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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第875話、魔神機を動かしてみた


 第一遊撃隊は、アリエス浮遊島軍港に到着した。


 俺とベルさんは、アーリィーとサキリスらと魔神機について話し合った。


 試乗したユナの感想も踏まえて、俺も試しにリダラ・バーンに乗ってみた。搭乗経験者のアーリィーが俺に親切丁寧に教えてくれる。普段とは逆だから楽しそうだった。


「コクピットは案外普通だな」


 操縦桿がボール型というのはアレだけど。手を置くと、指の部分が少しだけ沈んだ。ふむふむ、これで魔力を流し込めば……お、動くか。


 稼働音がして、コクピット周りが、透明化したように外部の景色を映し出した。これ、ひょっとしてモニターじゃなくて、マジックミラー式だったり?


「何か、落ち着かないな、これ……」


 コクピットが剥き出しみたいに感じてしまう。アーリィーは首をかしげた。


「そうかな。……うーん、言われてみればそうかも」


 何やら考え込んでいらっしゃる。

 そんなこんなで、動かしてみる。手の中の操縦桿が違和感なのは慣れない形のせいか。足のペダルとかは、特に変わらなかった。


 が、結果的に、俺もユナ同様、魔力の吸い取られ感から疲労を感じて、数分で諦めた。アーリィーとサキリスがまったく平気だったところは、やはり魔力回復力が常人より高いおかげだろう。


 ちなみに、ベルさんも俺と同じ時にリダラ・ドゥブに乗ったが、この人はさすが魔王だけあって、平然としていた。保有する魔力の量が桁違いだからだろう、とは本人の弁。


 そして次に試乗したのは、ダークエルフのラスィア。元より人間より魔力に秀でているダークエルフで、しかも魔術師だから期待した。


 その結果――俺やユナよりもったが、長い時間乗るのはきついということだった。……これ本気で、アーリィーが魔神機専属パイロットになる?


「ベルさん、どうかね?」

「オレはブラックナイトを改造するからいい」


 断られてしまった。しかしリダラ・ドゥブも黒騎士で、ベルさんの機と被ってしまうな。


 なお、回収したセア・フルトゥナには、魔神機ではドロップアウトしたユナも、普通に扱えた。魔神機で感じた魔力疲労もなく、長時間の操縦も問題なさそう、だそうだ。


 ラスィアもその後、乗ってみたが、彼女も問題なし。普通に魔術師や魔法を使える人間ならA級魔人機は操縦できそうだ。


 次に対魔神機戦の検証。基本的に魔神機や魔人機は防御障壁と呼ばれるシールドを搭載している。


 パイロットの魔力に影響されるらしく、このあたりは普通に魔法障壁などの防御魔法を使うのと、変わらないようだ。術者の能力によって強度は変わるし、攻撃を受け続ければ魔力を消耗し、結果として薄くなったり消滅したりする。


 マッドハンター機の強力武装で障壁を抜けた例もあるから、高い威力の武器なら対応可能だ。


 また魔神機や魔人機の武装の近接武器であるブレードだが、これは敵の防御障壁の効果を無視して、攻撃することができるようだ。


 サキリスとアーリィーも、近接武器を使用した際、対戦したセア・フルトゥナに障壁は発生しなかったと証言している。


 ドゥエル・シュヴェーアトと剣を交えたベルさんも、そういえば敵が障壁を使った印象はなかったと答えた。


 ただし、飛び道具に関しては、かなりの至近でも障壁は発生しているようだった。


 つまり、現状、有効なのは防御障壁を貫通するような強力武装か、魔人機が所有するブレードほか近接武装、ということになる。


 有効手段があるのはいいが、できれば手軽に使えるライフル系で敵の防御障壁を貫通させたい……。



  ・  ・  ・



 さて、鹵獲したセア・フルトゥナ、その捕虜としたパイロットは、二十代くらいの外見の青肌エルフの女だった。


 何ともこちらに対して威圧的というか見下し感が半端なく、尋問にきた俺たちを『下等な地上人』などと罵倒してきた。……うん、自分がどういう立場か、まるでわかっていないようだねぇ。


 俺個人としては、女性に手を上げるというのは趣味じゃないんだけど……我が相棒は、そこのところ遠慮がなくてだね。


 ……あんま殴らないであげてね。


 ベルさんは、捕虜子ちゃんを殴らなかった。ただし、たぶん魔法だろうが、かなり苦しそうなやつをやっていた。


 彼女、名前が451289と番号なのだそうだが、天上人に仕える魔法戦士なのだと言う。


 天上人というのは、今でいう魔法文明時代の人類であり、その支配種族に当たる。天上人は天空の島に住み、地上に住んでいる劣等種である地上人を支配していた。


 ……ふふん、魔法文明時代について、生きた証言ってやつだな、これは。


 とはいえ、451289ちゃんの知識と言うか、それはかなり限定的なものだった。


 というのも彼女は、施設を掌握したディグラートル大帝国によって、生産されたクローン体で、文明当時の生まれではなかったのだ。


 魔神機や、その量産型の魔人機のこと以外は、大帝国における運用や編成、装備など、どちらかというと現在の状況的な証言がほとんどだった。


 尋問の続きや、細部の確認は、スフェラやシェイプシフターたちに任せよう。


「あいつらに任せると、たぶん正気じゃいられなくなると思うぜ?」


 ベルさんはそんなことを言った。


 人間にはできない、おぞましい尋問を、シェイプシフターたちは行う。……そういう話をすると、何故かサキリスが喜ぶのだが……ま、深くは追求しない。するまでもないのを、俺は知っているからね。


「ただ、SS諜報部に任せる前に、一度、あの眠り姫と会わせたほうがいいかもしれん」


 ベルさんの言う『眠り姫』とは、世界樹の穴の地下遺跡で回収した銀髪少女のことだ。保護したがいいが、まだ意識は戻っていない。


「何か手掛かりになればいいが……」


 まあ、何もないよりはマシだろう。


 尋問を切り上げた俺たちは、軍港基地の格納庫へ。回収されたリダラ・バーン、リダラ・ドゥブの他、回収したセア・フルトゥナがあって、ウィリディスの技術者たちが集まっていた。


 エルフの技師ガエアは、何故だかわからないけれど、魔神機や魔人機を見て『怖い機械』と評した。


 一方のドワーフのノークは、特に悪いものは感じなかったそうな。


 ガエアが「怖い」と言ったのは、ひょっとしたら、魔法文明時代に作られたとされるエルフの誕生に関係しているかもしれない。遺伝子レベルに刻まれた、天上人やその兵器への恐怖心とか……。ディグラートルの言を信じるなら、だが。

 ドワーフは違うのかな……?


 それとは別に、技術者に混じり、ディーシーが検分に加わっていた。


「主よ。我がこの『まじんき』より優れたモノを作ってやるから、期待して待っていろ」


 ドゥエル・ファウストと交戦で、俺専用のアヴァルク・カスタムを壊されたこと。それが元で、魔神機に対抗心を抱いたようだった。


 ……最近のディーシーさんは、ダンジョンコアの性質なのか、はたまた俺の影響を受けたのか、ちょくちょく物作りに没頭していたりする。ディーシー先生の次回作にご期待ください。


 魔人機の解析、そして魔神機対策のための武器考案のため、ウィリディス技術者たちの奮闘がはじまった。


 同時に、シェイプシフター諜報部には、敵兵器のさらなる情報収集を命じた。

英雄魔術師はのんびり暮らしたい、1、2巻発売中。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 同じような感想をまた送るのもアレだけど…これは全身金色の剣をひたすら出す機体か種が芽吹く人が乗る機体のフラグかな?(笑) どっちに行くんでしょうねぇ〜 宇宙の方か英雄の椅子取りゲームの方か……
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