーネちゃんの討伐…じゃないや、戦闘報酬はどうなるの?」

「報酬?さっき言った通り、『協力』後に評価されてまとめて」

「いや、戦争VRゲーム内での報酬だよ。仮想的とはいえ、現実世界っぽい通貨で払われるんだろ?」


 ああ…それがあったか。でも、FWO内貨幣にはコンバートできないんだよねえ。そもそも、レートが設定されてないし。

 でも、その方がいいよね。現実世界を介したら、面倒なRMT問題を引き起こしそうだし。


「そっか、戦場で稼いで貢ぐリーネはいないのね…。あ、でも、現実世界の春香は貢いじゃダメよ!」

「いや、以前から言ってるだろ、僕だってFWOから、アバター絡みの報酬をリアルマネーでもらってるって」

「ホントに?」

「ホント」


 と、いうことにしておこう。口座はひとつだけだけどね!

 ああ、そうそう。あの戦争VRゲームの社長、リーネの軍服&戦闘服のフィギュア出したいとかほざいてた。事務所(田中さん)が許可すれば、と言っておいたけど。

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