表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サバゲー狂想曲   作者: せな
第一章 開戦
9/81

第4戦 暗闇の中で

こうも暗いと自然と進軍速度は遅くなる

暗闇に紛れて近づく者も増えるのでより一層の注意が必要だ


現在1勝2敗

ここは何としても勝ちたいと言うのが心情だろうが先程の全面衝突は心身共に削られる

初めにヒットされた人達は体力が有り余っているのだろうが集中砲火を浴びた人達は意気消沈気味である


不味いね

これは


開始前から士気が下がっている

士気の低い軍隊が勝つことはほぼ無い


敵も勝ったとはいえ実際は壊滅状態

その殆どは激戦の中オーバーキルにあった人達である

此方と違うのは勝った事でありその分此方より士気は高いだろう


それでもあの激戦を経た今回は進軍速度は緩むのではないかと言うのが私の予想した見解である


「2人とも今回はどうする?」

「雪辱戦したいけど周りの雰囲気が良くないよね」

「作戦指示も出てこない」

「これはお篭り戦っぽいね・・・」


援軍の無い籠城は単なる消耗戦である

先に弾薬が尽きた方が負け


フラッグ周辺をみるとやはり弾のボトルを出している人がチラホラ

今回は受け身で相手を誘い込むつもりなのだろう

けれど相手が攻めてこなければ長丁場の散漫とした消耗戦になるだけだ


「偵察を兼ねて裏ルートを進もうか」

「大階段は任せてても大丈夫でしょ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


到着から5分経っても笛が鳴らない


彼方も積極的に攻めたくないのだろう事が伺い知れる


裏ルート侵攻隊は10名程いるようだ

皆大階段を駆け上がる体力は残ってないらしい


此方から笛を鳴らし少し間を置いて2回反ってくる

開始の笛が鳴り響くが猛然と駆け出したのは韋駄天だけで後はジョギング程度の速度で暗闇に消えていく


何がどうと言うわけではないのだが・・・


なんと無く嫌な予感がしたので躊躇っていると完全に出遅れてしまった

最後尾が暗闇に消えたのを見送りゆっくりと歩き始めた


道の端に屈みながらゆっくりと進む


こんな所に敵がいる筈もないのだが・・・


カサカサ


微かな物音に一瞬立ち止まりブッシュの影に身を寄せる

まだハンバーガーヒルの入り口で暗がりに入ったところだ


今のところ何の銃声もしない

気のせいかと思い進もうとしたが俄に首筋が粟立つ


何か・・・・・

いる・・・・・


ブッシュに潜んで周囲を伺う


見上げると差し込む僅かな月明かりがハンバーガーヒルに木々の輪郭を映し出していた


上から2本目

僅かに幹が歪だ


カサッカサカサ


間違いない

人影が滑り降りている


私は静かに這いつくばるとハンバーガーヒルの稜線に沿って這い進んだ


そうこうしていると影は目の前10mぐらいのところで通路に降り立つ


静かにクルツの狙いを定めるが・・・

近い近すぎる

腹這いになっているので片手で構えるしかない


すると不意に影が闇の奥へと消えていった


何だったんだ?

敵じゃなかったのか?


疑問を抱えたまま身体を起こし気配を殺してゆっくりと後を追った


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


月夜の小道


月に照らされた薄闇の中を韋駄天は全速で駆け抜けていた

あっという間に中階段へたどり着くが進軍の気配は無い

上がるかどうか悩みながら振り替えると1人づつ間を空けてゆっくりと近づく味方の影

僅かな遮蔽物に身を寄せながら右へ左へと走り来る影達の足音が殆ど聞こえないのは流石と言うものだろう


後続を確認すると覚悟を決めて土手を回り込む

奥階段に向かうのだ


前に2人後ろに4人

わかるだけでもそれだけの味方がいる

前の2人に習い足音を気にしつつ右へ左へ遮蔽物の影を渡り歩く


本来ならば豪快に撃ち合いたいのが心情なのだが今回は搦め手からの遊撃任務

抜き足差し足忍び足


不器用なクレリックは一所懸命ついていく

暗闇の中を探りながら・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「敵はいたか?」

自分にしか聞こえないような小さな声で囁く声


「不気味なぐらい静かやな・・・」

同じトーンで囁き返す


「そうか良かったな」


その言葉に振り返ると銃口がピタリと額を狙っていた

銃越しに見える腕章は・・・黄色


音もなく項垂れ親指を上げる


すると影は音も無くスルスルと走り去り前の味方に追い付く


「次はどうする?」

「中階段を攻め上がるかな・・・」


振り返った先に見えたのは味方ではなく冷たい銃口だった

全てを悟り親指を立てて座り込む


更に影は前に進み瞬く間にフリーズを重ねていく


見事の一言


だがこのままでは全滅する

中階段の手前にいるあの動きはクレリックか?


敵だと確信した瞬間暗闇を渡り加速する


1人目は気づくのに遅れた

2人目で敵だと確信した

3人目はまだ遠かった

4人目は間に合わなかった


そして5人目はクレリック


中階段の下で追い付いた彼はクレリックに囁きかけた


「援護はいるか?」

囁きかけた彼の背中に硬い物が触れる


「お兄さんはお帰りの時間ねw」


ギリギリの所で彼の背後を取ることが出来た

4人ゲットで気が緩んでいたのだろう


「ミイラ取りがミイラだなw」

彼は静かに手を上げた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クレリックが此方を向いて指を指している

明らかに狼狽しているのがわかる程その手は震えていた


「何が起こった???」

「このお兄さんがハンバーガーヒルから下りてきて後ろから皆をフリーズしていったのよ」


彼は誇らしげにサムズアップして頷いていた

高笑いが聞こえてきそうなので先を急ぐ事にする


「韋駄天は奥かな?」

「前の2人は此処を上がって行った」

「クレリックはこのまま上の援護に向かって」

「たぶん敵が待ち構えてると思う」

「ラジャッ」


短く答えると慎重に階段を昇っていく


フリーズされた彼は手を上げながらゆっくりと裏ルートを大階段方面へと歩いて行った


味方に死亡を知らせるのを遅らせる事になるが

下チームに先に分からせる事により戦局を動かすつもりなのだろう


我々の戦略的にも叶っているし嬉しい心遣いだ


彼は道すがら自らのフリーズした相手に声をかけゾロゾロと歩き去っていった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


音もなく土手を回り込み素早く闇へと滑り込む

ざっと見た感じ韋駄天の姿は無い


既に奥階段を昇り終えたのか?


不意に風が強くなりガサガサと木の葉が揺れる


刹那首筋が粟立つ


木の葉の音に紛れ斜面の枯れ葉のベッドに身を投げる

幸い闇の濃い場所で少し窪んでいて素早く身体に木の葉を被せる


何だ?

何かおかしい


ザッ

カサッ

チャリッチャリッチャリッ

ギチチッ

ザガッ


ともすれば聞き逃すような微かな物音


誰かが小石を踏みつけている

1人じゃない


俄に気配が膨らみ奥階段に人影が生まれた


1つ2つ3つ


彼等は素早く階段を降りきり此方へ向かってくる


南無三!!


木の葉が身を隠している事を祈りつつ全身の力を抜く

恐怖で汗が珠のように吹き出し唇が渇いていく


頭を動かす事無く奥階段を見やると階段の更に奥が何だか蠢いている


もしかして韋駄天か?


敵は3人組で小隊を組み更に駆け降りてくる


先発が目の前を通過して2番手が後に続く


先頭が何事も無く通り抜けたので誰も周囲を警戒する事無く続々と降りて来る


1・2・3・4・・・・


先遣隊が土手を回り込もうとした瞬間銃声がした


ヒュガガガガガッ!!


「敵襲!!」

「裏ルート中階段!!」

「来援を請う!!」


クレリックの怒号が響き渡りヒットコールが2つ重なる


絶え間なく続くファマスの銃声

敵の2番隊が生き残りと合流し4人で中階段へ波状攻撃をかける


追い付いた3番隊は土手に張り付き前方を警戒しているようだ

この斜面を銃を構えて駆け上がるような真似が出来るのは韋駄天クラスの軽業師しかいない


ヒュパパパパッ


「ヒット!!」


2番隊が1人討たれた

帰還する死者を見て援軍が動いたのだろう

遠くから銃声が重なり合う


2番隊に4番隊が加わり遠距離への波状攻撃が始まる


敵側からは中階段を攻撃出来なくなったが中階段にクレリックが生き残っている限り敵もこれ以上の進軍は難しい


敵の5番隊が目の前に差し掛かる

後続はいない


中階段の上の方からも銃声が聞こえ始めた

敵の援軍だろう


もう構わない

玉砕覚悟だ


右手でバックホルスターからバックアップを引き抜く


MGC製「M645」固定スライドガスガンの傑作である

サイクロンバレルを装備した拳銃でどんな体勢からでも的を撃ち抜ける長年に渡る私の相棒だ


宙に浮かすように投げた相棒を左手で掴みそのまま流れるように敵の5番隊を撃ち抜く


タキンタキンタキン


狙い違わず3人を仕留め右手に構えたクルツがその後を追う


パカカカカッ

パカカカカッ

パカカカカッ


目の前で腕をクロスさせ土手の斜面を嘗めるように凪払う


同時に左手は土手際の2番隊を捉えクルツを戻しながら4番隊を凪払う


一瞬の出来事に敵は呆然と立ち尽くし

一呼吸置いてヒットコールが続く


まだ!!

2人動いてる!!


素早く右へ転がり一瞬片膝立ちの体勢になりつつクルツを掃射する


耳元を掠める弾丸


弾ける木の葉


勢いを殺さずそのまま反対側へ仰向けに転がりつつクルツとM645を乱射した


ヒットコールが聞こえたのと同時に私の胸に銃弾が突き刺さる


「ヒットーーーー」

案の定討ち取られはしたが思ったよりも戦果は上出来だった


「ウォーーーーーーーーッッ!!」


土手を回り込んで雄叫びが炸裂する!!

ファマスが唸りをあげて死者諸とも次々と薙ぎ倒していく!!


「痛い痛い痛い痛い」

「ヒットヒットヒット」

「もう生きてる奴はもうおらん!!」

「勘弁してぇーーーー」


悲痛な敵方の叫びに我に返ったクレリック


「あれっ?」

「終わった?」


間抜けな一言を吐くと猛烈な勢いで走り出す

この局面は終わっても未だゲームは終わっていない


中階段は援軍に任せ奥階段からフラッグを狙うつもりなのだろう


ザガサガサガサガサガッ

最早隠す気もないクレリックの全力疾走


彼がちょうど私の前に差し掛かった頃

遠くで笛の音が鳴り響いた


私を置き去りにした韋駄天がフラッグを落としたのだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ