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現在、魔法使いは絶滅危惧種です。  作者: 絢無晴蘿
第二話 「音川がお前を守るという事は、こういう事だ。その意味をよく考えろ」
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もう一度、同じことは何度だって起こる。

彼が訪ねてきたのは、夕暮れ時だった。


「小時朗? ど、どうしたの」


なぜか、息を切らせた小時朗が、家に飛び込んできたのだ。


「すまん、菜奈を見なかったか?!」


菜奈ちゃん?


玄関の柱に手をついて休みながら、小時朗は言う。


「いや、見てないけど……どうかしたの?」

「い、いないんだ。お前がおれんち来てから、姿が見えないみてぇで……お前、なんかしらねえか?」

「いや……」


なんだか、意外だ。

普段のそっけない態度から考えられないような慌てぶり。

いや、あんな小さな子がいなくなっのなら、慌てるのは当然だけど、小時朗って、けっこう……。


「よく遊んでる所とか、行った?」

「行ったし探した。でも見つからねえんだ! くそ、あれだけ注意しろって言ったのに」


そう吐き捨てて、小時朗は走って行ってしまった。


「あ、ちょっと……」


ブロック塀を曲り、姿が見えなくなる。

こっちの話を聞けっ。


「……お母さん、ちょっと私も行ってくる!」

「あらあら……」


母に声をかけると返事も聞かずに外へ行った。

なんだか聞こえた気がしたけど、よく聞こえなかったし、ま、いっか。





道に出ても、小時朗はすでに走って行ってしまった後。

暗い通りには一人っ子一人いない。


「あぁっ。もうっ。……きになるじゃん」


菜奈の顔は覚えているし、公園でも行ってみるか……。


たしか、この辺に小さい子がよく遊んでる公園がある。

住宅街の間にある小さい公園。

知っている人は知ってて、学校をさぼったりしてる人がときどきいる穴場になってたりする。


そこには、誰もいなかった。

風で揺れるブランコ、傾いたシーソー。

小さな砂場には、誰かが忘れたスコップがある。


『―――――』

「?」


なんとなく、後ろを振り返った。

でも、誰もいないし、何もない。

それが、逆に恐い。


暗くなったと言っても、まだ七時。

なんで誰も歩いていないんだろう。

最近は物騒な事件が多いから?


「そう言えば、誘拐とかも多いんだっけ……」


まさか、菜奈ちゃんも誘拐された、とか?

あ、ありえない。

……事も無いかもしれない。


「は、早く探さないとっ」


先ほどよりも早足で、思いつく所に行こうとした。



――



「?」


耳鳴りがした。

なにかをくぐり抜けたような感覚。

なにが……?


「え……あ、れ?」


道を歩いていたはずなのに風景が……変わった?


「ここ……どこ?」


どこかの、暗く細いビルとビルの間の小道?

街中を歩けば、どこかしらにある風景になっている。

なんでこんな所にいるんだろう。


「まさか……」


学校の時と、同じ?

まさか、またあの化け蜘蛛っ?


あの時には気づかなかった違和感がある。

どこか虚ろで何かが足りない気がするのだ。

何が足りないのだろう。

考え込んでもわからないし、と、とにかく進もう。


そう、足を踏み出してみた瞬間だった。



ガツン



「?」


なんの音?

何かがぶつかったような、叩きつけられたような音だった気がする。

まるで、計ったようなタイミング……。


やっぱり、なんかしらの化けもんでもいるっていうのだろうか。

……もしかして、菜奈も此処に迷い込んだ……とか、ない、よね?


「さ、さっきの音って、向こうだよね……っ」


そうしていくうちに、また音が聞こえてくる。

今度は近い!

右にカーブして、分かれ道が現れる。


「もう、どっち?!」


また音がした。


「左かっ」


左に行くと何かが壁にもたれかかっていた。


「って、小時朗君?!」

「……音川?……っく、来るな!!」


額から血が出てるっ?!

制服はボロボロで、所々血が布を染めていた。


な、なんで?

さっき会ったばっかりなのに、どうしていつの間にこんな事にっ?


「それより、救急車っ」


ケータイを出して、番号を押そうとするけど、なかなか押せない。

手が、震えていた。


「あれ? 圏外? な、なんで?」


押し終わっても、圏外じゃ通じない。


「どうしてっ」


画面に向かってしょうもない叫びを上げる。


「音川! 逃げろ!!」

「え?」


ようやく、小時朗の声を聞いて前を見た。


「……っ?」


巨大な、コウモリ?

私よりも大きなコウモリ――って、そんなのいるのっ?!

真っ黒なボディはスラリではなく骨の輪郭が見えるほど痩せ、手はなくその代わりに骨と皮で出来たような翼がある。

その顔はコウモリのはずなのに、いびつに歪んでいる。

手首足首、そして首筋に異様な針金のような毛玉のようなものがついていた。


真紅の目が、こちらを睨みつけるように


『イタァーー』


笑った。



手を伸ばしてくる。

それなのに、動けない。


「っ、ふざけんな!!」


え? な、なに?

巨大コウモリに何かが体当たりをした。


「コ、コジロウっ?」

「バカか、お前。さっさとどこかに行けばいいものを」

「え、ちょっと」


なぜか、手を掴まれる。

そのままぐいっと、ひっぱられた。


「逃げるぞっ」

「う、うん」


走り出す小時朗に、慌てて従った。

なんか、変な感じ。

ありえないことが起こっているのに、どこか落ち着いている私がいた。

まさか、慣れ……い、いやな慣れだ。


「ま、魔法なんて、信じないんだからねっ!」

「はぁ?」


思いっきり小時朗に変な顔をされた。




よく考えたら、こういうときに音川輪がいないのってどういうことなんだ。

守るんじゃなかったの……?



暗い夜道。

見知らぬ場所。

追いかけてくるのは異形。

小時郎と二人、わけもわからないままに逃走劇が始まった。




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