逝く年来る年
ゴーン・・・・
ゴーン・・・・
ゴーン・・・・
「流石にこの時間の空気は肺に凍みるわね」
「今年ももう終わりか・・・」
ゴーン・・・
ゴーン・・・
「今年も良い年だったな」
パシュンッ
「ヒット!!」
「うわぁーーーー!!」
「負け越したぁー!!」
「ふふふっ」
「来年セーフティで会いましょうねクレインさん♪」
除夜の鐘が鳴り響く公園に
懲りもせず鳴り響く銃声とヒットコール
まだこの頃は年越しでサバイバルゲームをやるなんて本当にイカれた酔狂だと言われていた時代
有料サバゲフィールドなんてものは無く
チームとしても集まりの悪い真冬の深夜
クリスマス戦線をくぐり抜けた猛者達は
私の提案に何の躊躇も無く飛び付いた
流石に全員が初めから最後まで参加するのは無理があったのだが逆にそれがちょうど良い人数調整となりゲームは白熱していた
少し時は遡る
ー・ー
「このケーキ美味しいわね」
「地元の有名店で買ったんよ」
「高かったんじゃない?」
「ボーナス出たからお裾分けやw」
「隊長太っ腹ー♪」
「まだお腹出てないわw」
社会人と言っても全員独身でクリスマスにゲームやるくらいのシングルばかり
となれば当然年末年始も暇人が多い
「来年は皆で初詣行きたいなぁ」
「もうそんな時期なんやねー」
「・・・・・」
「って言うか皆お正月休みだよね?」
「うん?」
「俺は30日まで仕事や」
「俺は現場仕事やからクリスマスから休みやなw」
「おれは28日から休み」
「だったらさぁ?」
「大晦日から年越しでサバイバルゲームしない?」
「年越しかw」
「やるやる」
「あー」
「私は年明けからかな」
「家族で年越しそば食べながら紅白見るのよ」
「私もー」
「姫とムーンは年内最後か」
「氏神様に初詣済ませて1時くらいには来れるかな?」
「私もー」
「俺は逆に年明けたら帰らんといかんな」
「僕もかな」
鉄人とハンターは家族を連れて初日の出を見に行くのだとか
「俺は年内は絶対無理や」
「クレリックは実家お寺やもんな」
「除夜の鐘突かなあかんのやろ?」
「突き終わって後片付けしたら1時くらいかなぁ?」
「お姉さまは?」
「カウントダウン誘われてたけどこっちの方が面白そう♪」
「じゃあ決まりね」
「俺等はちょっと無理かな」
「いいよいいよ」
「無理しなくて大丈夫」
「番犬は撃ち初めどうする?」
「撃ち初めってお前w」
「大晦日が土曜日やからな」
「年越し出んかったら6日か」
「そだね」
「6日だね」
「そっちにはまた来るわ」
「りょうかーい」
「じゃあ良いお年をー」
「良いお年をー」
ー・ー
ゴーン・・・
ゴーン・・・
ゴーン・・・
「108・・・」
ピピッピピッピピッピピッ
除夜の鐘が鳴り終わりそこかしこでアラームが鳴り始める
「みんなぁーーー!!」
「明けましておめでとーう」
「今年もよろしくねー♪」
「明けましておめでとー!!」
「よろしくなぁー!!」
「それじゃあいくよー!!」
「さんっ!!」
「にぃっ!!」
「いちっ!!」
「さいかーーーーい!!」
全員が声を揃えてカウントダウンし始め
最後の掛け声でゲームは再開される
年末に生き残った者達が今年初のヒットを狙い戦場を駆け巡る
BB弾が飛び交いヒットコールが交錯する
年始初の勝利者は
本気を出した女豹だった
ー・ー
「うぅーーーーー」
「さむぃ」
「ホッカイロだけじゃキツいわね」
「フォックスがストーブ持って来てくれてたから助かるわ」
「台風さまさまねw」
「もー」
「それは言わないでよー」
「でもあの日事故やらなかったら新車買わなかったかな」
私は台風の日に突風でハンドルをとられ事故で愛車を亡くしたのだ
そして新たにいすゞの四輪駆動を新車で購入
広いラゲッジスペースを活かしてこの年越しサバゲーに大量の物資とストーブを持ち込んでいたのだ
「うわっ!!」
「銃が凍ってる!!」
「ガンケースがバリバリになってるw」
「皆お湯沸いたよー」
「コーヒー頼む」
「俺はスープで」
「はいなー」
「俺はカップ麺食べるわ」
「年越し蕎麦食べたやろ?」
「寒いし腹へった」
「ならクレインは次のゲームお休みかな?」
「食ったらすぐやる」
「じっとしてたら凍えて死にそうや」
真冬の深夜1時頃はかなり寒い
凍てついた大気は息を吸うだけで体温を奪う
じっとしていると手足の指先が寒さで感覚を失うほどだ
「それじゃあ俺達はそろそろ帰るわ」
「良いお年をー」
「鉄人それは年末の挨拶やw」
「でもまだ夜は明けてへんやん」
「それもそうかw」
「じゃあ良いお年をー」
「明けましておめでとー♪」
「年始組がついたね」
「明けましておめでとう♪」
年越しサバゲだとこうした挨拶が入り乱れる
こう言った挨拶は日本人だからなのだろうか?
でもタチアナを見る限りでは万国共通な気がする
「さてと」
「じゃあ例のアレ」
「行こうか」
ー・ー
キィーーーーン
キンキン
ババッ
タキン!
バンッ!
「ヒット!!」
「フォックスこう言うのも強いなぁ」
「へっへーん♪」
「先ず一勝w」
「だからクレイン、食べて直ぐはダメなんだってw」
年越しの撃ち初めはクイックドロゥから始まった
西部劇のように銃をホルスターに差して対峙する
そして弾いたコインが地面に落ちたのを合図に早撃ちを競う
使用するホルスターの形状は問わない
「バックホルスターでよくそんな早撃ち出来るな」
「これくらいは出来るわよw」
「次は隊長とジジやね」
「レディ!!」
キィーーーーン
キンキン
パシッ
「うわっ!銃が抜けんっ!!」
「ヒットw」
「隊長どうしたのよ?」
「いやぁw」
「ホルスターに引っ掛かってパイソンが抜けんかった」
「安いホルスター使うからよw」
「勝者ジジ」
「次は家猫と韋駄天か」
「レディ!!」
キィーーーーン
キン
ズバッ!!
ズササササッ
バンッ
パシュン
「あーヒットや・・・」
開始と同時に左右へと飛んだ2人
韋駄天は勢い余ってアスファルトで滑り受け身で横へ一回転した家猫に撃ち抜かれる
「どんなアクション映画やねんw」
「2人とも元気やねー」
「次はお姉さまと山坊主だね」
「レディ!」
キィーーーーン
キ
バスンッ
コインの落ちた音を聞くと同時に銃声が聞こえた
「ヒット・・・」
「女豹姉さん早すぎや・・・」
「抜く間も無かったわ」
「じゃあ準決勝やね」
カイロで温めていたマガジンを銃に納めホルスターにしまう
ゆっくりとジジと対峙して合図を待つ
「いくよー」
キィーーーーン
キン
スバッ
ヂャッ
タキン
バシュッ
「やられた」
「ヒット」
「俺もや」
小細工無しで真正面から撃ち合った私とジジの弾丸は同時にお互いを撃ち抜いた
「何処に当たった?」
「アタシは左肩」
「俺はマスク」
「なら勝者は弧雪ちゃんね」
「次はお姉さまと家猫」
「準備は良い?」
「OK」
返事をしながら親指を立てる家猫と静かに頷く女豹
「レディ!」
キィーーーーン
コインが宙を舞い地面に落ちる瞬間2人は動く
ズバッ!
ザシュッ!
今度は転がらず右へサイドステップしながら片膝をつく家猫
膝のプロテクターがアスファルトに押し付けられガリガリと音を立てる
しかしそれを見越していた女豹は軽く右足を曲げると身体を傾け狙いをつけていた
バスバスッ
バシュッ
「ヒットw」
「女豹姉さん2丁拳銃はズルくないか?」
見事に撃ち抜かれた家猫が笑いながら指摘する
「銃の使用規定に2丁拳銃の禁止は無くてよ?」
「それもそうやなw」
「勝者お姉さまw」
「さて・・・」
「ヤりますか」
「望むところよ」
「あら?」
「そのベルトに挟んだ銃は何かな?」
「いつもの相棒じゃなくてパイソン使うの?」
「2丁拳銃・・・」
「良いんですよね?」
私は右用のホルスターしか持っていない
だからギャング映画の悪党のように銃をベルトに挟む
「準備は良いか?」
張り詰めた空気に固唾を飲んで見守るメンバー達
キィーーーーン
クレインの親指で弾かれたコインは宙を舞い月の光を反射する
クルクルと回りながら落ちアスファルトに弾かれる
刹那
ズバッ!!
ザシャッ!!
両手で銃を引き抜きながら後ろへと倒れ込む私
同じく右へと横っ飛びになりながら2丁のルガーを引き抜く女豹
初弾はお互いを射止めることが出来ず虚空へと消えて行く
私は倒れる寸前に身体を捻り地面を転がりながら両手の銃を乱射した
女豹は片足で着地するとそのままの勢いで右へ右へと駆け抜ける
「のわぁあああーーーー!!」
「ストップ!ストッーーーープ!!」
「女豹姉さん逃げるならアッチの誰もいない方にしてくれ!!」
「フォックスは何でリボルバーで散弾撃つねん!!」
「はへ?」
「散弾?」
「何の事かなぁw」
「そのニヤケ顔が動かぬ証拠や!!」
「そのパイソンはコクサイ製のかな?」
「ライブカートの」
「メーカーは忘れたけど薬莢式のリボルバーでね」
「薬莢を対人散弾に改造したのです」
どや顔で胸を張る私に笑いが起きる
「流石フォックスやわw」
「卑怯とか全く気にせんもんなw」
「拳銃なんやし散弾はダメってルールには無かったでしょ?」
「まぁなw」
「でも観客巻き込んだから決着つかずのドローゲームやw」
「次はフラッグ戦行こか!!」
ー・ー
こうして夜は更け3時頃からフィールドを山へと移した
いつもより早く散歩の人達が出てきたからだ
「こんばんはー」
「明けましておめでとうございますー」
「明けましておめでとうw」
「お兄ちゃん達元気やねー」
「こんなお正月の夜中にもやってるなんてw」
半年以上ゲームしていた我々は夜や早朝の散歩に来る付近の人達とも挨拶する程度には仲良くなっていた
この頃はまだエアガンによる犯罪も少なくそこまで嫌われたりはしていなかった
しかしこの2年ほど後ぐらいから強盗や器物損壊事件にエアガンが使われるようになり規制が強くなると共に周りから敬遠されるようになる
しかし
この時はまだ
夜通し戦ったサバイバルゲーマーと付近の住民達は肩を並べて初日の出を眺めていたのだった
「朝陽が綺麗ね・・・」
「いつまでもこんな風に遊べたら良いのにね」
「そうね」
「じゃあ」
「初詣行きますか♪」




