激戦の果てに
「上が優勢になると下は不利だよね」
「前半に攻めきれなかったら下は不利だけど・・・」
「今夜は狙撃手が少ないからねー」
時々目にする異様な射撃音はスナイパーライフルによるものらしい
射程も長く威力も凄まじい
ライフルは単発な為更に上のレギュレーションが適用されていた
ガスライフルやスナイパーが多いと上からも攻めきるのは難しい
彼等はフラッグガードの徹する事が多く戦線を押し上げたりはしないが防衛戦でその真価を発揮する
「なんか皆お疲れモードなのは気のせい?」
セーフティゾーン全体に達成感のような諦めのような雰囲気が漂っていた
さっきまでの活気や勢いは感じられない
外灯も消えて深夜0時をまわり店長はホクホク顔で帰り支度を始めている
「赤の連勝やから店長機嫌ええなぁ」
「負けるの嫌いやもんなw」
暫く離脱組を見送るため小休止となる
私は持ってきたスイーツを皆に振る舞い水筒から紅茶を入れていた
「アタシも貰って良いの?」
「数はあるから姐様も食べて下さい」
「良かったら紅茶も如何?」
紙コップに紅茶を注ぎ女豹姐様に差し出す
「ありがと♪」
「ん?」
「これって・・・・・・」
「まさかケニーのクローネ?」
「やっぱりそうだ!!」
女豹は甘党で持参したクローネは大好物だったらしい
「昼間に近くまで行く用事あったから差し入れに買っといたんですよ」
地元では有名なケーキで売り切れも出る人気商品
私は高校が地元ではなく街の方だったので地元のケーキ屋さんより馴染み深い
「紅茶はプリンス・オブ・ウェールズ?」
「良くわかりますね~」
パッケージも見ずに当てるとは中々の者だ
「フォックス」
「プリンス・オブ・ウェールズって何?」
プリンス・オブ・ウェールズはTWININGSの紅茶である
量販の中では香りも良く好みの紅茶なのでクローネに合わせて購入していた
15本用意したクローネは瞬く間に無くなり完全にマッタリモードになってしまった
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「女豹さんこの後どうします?」
皆で紅茶を啜っていると残ったチームの人達が集まってきた
残ったのは我々10人に女豹さん
他のチームの人達は6人ほどしか残っていない
「今日は皆早いのね」
「激戦続いたから御老体は皆帰りましたよw」
「中堅連中も明日デイゲームあるらしくって結構帰りましたね」
「この人数でここはちょっと広すぎるわね」
「俺達もそう思っててどうしようかなって」
「そうね・・・」
「この人数で全滅戦はキツいかな」
「女豹さんいる時点でヤバイですよw」
「生け贄を3人選ぼうか」
「御姐様言い方・・・」
「1人目は女豹さんでw」
「アタシ?」
「だったら2人目はこの娘ね♪」
後ろから優しく抱き付いてくる
「3人目はどうしよう?」
「貴方がヤル?」
「それも面白いかw」
声で気付いたがこの人は以前フリーズを量産していた化け物じゃない?
あの時は奇跡的の撃退できたけど・・・
「じゃあ皆は先に潜伏してー」
「10分後に狩りに行くから待っててね♪」
こうして3対15人の戦いが始まろうとしていた
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「御姐様」
「御姐様?」
マーカーのテープを剥がしながら問いかける
「戦力差がヤバイんですけど?」
「大丈夫よ♪」
「こっちには変態がいるからw」
「褒めても何も出ないぞ」
「白い弾は出るでしょ?」
「出さずに済めばそれはそれで良い」
真顔で答えるこの人物は通称「肉屋」
眼鏡に短髪のお兄さんで背は女豹より少し低い165cmくらいかな?
全身迷彩服に覆われベストにはマガジンが複数差し込まれている
ベルトにはホルスターが下げら見えるグリップはリボルバー系だった
メインウェポンはM416ショットガンコンビネーター
M16の派生系であるM416の下部にショットガンが付けられたショップカスタムである
この手のカスタムはホビーショップSでは取り扱っていないのでおそらく高架下の有名店の物だろう
「先ずは裏をかかんとイカんね」
「なら上から責めないとね」
2人の会話のイントネーションが何だか怪しい
「上からって事は右側を外縁に沿って行く?」
「下からやと思いっきり正面からぶつかりそうやしな」
「上をスタートラインまで進んで後ろからつつこうかしら」
「それ良いね」
「面白そう」
「スタート地点ついたら後はどうする?」
「3人で行くかバラバラで行くか・・・」
「バラけて独りでイクのはちょっと寂しいかな」
この状況なら・・・
手にしたクルツを鞄に突っ込み変わりにG3を取り出す
「あら懐かしい銃ね」
「ガシャポンのG3か?」
「ホップアップのシリーズって出てたっけ?」
促されるままマスターに銃を渡すと静かにレバーを引き下げる
手を離すと「カチャン」と小気味良い音を立ててレバーは戻った
「電動と違って軽いなぁ」
「フォックスちゃんはホントにコレで行くの?」
パスンッ
「???」
「えっ?」
「この銃ってこんなに静かだった?」
東京マルイ製エアーコッキングG3
ホップアップ搭載前のシリーズで当時は射程距離15mあるかどうかの思ちゃである
その玩具は魔改造を施されホップアップを搭載
インナーバレルを切り詰め簡易のサプレッサーを内蔵外装にも薄いウレタンが張り付けてあり
全体のフォルムやマズルとハンドガードのチャチさでなんとかエアーコッキングのG3だと判別できるお手製カスタムである
「この3人なら狙撃できるかなぁーって」
「これは・・・」
「ヤバイよね」
「うん」
「弾速は話にならないくらい遅いけどね」
「夜なら驚異やわ」
とりあえず時間もたったので始める事にした
注意深く外縁部を歩く3人
外灯が消えているのでブッシュが深く濃い闇に包まれている
「フォックス」
「11時方向3番目の木の下」
「見える?」
スコープも無しに20m先のブッシュが見えるとか凄すぎるんですけど・・・
左脚を前に出し片膝を付くと銃を乗せて狙いをつける
この辺かな・・・
パシュ
・・・・・・・・・・・
「ヒット?」
ホントにいたよ
撃った本人が一番ビックリしていた
「さっきの少し左側」
「ちょい下かな?」
マスターの指示を受け僅かに修正を加え狙い撃つ
パシュ
「ヒット!」
2人は頷き先へ進む
2人ともよくあんなの見付けられるよ・・・
感心しながら後を追った
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「最後」
「フィールドの一番奥にいるのわかる?」
「何処?」
「30mくらい向こうかな」
「たぶん届かないかも・・・」
「見付かるかもしれないから匍匐前進で行こうか」
女豹は俯せになり脚を肩幅に開くと素早く距離を詰めていく
凄く様になっている
もしかして正規の訓練受けてるのかな?
10m程進むと左手で合図をして来た
隣に並ぶと静かに左手で指を指す
ん・・・・・・
この辺かな
狙いを定めていると微かに反射するのが見えた
あそこか・・・
静かにトリガーを引く
その瞬間少し手前に丸い光が見えた気がした
これは?!
発射した瞬間素早くコッキングしもう一度弾丸を解き放つ
「2人目良く見付けたね♪」
女豹が親指を立てて褒めてくれた
素早く身体を起こしてスタート地点に到着する
遅れてマスターが到着するなり腰からマグナムを抜き放つ
「迂闊だったな・・・」
そのまま銃口を私に向ける
何が・・・起きてる?
不意に頭上でガサガサと音が鳴り両手をあげた人が降りてきた
「匍匐で近付いてきたから撃てんかったわw」
どうやら外縁の花壇に潜伏していたらしい
「アタシも気付かなかったわ」
「マスター凄い」
「褒めても何も出ないぞw」
「ここから俺は離脱するわ」
「ちょっと派手にイクから囮に使ってくれ」
サムズアップすると中階段へと走っていった
「美味しいとこ横取りするつもりね」
「そうはいかないわよ」
「フォックスちゃん奥階段に急ぐよ」
「了解御姐様」
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奥階段につく頃には銃声が鳴り響いていた
入り口のブッシュで女豹が抜いたのは92F
一般的に人気のあるハンドガンである
パシュパシュ
「ヒット!」
木の影に隠れる敵を素早く射貫く
影と言っても下からを想定しているためこちらからは丸見えだった
続けて階段頂上へ弾丸を叩き込む
あがるヒットコール
瞬く間に3人を刈り取り手招きをして見せる
不意を突いたと言え手際の良さは流石と言うべきだろう
素早く近寄ると女豹が指差す所へ狙撃する
パシュ
「ヒット?」
刈り取られたベテラン勢のヒットコールが小さかったのもあって気付かれていなかったようだ
難なく1人を撃ち取り更にさきの影を撃つ
パシュ
反応無し
念のためもう一度
パシュ
「ヒット」
思ったより奥に隠れていたらしい
3射目を撃ち終わる頃には女豹は下まで降りきっていた
「流石に早いなぁ」
慌てて追い掛けると素早く女豹が連射する
シュトト
シュトト
シュトト
手にしたパトリオットが吠えるとたちまちヒットコールがあがる
今気付いたのだがこのパトリオット
元々M16の極小バージョンなのだが発射音が小さい
サプレッサーを装備してあるのだろう
カーブを越え中階段を過ぎる頃には辺りに彼との気配は無く遠くハンバーガーヒルの辺りで銃声が続いていた
「2人とも早すぎだよ・・・」
索敵も警戒もかなぐり捨て広場まで全速力で走り抜ける
「終わっちゃった?」
ようやく広場にでてた頃には既に掃討も終わっていた
程無くして笛がなりゲームの終わりを告げた
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「予想してたけど」
「予想より酷かったな」
ベテラン勢の渇いた笑いが場を支配していた
「何処から撃たれたんか全くわからんかった」
「サプレッサーは卑怯や・・・」
「財力の勝利ね♪」
「女豹さんじゃなかったらこんな惨敗してないよ」
「あら?」
「初めの5人を撃ち取ったのこの娘よ?」
女豹の言葉にどよめきが生まれた
「そのG3でか?」
「そうよw」
促されてG3を渡す
「うわっ」
「コレってガチャポンやんか!!」
バネの具合を確かめるようにゆっくりと引く
「そんなに強くない」
続いて引き金を引く
パシュ
「サイレンサー仕様のスナイパー?」
「でもまだエアコキのG3は出てないよな・・・」
「ジャンクから移植しました」
「サプレッサーも内蔵してる?」
「おまけ程度ですけど」
サプレッサーを付けるためハンドガードの途中までバレルを切り詰めている
それでもMP5よりも長い為飛距離も制度も高い
「弾速は遅いみたいだけど飛距離はありそうやな」
「フォックスいつの間にこんなの作ってたんや」
「ホームで使われてたらと思うとゾッとするわ」
さっきのゲームで完全に気が抜けてしまったらしく今夜はここでお開きとなった




