太陽の元で
「結構歩くのね」
「あの辺りが激戦になるから見といた方がええで」
曲がりくねった道を歩く途中ダヤンが指差しながら説明してくれた
この道から小さな川を挟んだ向こう側がフィールドである
川と曲がりくねった通路の間には道らしきものは無い
しかし雨で削れた溝があったり起伏もあるので塹壕代わりにはなるかもしれない
この荒れ地から坂になった上が通路になっている
しかし散策路と言うより踏みならされた獣道に近い
そもそもこの通路の行く先にはフラッグを置いている上のスタート地点があるだけの袋越路で何処にも繋がってなどいない
セーフティですら橋の無い川を渡らねばならないのだからこの通路自体が長年のサバイバルゲームで踏みならされたと考える方が正しいのだろう
カーブを大きく曲がると池が見え始めてきた
先についたメンバーが池に向かい弾道調整を行っている
「ここを渡ったらフラッグがある」
「この桟橋の下は湿地帯やから下手に入ると蛭にヤられるで」
蛭に噛まれると取るのが大変なので湿地には近づかないでおこう
最近お気に入りのナインが手元に無いのが何となく心細い
昼間だしSG1の方が有利だとわかってはいるのだが・・・
「ついたな」
「この先の道を進んでいったら遭難するから行くなよ」
「ふぁい?」
聞きなれないワードに思わず変な声を出してしまった
「だからこのやたらと広い道を登っていったらあっという間にフィールドはみ出して遭難するから行くなよ」
「遭難するんや・・・」
「上ルートはあの辺りから右側に獣道がある」
「間違っても獣道を左にそれるなよ?」
「遭難するのね?」
「その通りw」
何とも馴染めないダヤンの説明に一抹の不安を覚えつつこれはネタのフリではなく真面目な忠告なのだろうと心にとめておいた
「ダヤンとマーベリックはどう攻めるの?」
「おいらはフォックスのサポートに回るわ」
いつものように首を小刻みに振りながら答えるマーベリック
「ほんじゃ皆で下行こか」
「初心者は下の方が良いって事かな?」
「上のブッシュは馴れんと至近戦のなるからなぁ」
「至近戦はいつもの事よw」
「言えてるw」
なんのかんのと言いながらも面倒見の良い2人に感謝しつつ辺りを見回した
「あの林までは丸見えなのね」
「フラッグアタックは難しそう」
こちらのフィールドエンドには濃い藪がある
細い竹藪なので入ることは難しそうだが所々窪みがあるところを見ると竹を踏み折り蛸壺が作られているようだ
その藪から1mほどの場所に木が1本だけ生えている
この木にフラッグをぶら下げているのだがここから一番近い林まで軽く15mはある
右側に行くにつれて開けていて緩やかな傾斜はあるもののちょっとでこぼこした原っぱのなっていて隠れられる場所は全く無い
「ここでは不意を突いてのフラッグアタックはほぼ失敗する」
「キチンと連携してフラッグガードを抑え込まんとフラッグに近付くことも出来ん」
「その割にはミーティングとかしないのね」
「まぁミーティングしても無駄やわw」
「戦況に応じて柔軟に対処せんと敵も見方も多いからなぁ」
「作戦通りにいった試し無いなw」
「そう言うことね~」
実際待ち伏せも速攻も打ち合わせ無しでも何とかなる
チーム単位でかたまっている事も多いが混成であっても各々が即応性に長けていて戦場で即席のアタックチームを編成したり指揮能力が高い人も多い
ベテランが多くスキルも高いがガツガツと勝ち負けに拘る人がいないので全体的にマッタリとしたイメージはある
とは言え激戦区の火線は凄まじく勝ち負けに拘らないと言うより潔いと言った方が良いのかもしれない
ピーーーーーッ
唐突に笛が鳴った
スタート準備のやり取りは無線で行い開始と終了の合図だけ笛を鳴らす
我々は話しに夢中でカウントダウンを聞き逃していたのだ
前衛が一斉に走り出しあっという間に林の中へと消えていく
「そろそろ行くか」
ダヤンの呟きに無言で従う私とマーベリック
別に打ち合わせ等してはいないが自然にマーベリックが右前へ進み私はダヤンの右後ろをついていく
シュパパパパパッ
シュトトトトトッ
バシュン
シュコココココココッ
前の方で激しい銃声が交錯する
音から察するにスナイパーもいるようだ
APS2ならばホップアップのお陰で極悪カスタムにしなくてもゲームに耐える性能が得られる
今度購入してみようか?
緩やかな上り坂の林を抜けると先程川向こうから見ていた通路が現れる
一度左へ大きく曲がりS字を描くように右へと続いていく
かなり遠いがこの場所からS字の出口は狙えないこともない
しかし直進しようとすれば高低差に阻まれる上に大きな溝が立ち塞がる
このS字の地形は雨水が削り取ったもののようだ
道の左側は急斜面になっていて斜面の頂上部には鬱蒼としたブッシュが生い茂っている
S字を抜けると三日月のように左へと迂回しながら大きく曲がっていく
50mくらい向こうで再び左へと折れるとフラッグ前の谷へと続く
谷と言っても険しい谷間ではないのだがまたも通路は左へと迂回している
その通路の先は上から下りてくる谷と合流して開けた場所になっている
だがこのフラッグ周辺が曲者で並び立つ木は真っ直ぐ延びて枝も少ない
おそらく以前は林業で管理されていたが今は放置されているのだろう
フラッグを囲むような斜面に立つ無数の木の影や下へと向かう段差は塹壕でありトーチカでもある
これ等の迎撃ポイントからフラッグ前は格好のクロスファイアポイントになるのだ
重なる銃声に稜線で攻撃している味方達
右手の川沿いにも数名の味方がそこかしこに身を潜めしきりに弾幕を張っていた
その後方から数名のスナイパーが狙撃している
昼間のゲームは戦況が把握しやすい
夜に比べ雑音が多く索敵しづらい反面視覚で捉えやすい
「んー」
ひょい
「正面の撃ち合いだと弾が見えて避けれちゃうねぇ」
「狙撃するなら角度考えんといかんな」
「アイツらはほぼ牽制と囮や」
「狙撃されるって思うと足が止まるからな」
「でも3人もかたまってたら勿体無いよねー」
「確かにな」
狙撃は抑止力にはなるものの戦力外でもある
本気で討ちにいきたいなら横や回避不能なポイントを狙う必要がある
沢筋の3人は足止めがメインな感じがする
「勿体無いな」
昼戦も夜戦と変わらない事は地形を楯にする事
違うのは昼間は見えるのでレンジが長い
空いている隙間に入り込み相手方を見やるが圧倒的に遠い
自分の射線を目で追い着弾修正を行いながら射撃する
だが相手からも射線が見えるので当たりそうになると躱される
「昼間の消耗戦は面白味に欠けるなぁ」
「まぁそう言うなw」
「夜戦が特殊なんやからこれが普通や」
前線でほぼ待機となった為かダヤンもマーベリックものんびりと構えている
正面に向かえる人数は限られているので上と下への警戒を行っている感じか・・・
ヒュパンヒュパンヒュパン
不意にダヤンが撃ち始めた
川側の敵が前へ出ようと動いているようだ
味方のスナイパーの死角を縫って前に出ている
スナイパーは遠いので此方への掩護射撃が目的のようだ
激戦区とは言え入ってしまえば単なる消耗戦
伊達に見えるだけに距離も遠く生存率も高い
それはそれで良いのだが・・・
接近戦に馴れていたため物足りなさを感じてしまう




