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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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552/1946

第550話、負傷


 とっさに身体が動いていた。


 敬愛するご主人様に迫る脅威。気づいた時にはSSランスを手に敵めがけて突撃していた。


 やらせない! もう失いたくない。

 故郷も、家族も、消えてしまった。

 彼は、わたくしに残った最後の生きる希望なのだから。 

 人生を与えてくれた。居場所をくれた。

 優しくしてくれた。

 幸せをくれた。


 そんなご主人様をやらせはしない! 彼が死ぬくらいなら、盾となって代わりにわたくしが死ぬ!


 だから後悔はなかったはずだった。


 自身の限界も無視しての急加速。シェイプシフター装備で、ご主人様と敵との間に割り込む。

 槍の一撃、あわよくばそのまま体当たりで敵を弾くつもりだった。だが、敵はひらりとわたくしの突きを避けると、左手にも剣を具現化させ、それを振り下ろした。


 刹那。


 何が起こったかわからないうちに、右肘に激痛が走り、ついで感覚がなくなった。


 やられた!? 


 でも、まだ――闘志は消えない。右手が動かないなら、左手がある!


 エクスプロージョン!


 爆裂魔法が至近距離で爆ぜた。



  ・  ・  ・



 サキリスが魔法を放ち、敵は吹き飛ばされた。だが同時にサキリス自身も。


 その後ろにいた俺は、とっさに彼女の身体を受け止めつつ後退。……くそっ、なんて無茶をしたんだ! 障壁で俺は大丈夫だったはずなのに――だがそれは口が裂けても言えまい。

 彼女は身を挺して俺を守ろうとしたのだから。


 傷口から血が(したた)る。爆炎で煤けたサキリス。対火の魔法具を身につけていなかったら、火に弱いSS装備は燃え上がっていたかもしれない。


「ご主人様……ご無事、でしょうか……?」


 俺の腕の中で、彼女はか細い声を出した。


「サキリス」

「よかっ、た……貴方が無事で……」


 治癒(ヒール)をかける。先の人型ロボじみた敵は、ユナが連続して放ったファイアボールに追い立てられて、こちらから離れていた。橿原(かしはら)がこちらへ駆けてくるのが見えた。


「申し訳、ありません、ご主人様。お手を、わずらわせて――」

「そんなことはいい! すぐ治るからな」

「っ……! だ、いじょうぶです。……まだ、戦え……」


 ひっ、とやってきた橿原が悲鳴じみた声を漏らした。氷の地面に落ちた血、そして傷口を辿ると、サキリスの右腕、肘から先がなくなっていたのだ。

 朦朧(もうろう)としていたサキリスも、それに気づく。


「……腕の、感覚がないんですが……あれ? わたくしの、右腕――」


 そこで彼女は、喪失した腕を見やり意識をはっきりと取り戻した。


「う、腕!? わたくしの腕がっ……!」


 当然のことながらパニックに陥るサキリス。俺は彼女の身体を抱きしめる。


「落ち着け、大丈夫だ。大丈夫……腕は治るから」

「で、でも利き手がないと! もう、わ、わたくしは――ご主人様のために戦えない!」

「治る! だから問題ない!」

「ご主人様の、お役に立てない! いやっ、わたくし、まだ貴方に何ひとつお返ししてないのに……!」


 ぼろぼろと涙が溢れてくる。しかしサキリスは懇願(こんがん)した。


「お願いします、片腕でも役に立ちますからっ! だから、どうかお側に! 見捨て、ないで……ぅっ」

「大丈夫だ。お前を見捨てたりはしない。大丈夫だから」


 彼女を抱きしめ、その背中をやさしく撫でる。ちら、と戦況を確認。……氷竜も人型ロボもどきも、向こうで戦っている。


 悪夢をみた幼子のようにすがりつくサキリス。不安、恐れ――ふだんの彼女らしかぬ弱音が次々にこぼれ出る。ショックが大きかったんだろうな。


「俺に任せろ。お前の腕は、すぐにもとに戻るからな。想像しろ、サキリス。腕があったころの自分、普段見慣れている自分の腕を――」


 俺はサキリスの目もとに手を当てて閉じさせると、集中してそれを思い描くように誘導する。大丈夫だ、無くなった腕の再生なら、冒険者のナギでやってる。

 俺は、膝をついてこちらを注目する橿原に言った。


「腕を再生させる。敵を近づけさせるな!」


 強く言ったあと、俺はサキリスをさらに抱きしめ、傷口に手をあてる。彼女のシェイプシフター製バトルドレスが自動で止血を行っていたようで、流れ出た血は最小だった。強く想像――彼女の腕をイメージする。


 ヒール・オール。


 光が溢れ、サキリスの右肘から腕が生える。


「ジンさん……!」


 橿原の声。見ている余裕がない。いまは治療優先。

 そして腕は再生した。


「よし、もう大丈夫だ。……橿原!」


 顔をあげれば、こちらに背を向けた彼女の向こうで、複数の氷のゴーレムがこちらに迫っていた。

 と、よく見たら、止まっている?


「世話が焼けるな」


 ディーシーの声がした。見れば、DCロッドの擬人化少女が腕をゴーレムどもに向け、魔法でその動きを封じていた。


「ほれ、我が時間を稼いでやる。早く仕留めろ」

「ディーシーちゃん、ありがとうっ!」


 橿原が駆け出す。翡翠色に輝くバトルメイルに身を包んだ女子高生は、その拳でゴーレムを次々に砕き、吹き飛ばす。

 まずはひと安心か。ホッと息をつく俺。ふと、服をひっぱられる。


「あ、あの、ご主人様」


 何故か、顔を真っ赤にしているサキリスが涙目で俺を見ていた。


「あ、ありがとうございます……。で、でも、その、近い、です……も、もう大丈夫です。その……」

「続きは、ベッドで?」


 冗談めかしながらそっと彼女を離して、俺は立ち上がる。サキリスも自力で立ち上がると、俺に頭を下げた。


「お、お見苦しいところをお見せしました。この(たび)は――」

「礼なら後だ。今は――」


 視界の中で、吹き飛ばされるユナの姿がよぎる。魔法障壁を張ったおかげで怪我はないようだが、劣勢なのは明らか。あの氷メカ、手強そうだ。


「魔法が効かないのでしょうか?」


 サキリスが神妙な調子で言いながら、新たなSSランスを具現化させる。


「至近距離で爆裂魔法を叩き込んだはずなのですが……」

「もうあんな無茶はしてくれるなよ」


 心臓に悪いからな。


「あいつを無視して、さっさとコアを押さえたいんだが、そうもいかないか」

「ご主人様、わたくしに今一度、チャンスを。今度は、やられません!」


 決意を秘めた瞳。負けっぱなしは気に入らないのだろう。戦意を失うどころか、雪辱に燃えている。あるいは、挽回したいかもしれない。


「……敵は素早いぞ」


 だからこそ、コアをさっさと落としておくべきでもある。あの氷メカが他にも出てきたら面倒だからな……。


「ユナを手伝い、奴を牽制しろ。まあ、倒してしまってもいいがな。お前に任せる。……橿原、来い!」


 まずは、ダンジョンコアを制圧。俺は橿原とディーシーを連れて、ピラミッドへ走った。

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