第794話、リヴィエル王国へ
※英雄魔術師はのんびり暮らしたい2巻、4月10日発売予定。
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また仕事が増えた。
大帝国の魔力プラント潰しと並行して、今度はリヴィエル王国に俺自身が使者としてお出かけすることになった。
「数日、留守にすることになるかもしれない」
俺は、アーリィーに告げた。
保護したエツィオーグたちは、エリサに面倒を見てもらう。もちろん、何かあればすぐに知らせるように言っておいた。
連合国への兵器引き渡し交渉は進行中。こっちもデカいヤマだ。しかも引き渡し後の修練時間も考え合わせれば、早ければ早いほどいい。
……。
ということで、重要案件なので、これはベルさんに任せる。俺が演じるジョン・クロワドゥは見ているから、ベルさんに後はやってもらう。
「オレがか?」
指名されたベルさんは、面倒そうに表情を険しくさせた。
「シェイプシフターに本格交渉を任せるのは、まだ不安なんだよ。それに連合のことは知っているだろう?」
ただシェイプシフターたちは、よく仕事を覚え、人間顔負けの処理能力を発揮する。そこで、トキトモ領冒険者ギルドのサブマスであるラスィアを引き抜き、現地はシェイプシフターたちに引き継がせる。なに、こっちは下手こいても国が傾くようなことにはならない。ヴォード氏もいるし。
「ジン様」
「ラスィア、さっそくで悪いんだけど、エスメラルダと協力して、シャドウ・フリートを指揮してくれ」
「はい!?」
ダークエルフさんは、目を丸くしている。
「私に艦隊を、ですか?」
「アーリィーには、ファントム・アンガーを指揮して、帝国外のプラントと、その建設中のものを破壊してもらう。君は、大帝国本国だ」
ここ最近のラスィアは、冒険者ギルドだったけど、シャドウ・フリートで俺が留守のあいだの代理指揮官を務めた経験があるし、シップコアがサポートするから問題はないだろう。さほど難しい任務でもない。
「かしこまりました。その任、果たしてみせましょう」
「よろしく頼む」
さて、これらの艦隊編成だが、シャドウ・フリートはそのままで問題なし。一方、ファントム・アンガーは、青の艦隊を元の受け持ち地域に戻す手前、少々弱体となってしまう。そこでいつもの如く、第二航空戦隊、レントゥス級中型空母三隻で補強して、空母を五隻にしておく。
……連合国向けの艦艇を出したから、ファントム・アンガーや青の艦隊でも、連合艦と同様の型を配備してもよくなった。これにウィリディス式に改造した艦を、シーパングから輸入したということで、再編するのも悪くない。
と、そのあたりは、アリエス浮遊島でディアマンテに研究してもらうとして、俺は、リヴィエル王国へ行く準備に取りかかる。
「そういうことで、アーリィー。後は任せる」
「うん、気をつけて」
俺はアーリィーと抱擁を交わした。ポータルを使えばすぐ会えるけど、向こうの状況によってはそうも言ってられないこともある。……ちょっとセンチメンタルになる。
「本当は、ボクも行きたいんだけど……」
「帝国の魔力吸収プラントを叩くのも重要な任務だ」
何せ人の命がかかっている案件だからね。
「艦隊指揮を任せられる人間は、ウィリディスでも少ない」
「うん。役割は果たすよ」
アーリィーはそれでも俺から離れない。俺も彼女の背中を確かめるようにさする。
「気をつけろよ。エツィオーグは出てこないが、大帝国は魔器を始め、航空艦すら撃破する能力を持っている」
戦いの中で、もし彼女の乗った艦が沈められるようなことになったら? 俺も平静ではいられない。
「それを言うなら、ジンもね。あなたが強いのは知っているけど、無事に帰ってくるかどうか心配しているのは、ボクだって同じなんだから」
無茶しないでね――アーリィーが寂しげな声を出すので強く抱きしめる。
「ああ、必ず帰ってくる。……って、当たり前だろうに」
やめやめ、不吉なフラグじみてきた。ちょっと行って帰ってくるだけの仕事だ。
「お互い油断しない」
「うん」
「じゃ、行ってくる。幸運を」
「あなたも」
俺とアーリィーの見送りを受けて、アリエス浮遊島の艦艇用ドック――係留されているアンバル改級強襲揚陸艦『ペガサス』へ乗り込む。
全長180メートル近く。艦首に巨大な箱型輸送艦をくっつけたアンバル級巡洋艦といった姿の艦艇である。
いざ、ヴェリラルド王国西部へ。『ペガサス』と護衛のゴーレム・エスコートが二隻、アリエス浮遊島を離れた。
・ ・ ・
俺は、ペガサスの箱型艦首、その格納庫にいた。トロヴァオン戦闘機の他、ファルケ戦闘機、ワスプⅡ地上攻撃機、ワスプⅠ汎用ヘリ、その兵員輸送型などがある。これらが十数機置かれ、少々手狭な印象だ。整備員らの作業の音が格納庫に響き渡る。
「航空機を載せているが、本格的にリヴィエル王国で使うのは、同盟が正式に締結された後になる」
俺はシェイプシフター歩兵大隊の指揮官、レーヴァにそう説明した。
「本当は戦車で乗り込むことも考えたが、こちらは同盟を締結してすぐに投入できない。何故かわかるか?」
「リヴィエル王国の兵たちが、まだ戦車を友軍と認識していないからでしょうか?」
「そういうことだ」
同盟を締結した後、リヴィエル王国の偉い人が皆に『ヴェリラルド王国は味方で、あの戦車は友軍だ!』と言わないと、たとえ同盟締結した後でも攻撃される恐れがある。
「まあ、それでも戦場に君らを呼ぶことはないようにしたいがね。ただ呼んだら……」
「わかっております。ご心配は無用です。我ら空挺大隊がすぐに駆けつけます、我がマスター」
レーヴァと彼に従うシェイプシフター兵たちが頷いた。こいつらは、本当物分かりがよくて助かる。
俺は、愛機であるトロヴァオンのコクピットへ乗るべく、梯子に足をかけた。
「というわけで、しばらく君らはヴェリラルド王国の領空で待機することになる」
「マスターは、どちらへ?」
「王国西部にいる先遣隊の元へだ。そこで現地の情勢と、これから行われる作戦を知らせてくる」
あと、状況によってはエール川のある西部も戦闘に突入する恐れがあるから、準備させておかないといけない。
「通信で済ませる手もありますが?」
レーヴァが進言したが、俺はコクピットに乗り込み、機体を稼働状態にさせながら首を横に振った。
「先遣隊にも直接挨拶しておきたい」
「お気をつけて」
「ありがとう」
シェイプシフター兵らが、トロヴァオン戦闘機から離れる。格納庫前方のハッチが開き、青空と複数の雲が視界に入った。
機体搭載コア『ナビ』が異常なしを報告し、俺はトロヴァオンを浮遊装置で浮かせて移動させた後、魔力噴射エンジンを噴かして母艦である『ペガサス』から飛び立った。
アンバル改級強襲揚陸艦『ペガサス』
全長:185メートル
武装:15.2センチ連装プラズマカノン×1
10センチ連装光線対空砲×8
10センチ単装光線対空砲×16
旋回式三連装ミサイルランチャー×10
艦載機:航空機(最大)24機、戦車ほか(最大)60両
姉妹艦:なし
高高度浮遊群にて回収されたアンバル級軽巡の船体と、輸送船のカーゴブロックを接合した改造鑑定。ボックス型の艦首と、軽快な巡洋艦の船体で構成されている。




