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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第548話、氷獄洞窟


 シズネ艇に乗って、移動する俺たち探索チーム。雪のつもった平原が後ろへと流れていく。


 今回、シズネ艇の操縦席についたのはリーレだった。ひと通り見て覚えたという彼女。行くだけなら方位を合わせて真っ直ぐ飛ぶだけなのでやらせてみた。

 クレニエール領に行くときから興味津々だったが、もう操縦桿を握るとは、本当に気にいったんだな。


 途中、氷のゴーレム集団とすれ違った。まだ敵と確定していないので、今回はスルーする。ゴーレム側も高度をとる物体への攻撃手段がないのか、手を出してこなかった。


 障害もなく、シズネ艇は氷獄洞窟と言われる穴の開いた山へと到着した。手前の森に降りられそうなスペースがあったので降下。探索隊はさっそく(ふね)から降りた。


 ヒーターの魔法薬を飲んで防寒対策。俺はライトスーツを着込み、その上に魔術師マントを羽織る。


 ベルさんは暗黒騎士装備。ユナもこれといって変化はなく、サキリスもSS装備のメイドバトルドレス。


 リーレは戦闘服の上に、黒マント――シェイプシフター装備の防具を身につけていた。橿原(かしはら)はブレザーにミニスカート、ただしっかり黒タイツを履いていて防寒対策はしてきていた。そしてリーレ同様、黒マントを装備。


 シェイプシフター兵が整列し、重装甲型パワードスーツのTPS-5ノームが、重々しく雪に深い足跡を刻む。ゴーレムコアで無人で動かすことができるノームだが、今回は中にSSパイロットが乗り込んでいる。

 いつもの黒ドレス姿のディーシーが俺の前に出た。


「それじゃ、はじめてくれ」

「心得た!」


 ディーシーの周りに、赤い円が浮かび上がる。魔力が(きら)めき、かざした手の先からテリトリー侵食を開始する。

 橿原が俺のそばにきて、小声を出した。


「ディーシーちゃんは、何をしているんですか?」

「マッピングだよ。俺、ダンジョンは攻略本見ながら進めるタイプ」

「ほーい、(あるじ)ぃ、ただいまこのようになってまーす」


 いったい何の影響を受けたかはわからないが、珍しく可愛さ全フリのような仕草。これで笑顔のひとつもあればもっと可愛いのだが……。ディーシーは左手をトレイを持つような位置に置く。すると青いホログラフ状のマップデータが現れた。


「全体的に一本道っぽいな……」


 細長い通路が曲がりくねり、かなりの広さを持つ空間に繋がっている。この部屋のような空間は、大型の魔獣とかがいても十分動けそうだ。


「ま、あのゴーレムどもが出てきたところだからな」


 ベルさんが首を傾けた。


「秘密基地みたいなもんだ。天然の空洞を利用してるっぽいけど、人工的に作られてるだろうよ」

「おー、(あるじ)、深部に何か建物があるぞ」


 ディーシーが作っているホロマップが、建造物を形作る。何だかピラミッドみたいな形だ。


「おやおや……これはこれは」

「なんだ、ディーシー?」


 唐突にニヤニヤしはじめたDCロッドの少女。青かったマップが一瞬、赤く染まったが、すぐに元の色に戻った。


「喜べ、主よ。この洞窟、ダンジョンコアがあるぞ」

「なんだって?」


 聞き違いかな? 喜べと言われたが面倒が増えて、俺の眉間のしわも増えたぞ。


「いま、ここのダンジョンコアがテリトリーを展開した。我が魔力を走らせたから怒ったのかな?」


 小首を傾げるディーシー。


「で、どうする主? よもやここで引き返すとは、言わんよな?」

「気分としては引き返したいけどね。ま、行くしかないな」

「だな」


 ベルさんもリーレも同意した。うちの超前衛の不死身戦士たちがこの程度で怯むことはない。


「心配しなくても、我が十数メートル範囲のテリトリーで、敵の不意打ちは防いでやる。が、そっちに力を使うから、それ以外のことは皆で対応してくれ」

「不意打ちがないだけでも助かるよ、ディーシー」


 盾代わりのノームを先頭に立たせて、俺たちは洞窟入り口に侵入した。


 岩がむき出している細長い通路のような穴。照明(ライト)の魔法で照らしてみれば、岩肌も凍っているのかうっすらと氷の層が張っていた。ヒーターの魔法薬を飲んでいるから気にならないが、洞窟内はかなりの寒さのようだ。


 数分歩いたら、最初の空洞に出た。何やら氷の柱がいたるところに立っている。高さはどれもニメートル以下。中には砕けているものもある。


「最初の敵さんかな?」


 ベルさんがデスブリンガーを構えた。先頭のノームの左右をベルさんとリーレ、SS兵が固めている。俺とディーシーはその後ろにいて、ユナ、サキリス、橿原と後衛のノーム二機とSS兵がいる。


 氷の柱の向こうに、GG-50型に類似した古代文明時代ゴーレムが一体、鎮座していた。氷の外装をまとうそれは、さながら氷像のようでもあった。


「壊れてんのかな? 動かねえぞ」


 リーレが魔法剣を手にしつつ様子を伺う。ほかに敵らしいものはなし。俺は前進を命じる。柱に気をつけつつ、しかしゴーレムが動き出した時に備える。


 と、リーレが氷の柱の傍らを抜けようとした時に声をあげた。


「!? おいっ、この氷の中! 人が入ってるぞ!」


 人!? 視線がそちらに集まる。ベルさんも「こっちもだ!」と、近くの氷の柱を見て叫んだ。


 橿原が絶句し、ユナは他の柱を順番に見て回る。ここにある氷の柱、そのすべてに人間や人型の亜人が閉じ込められていた。


「……身なりからすると、冒険者や盗賊のようだな」


 丸腰の者は一人もいなかった。武器や盾、防具を身につけている。洞窟の探索にきてやられたのだろう。おそらく戦闘の最中に氷づけにされたに違いない。


「入った者は誰ひとり、帰ってこない、ね」

「そりゃ、氷づけにされちまったんじゃなぁ、帰れんわな」


 俺とベルさんが顔を見合わせれば、ユナがぽん、と氷の柱を触りながら振り返った。


「まるで生きているようですが……中の人は」

「ああ、もう死んでる」


 ため息がこぼれる。気の毒だが、ここで立ち止まっているわけにもいかない――


「!?」


 動かずにいたゴーレムの目が光っていた。


「気をつけろ! そいつ活動し(生き)てるぞ!」


 ごごっ、と音を立て、ゴーレムが動き出した。その左手が前に出て、ばりばりと氷の盾が形成されていく。シズネ艇の攻撃を防ぎ、ミサイルすら凍らせて不発にさせた盾!


「野郎、それでここにいる奴らを……!」


 ベルさんが唸る。リーレも叫んだ。


「やべぇぞ! アタシたちも凍らせるつもりか!?」


 その時、一番近くにいたパワードスーツ、ノームが動いた。背部に背負うEQランスを前方にスライド展開。その穂先をゴーレムの胴体に打ち込んだ。


 その装甲を穿った次の瞬間、アースクエイクの魔法が発動。直撃を受けたゴーレムはその体を砕かれた。中のシェイプシフターパイロット君はお手柄だな。


 さて、おそらく門番だろうゴーレムを破壊してしまったから、深部にあるというダンジョンコアはこちらを敵と認識しだだろうな。


 ただ、このコアが単独で活動しているのか、あるいは操っている者がいるのか、確認はしないといけない。

 俺たちは洞窟のさらに奥へ進んだ。

TPS-5ノーム:大地装甲を使用した重装型パワードスーツ。狭い場所での前衛、盾役を担う。両肩にサブアームを装備し盾を保持する。振動武器を持ち、地形を切り開くなど戦闘以外にも工兵としての運用も可能。


武装:マギアカノーネ×2、EQランス×2、パイルバンカーシールド×1

   マギアショットガン他、ライフルなど手持ち銃器。

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