第909話、ジン・アミウール団長
なれました。
十二騎士ナンバー1、団長になってしまいました。
タルギア大公の強いプッシュにより、新参者の俺が十二騎士の団長に任命されることが、正式に決まった。
快挙だよ、と、俺にそれを伝えたスティグメ騎士隊長は、その美形な顔に笑みを貼り付けて言った。
「もちろん、来たばかりの君に十二騎士団長は時期尚早だ、と反対意見もあったがね。ここに来てからの君の献身、貢献度が評価された」
つまり、日頃の行いである。魔法を教えたり、吸血鬼の呪い除去の方法を教えたり、女帝陛下のお命をお救いしたり。
「十二騎士……ああ、これは前の、となるが、その構成メンバーから反発もあったのだが、実力を大会で示したのだから、反対意見としては弱い。何より、ナンバー2である白騎士殿が、君の団長就任に賛意を示したのが大きい」
ディニ・アグノス卿が賛成した。
なお、ナンバー3である黒騎士、エリシャ・バルディア卿は強硬に反対だったらしい。が、俺と直接戦ったゴールティンは、『女帝陛下を守る騎士であるなら、席を譲ろう』と団長の座を明け渡したことが、反対派にトドメを刺した格好となった。
ゴールティン卿がよいのであれば――アポリト最強の騎士として君臨した男が認めたのならば、ということらしい。
俺は十二騎士団長となったが、いきなり好き勝手できるわけでもない。やはり新参者ということもあり、いきなり王宮に入って女帝の警護をすることもなく、まずは軍の騎士として学ぶところからスタートとなった。
アポリト軍の機密に触れ放題。俺としてはここに留まっている理由の主な部分がそれなので、願ったり叶ったりといったところだ。
陛下の警護で王宮から出られないというのは、面白くないからね。引き続き、ゴールティン卿には女帝陛下の警護を担ってもらう。
そう彼に告げたら、かつての団長は、忠実な部下のように応じた。表情は変わらないが、内心ではどう思っているのだろうか?
さて、団長になったことで、俺は約束していたブルのお袋さんに、アポリトの最先端医療を受けられるように便宜を図った。
これに感激したブルは俺に感謝し、一生ついていくと忠誠を誓った。……俺はこの時代に長居するつもりはないから、少々後ろめたいんだけどな。
とりあえず、クルフが抜けた従騎士のポジションにブルが収まった。
そのクルフは正式に十二騎士となった。俺の従騎士から外れたが、今後は部下として従う。彼にはドゥエルタイプのカスタム魔人機が与えられる。
そしてレオス。彼は十二騎士ナンバー5となり、ドゥエルシリーズの魔神機が与えられた。もちろん、操縦者適性がある魔神機だから、ここで機体に認められなければ、カスタム魔人機になってしまうが……。まあ、あれだけ戦闘中に膨大な魔力を放っているくらいだから、魔力は足りているだろう。
いざ実機に乗ったところ、適合を見せて正式に魔神機のパイロットになった。彼の戦闘スタイルに合わせた魔神機への改造が行われ、これがのちのドゥエル・ファウストになるのだろうと俺は思った。
新たな十二騎士に、魔神機ないし魔人機が与えられたが、それは俺も同じだ。
前団長であるゴールティンは、実にあっさり俺に魔神機、リダラ・ダーハを譲った。
元より騎士の意匠が濃いリダラシリーズの魔神機であるダーハは、リダラ・バーン、リダラ・ドゥブに比べ、やや大きい。
その鎧じみた意匠のデザインは重厚。白銀の機体色と相まって重騎士といった外観だ。背部に板状の装備がマントのようについているのは、おそらく遠隔攻撃端末のビット系装備だろう。あるいは自動盾か。
まさに団長専用機という迫力と貫禄を併せ持つ魔神機と言えた。……問題は、俺に魔神機適性がないということ。
せっかく譲られたからには、上手く利用したいのだが、五分程度が限界ではな。
だが、この問題に解決策を見いだした者がいた。
それはディーシーである。
・ ・ ・
試運転ということで、リダラ・ダーハに乗り込んだ俺。外ではゴールティン元団長や、手すきの十二騎士らが見守る。
俺がシートに座る中、外からはわからないのをいいことに、ディーシーが俺の膝の上に乗り、魔神機を解析していた。
「ここに来る前に、セア・フルトゥナを調べた」
ディーシーの伸ばした腕の先が、コクピットのコンソールとの間に光を往復させている。
「その後、色々な魔人機を触ったが……なるほどなるほど、さすが魔神機。魔人機に比べてよい素材を使っているな」
「いい素材ね」
「何から何まで手作りのすぺしゃると言ったところだな。腕のいい技師や魔術師が、頑張ってこしらえたのだろうよ。その代わり、こいつを動かすための魔力がハンパないことになっているがな」
「それが魔神機を一般人が操れない理由だろう?」
動かすために消費する魔力が大きい。だから魔力の供給に見合うだけの回復をその都度自力でできないと、操縦者の魔力を吸い尽くし、下手すると殺してしまう。
「――あの悪魔娘が作った機体に似ている部分もあるな。……魔神機の元を作ったのは悪魔かもしれんな」
悪魔娘が作ったって、九頭谷後輩のところの子のことか? 俺の疑問をよそに、ディーシーは笑みを浮かべた。
「見つけたぞ、こいつの制御システムだ。精霊システム……いや、精霊コアか。うちで使っているゴーレムコアと似たようなものだ。こいつが動かすのに魔力を要求しているんだ」
「つまり……?」
「一定量の魔力に達して、それを維持できないと、このコアが働かない。結果、パイロットは自分の魔力でどうにかするしかなくなるわけだ。それが主が起動はできても、数分程度しか魔神機を動かせない原因にもなっている」
「んー、それってさ」
俺は、ひらめく。
「その精霊コアってやつをゴーレムコアに載せ換えて、それで制御システムを構築すれば、俺でも普通に動かせるってことか?」
「うむ。外部から魔力の取り入れを増やしたり、予備の魔力タンクを積めば、主でも自在に魔神機を操れるだろう」
頼もしきディーシー先生のお言葉。
「が、まあ、今はその改造をしている余裕はないが」
「そうだった」
動かさないとな。俺は球形のコントロールレバーに手を置く。この辺りは以前、試乗したリダラ・バーンと同じだ。
「慌てるなよ、主。構造がわかってしまえば我が何とかしてやる。まずはこの生意気な精霊コアを書き換えてやる」
「できるのか、ディーシー?」
「無論だ。こんなダンジョンコアの出来損ないのようなポンコツコアなど、あっという間に作り替えてやるわ!」
とりあえずディーシーが、余所様のコアと名の付くものを、敵視しているのは変わらないようだ。
しかし、ポンコツコアとか酷い表現だ。それほど彼女にとっては稚拙なシステムなのだろうか。……いや、待てよ。
「今、ダンジョンコアの出来損ないって言ったか?」
「言ったが、それがどうした?」
これは思いつきだが、ひょっとして機械文明時代の人工コアとは別に、魔法文明人が作った人工コアが、この魔神機に組み込まれているのではないか?
あるいはダンジョンコアを加工したものだったり? 動かすのに魔力を使うなんて、まんまダンジョンコアのソレだ。
「ほれ、主。コアは書き換えた。魔力の仕様を外部から取り入れるようにした。戦闘をするには、もう少し弄る必要があるが、動かすだけなら問題ないぞ」
「ありがとう、ディーシー。……それじゃ、動かしてみるか、リダラ・ダーハ」
魔神機が振動する。動力が唸りを上げ、俺の手で団長専用機が動き出した。
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