3戦目は地獄でした
時刻は22時をまわり殆どの外灯がその役目を終えて暗闇がその帳を下ろしている
暗い
圧倒的に暗い
残された外灯はセーフティの外側道路の街灯だけである
位置的にフィールド内部を照らし出す事はなく月明かりだけが寒々しく石畳を照らしていた
「これは・・・」
「予想以上に暗いな」
呟きながらスタート地点へと向かう
ここに来るまでの各地点をチェックしたが暗くて何も見えない
上から見下ろすハンバーガーヒルは奈落へ続く坂道に思えた
先程通った芝生の稜線も暗さが増して見通しが悪い
これがT公園の真の姿
鷹の目の本領発揮の時間である
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「さぁて」
「今回は意趣返しもあり得るから裏手を固めろ」
「了解」
「その上で藤棚の戦力を割く」
「志願者を募る」
「今回は短期決戦やフラッグガードは無しでいく」
店長から手短なブリーフィングを受け我々は奥階段から裏ルートを攻め込む事にした
奥階段は守備隊に2名攻撃隊は我々の3名だけ
中階段の守備隊は3名に攻撃隊が2名
残り全員で藤棚を攻める
「いくぞ!!」
ピーピーピーーッ
ほぼ同時に双方から笛が鳴る
ピーピーピーーッ
すかさず店長が笛を吹く
ピーピー
間髪入れず反ってくる
あえて一呼吸半ずらして店長が開始の笛を吹く
ピーーッ
全員が全速力で持ち場へ向かう
刹那銃声が轟く
交戦ではない
藤棚攻略の為にハンバーガーヒルへ牽制しているのだ
藤棚方面が壁に取りつき下へ牽制攻撃をかける
だが応戦は予想を下回り藤棚部隊の方が圧倒的に数が多いようだ
バガガガガガッ
「敵だ!!」
「中階段に敵が殺到している!!」
「援軍頼む!!!」
「メーデー!!」
「メーデー!!」
混乱した声が沸き上がり銃声が交錯する
敵は中階段の一点突破にかけてきたらしい
その頃我々3人は奥階段を駆け下り愚者の行進を疾走していた
「前方注意」
「敵は中階段に集中しているらしい」
「出会い頭に気を付けろ!」
韋駄天から指示が飛ぶ
脚力に劣るクレリックは遠く離され今は2人で駆けている
全速力で愚者の行進を駆け抜け中階段手前の土手に張り付く
鳴り響く銃声の中目を閉じて耳を澄まし戦況を探る
既に階段は占拠され上の防衛隊と交戦しているようだ
ここで前に出れば瞬殺間違いない
どうしたものかと攻めあぐねているとクレリックが到着した
相変わらず気配を消すのが苦手らしいが今は激しい銃声で見付かることは無いだろう
察したクレリックが素早く左手で自分を差し土手を迂回する旨を伝えてきた
続いて3本指を立てる
2本・・・1本
同時に土手を回り込みファマスを腰溜めで撃ちまくる
「うをぉぉーーーーおおおお!!」
スタローンばりの雄叫びをあげながら1斉射
上がるヒットコール
素早く土手に身を隠して急いで発条を巻き足す
1斉射目で土手の上に張り付いた韋駄天と私はタイミングを計る
クレリックが雄叫びをあげ池に乱射したのを合図に上から強襲をかけた
敵影1っ2っ3っ
いっぱい!!!
ヤバイ総攻撃やん!!
土手に張り付く敵を上から撃ち抜き木の幹を盾に隠れる
瞬く間に木に着弾して木の皮が弾け飛ぶ
そのタイミングを逃さずクレリックが雄叫び無しで凪払うと又も連続ヒットコール
銃弾の嵐に立っていられず思わず木の根本にしゃがみこむ
銃だけ突き出しての応戦に相手も似たような状況らしく暫く銃声だけが鳴り響く
韋駄天は素早く後退して角度を変えて斜面を駆け登っていた
片手にM16を握ったまま最早崖のような斜面を器用に登りきり中階段の真横に付けると一気に凪払う
階段途中で交替しながら味方と交戦していた敵が2人墜ちるがあまりの激戦にセーフティへ帰る事もできず通路の端に踞り両手を挙げている
黄色チームの半数以上が月の小道に殺到していたらしく此処とハンバーガーヒルの激戦は常軌を逸していた
「数で押し込めーーーー!!」
敵の指示が飛び一気に弾幕が強くなる
こうなれば牽制射撃も目暗撃ちも出来はしない
一目散にもと来た道を引き返す
見ると既にクレリックは後退しており自分がいた土手の稜線に牽制射撃をかけながらジリジリと下がっていた
その横を駆け抜け一気に奥階段を駆け登る
遅れてクレリックが駆け上がるのとほぼ同時に敵が溢れ出す
いくら有利な愚者の行進でも数が多すぎてとてもじゃないが抑えられない
瞬く間に3人の敵が階段下まで押し寄せて来た
こうなると撃ち下ろしで有利な筈のこの場所は下からと階段側からの集中砲火を浴びることになる
乱射して独り頑張るクレリックを囮に素早く右側のブッシュへと滑り込んだ
「クレリック後退しろ!!」
声をかけた瞬間クレリックのヒットコールが聞こえ乱射しながら駆け上がってくる人影3人
応戦すれば瞬殺は目に見えて明らか
ここはやり過ごし敵をフラッグへ向かわせた
3人!!!
パカカカカッ
パカカカカッ
パカカカカッ
いくら足に自信があろうとも放たれた弾丸に叶う筈もない
後ろから3人を仕留めた瞬間横合いから凪払われた
全身に激痛が走りヒットコールを叫ぶ
私を刈り取った敵兵に今度は藤棚から取って返した味方の銃弾が突き刺さる
阿鼻叫喚の地獄絵図とはこの事を言うのだろうか?
取って返した藤棚攻略部隊は中階段を抜けてきた敵兵に撃ち抜かれ全滅する
その敵をやり過ごしていた韋駄天が彼らを後ろから撃ち抜くが反撃にあい相討ちとなる
直後に藤棚攻略部隊が壊滅しハンバーガーヒルから3人が躍り出た
フラッグガードはいない
3人は全速力で走りきり見事のフラッグをゲット
勝利の笛を吹き鳴らした
だがこの時既に赤チームは全滅していたのだった




