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【完結】私を蔑み、冤罪を掛けた挙句に処刑? 私を陥れた奴ら全員、存在の痕跡さえ残さず無に還し、懺悔の呻すら踏み潰す。  作者: 逆立ちハムスター


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泥と血の果てに

木製の車輪が歪んだ軸を悲鳴のように軋ませ、不揃いな石ころが敷き詰められた悪路を跳ねるたび、私の身体は枷の嵌められた木枠の床へ無造作に打ち付けられた。


痛い。だが、その程度の感覚など、すでに私の体に刻まれた膨大な破壊の履歴から見れば、さざ波のようなものに過ぎない。


「おい、死んじゃいねえだろうな、豚が」


御者台の方から、帝国兵の蔑むような不快なダミ声が飛んでくる。鉄格子の隙間から差し込むわずかな陽光が、私の視界を不均衡に切り取っていた。視界――そう、私の世界はもう半分しかない。


左目の眼球はすでに存在しない。二年前、あのお方の機嫌を損ねた際、象牙の装飾が施された杖の先端で叩き潰されたからだ。傷口は適切に処置されることもなく放置され、爛れ、いまや黒ずんだ皮膚の窪みとなって私の顔面に醜悪な影を落としている。口を少しでも動かせば、奥歯と前歯が数本削ぎ落とされた歯茎がズキズキと不快な熱を主張する。言葉を発しようとしても、空気漏れを起こした笛のように間抜けた音しか出ない。


さらに惨めなのは、かつて美しいと持て囃された私の身体だ。

右袖の下から伸びるはずの肘から先は、いまや存在しない。引きちぎられたような断面は、粗雑な縫合痕によって醜く盛り上がっているだけだ。そして右足は、大腿骨が異常な角度で曲がったまま硬直し、皮膚の下で骨の破片が不自然な塊を形成している。歩くことなど到底不可能な、ただ引きずられるためだけの肉塊。


私は、フラミニア。

かつてはバルビティウス伯爵家の令嬢であり、いまやこのガルバ帝国において「最悪の女」「皇帝殺害を企てた不貞の暗殺未遂犯」として捨てられる、四番目の皇帝妃であったものだ。


「おいおい、崖に着く前にくたばられてちゃ、俺たちの仕事にならねえんだよ。皇帝陛下直々の命だからな。『あの醜い害虫を、断崖から叩き落として野犬の餌にせよ』ってな」


兵士たちの下品な笑い声が、風に乗って耳に届く。

崖。帝国北端に位置する、底も見えない断崖絶壁『無底の顎』。そこが私の終着駅らしい。


冷たい木床に頬を押し付けながら、私は潰れた左目の裏側で、私をこの惨状に追い込んだ男――この帝国の絶対的支配者であり、人間としての皮を被った怪物、皇帝カルプルニウスの顔を思い出していた。


カルプルニウス。その名は、帝国の歴史においてもっとも美しく、そしてもっとも凄惨な血の狂気に彩られた暴君として刻まれるだろう。


彼は、自らの妻となった女たちを、まるで消耗品かおもちゃのように壊しつくしてきた。


一番目の妻であったプリスカ様。彼女は偉大な公爵家の令嬢であり、慈悲深く気品に満ちた女性だったと聞く。だが、結婚して三年が経過しても男児を授かることができなかった。カルプルニウスはそれを「皇国の血脈に対する不敬であり叛逆罪」と決めつけ、彼女を宮殿の地下拷問室に閉じ込めた。自ら鞭とナイフを取り、毎夜彼女の肉を少しずつ削ぎ落とし、泣き叫び許しを乞う声を酒の肴にして、数ヶ月かけてなぶり殺したのだ。


プリスカ様が息絶えた後、彼はすぐさま二番目の妻を娶った。殺されたプリスカ様の生き残りの妹、リュディア様だ。姉の凄惨な死に怯え、常に震えていた彼女は、ある日、庭園で道に迷った下級の外交官に道を教えるため、ほんの数言の言葉を交わした。ただそれだけの理由で、カルプルニウスは彼女に「不倫罪」の濡れ衣を着せた。

彼はリュディア様を全裸で縛り上げ、煮立った熱湯がなみなみと注がれた青銅の風呂桶の中に突き落とし、蓋をして上から重石を乗せた。中で響く爪を立てて蓋を掻きむしる音と、皮膚が爛れ煮える断末魔の叫びが止むまで、彼は笑顔でパイを食していたという。


三番目の妻は、リュディア様の侍女であったコンコルディアという少女だった。リュディア様が煮殺された際、あまりの恐怖に発狂しそうになりながらも必死に許しを乞うた姿を、カルプルニウスが「可憐で愛くるしい」と気に入って妃に昇格させたのだ。しかし、その無邪気な可憐さも長くは続かなかった。恐怖と拷問のような宮廷生活の中で彼女が笑顔を失うと、カルプルニウスは一転して吐き捨てた。「侍女だった頃の可愛らしさが失われた。醜い」と。

彼は生きたままコンコルディアの顔面の皮膚を刃物で丁寧に剥ぎ取り、悲鳴を上げる彼女を皇城の飼育場へと放り込んだ。そして、飢えさせた巨大な野犬群の前に放置し、生きたまま肉を噛みちぎられ、内臓を貪り食われる様を、バルコニーから見下ろして嘲笑っていた。


そして、四番目が私――フラミニアだった。


私の父であるバルビティウス伯爵は、狂王の暴政によって領地を没収されかけると、保身のために娘である私を「供物」として差し出した。広大な鉱山地帯の所有権と引き換えに、私はあの地獄の宮殿へと送られたのだ。


待っていたのは、想像を絶する拷問の日々だった。

カルプルニウスは、数々の女性を手当たり次第に抱きつづけた結果、重度の性病に侵されていた。皮膚には不気味な膿疱が浮かび、腐臭を放つ身体で、彼は宮殿内の下級貴族の娘や、名もなき侍女たちを強姦し、弄び、病を感染させては捨てていた。女たちはみな死以上の恐怖に震えていたが、逆らえば一族郎党がなぶり殺しにされるため、涙を飲んで惨劇を受け入れるしかなかった。


私もまた、その玩具の一つに過ぎなかった。

彼が求める言動を少しでも誤れば暴行を受け、顔を殴られて片目を潰され、歯を折られた。ある日、彼が投げつけた酒瓶を避けようとしただけで「余の愛を受け取ることを拒んだ」と激怒され、左腕を兵士たちに押さえつけられたまま、斧で叩き落とされた。右足は、彼が不機嫌な時に鉄槌で砕かれたものだ。


そして先日、ついに私にも終わりが訪れた。

全身が壊れ、まともに声を出すことも、彼の相手をすることもできなくなった私を見て、カルプルニウスは心底つまらなさそうに唾を吐きかけたのだ。

「醜い。もはや余の視界に入るだけで不快だ。おい、この女が余の食事に毒を盛ろうとした『暗殺未遂犯』だ。崖から放り投げて殺せ」


こうして私は、冤罪という名の身勝手な破棄の判決を受け、この鉄格子の馬車で引きずられているのだった。


惨めだった。悔しかった。

私の一生とは何だったのだろう。父には売られ、狂った男には身体と尊厳を刻まれ、醜く破壊された挙句、ゴミのように投げ捨てられる。何か悪いことをしただろうか。誰かを傷つけただろうか。ただ普通に生き、誰かを愛し、静かに暮らしたかっただけなのに。


ガタッ!!


突如、天地がひっくり返るほどの強烈な衝撃が馬車を襲った。


悲鳴を上げるヒヒーンという馬の嘶きと、鉄と木が破砕する凄まじい音。馬車は崖の手前の荒野で横転し、激しく回転しながら地表を滑った。私は檻の中で何度も壁に叩きつけられ、折れた足と残された腕の激痛で視界が真っ白に染まった。


「ぐ……あ……ッ!?」


車体が完全に静止した時、幸運か悪夢か、鉄格子の扉が歪んで外れていた。

私は残された右腕と、動かない足を引きずり、必死の思いで馬車の外へと這い出た。冷たい泥の感触が顔面に触れる。


だが、様子がおかしい。

さっきまで刺すような日差しが注いでいたはずの天候が、一瞬にして豹変していた。


空を見上げようとして、息を呑む。

青かったはずの空は、まるで熟した柘榴を潰してぶちまけたような、赤黒い禍々しい色に染まり上がっていた。雲が渦を巻き、大気が見たこともない密度で震えている。


バリバリバリッ!!


突如、天から降り注いだのは黄色い雷ではない。鮮血のように紅く光る、赤の閃光だった。

それが直撃した瞬間、私を護送していたはずの帝国兵たちの叫び声さえ聞こえなかった。鎧を着た兵士たちの身体が、赤い雷に打たれた瞬間に内側から弾け飛び、一瞬にして黒い灰、いや、サラサラとした塵へと化して風に舞った。


「ひ……あ……」


声にならない悲鳴が口から漏れる。

腰が完全に抜け、恐怖で全身の毛穴が開く。逃げなければ。そう思うのに、片腕と歪んだ片足では、泥の上を惨めにかきむしって数センチずつ這うことしかできない。


そして、私は見てしまった。

赤黒い空の裂け目から落ちてきた、この世のものとは思えぬ二つの「概念」の死闘を。


一方は、神々しいまでに眩い黄色い光を纏った存在だった。背中からは巨大で美しく、神聖な黄色い翼を二枚生やし、手には光で織られたような長槍を握っている。天使――そう呼ぶほかない神秘的な姿。

もう一方は、その対極に位置する異形の怪物だった。黒い鱗と歪んだ角、溢れ出る漆黒の霧を纏い、肉体そのものが殺意の塊のような形状をした悪魔。


両者は言葉も交わさず、空間を削り取りながら殺し合っていた。

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