第460話、大空洞ダンジョン攻略隊
大空洞ダンジョンの攻略。初心者御用達に見えて、かなり深く、また最深部までたどり着いた者がいないと言われている実はくせ者ダンジョンである。
シャッハがマスターとして支配するダンジョンに乗り込むべく、俺は、エマン王、ヴォード氏らと打ち合わせした後、ウィリディスからの兵力の選定にかかった。
こちらは、俺、ベルさん、アーリィー、マルカス、サキリス、ユナといつもの面々に、ダスカ氏、スフェラ、異世界転移組であるリーレ、リアナ、そして傭兵のマッドがバーバリアンを駆って参加する。
ダンジョンの中なので戦闘機は使えない。故にパワードスーツ、バトルゴーレムからなるヴィジランティ部隊が参加。脇を固めるシェイプシフター兵も三個小隊、合計90名が戦列に加わる。
なお、作戦の経過によっては輸送作業にワスプ戦闘ヘリに出番がある可能性があるため、こちらは後方任務用に待機させる。
同じくエリサ、橿原が後方要員として救護や食事の業務をこなす予定だ。こちらにはSSメイドや、ウィリディス食堂に来ている料理人たちも応援するとのこと。長丁場になるだろうから、きちんと準備をしなくてはならない。
「休憩所のほうはアタシたちに任せておいて!」
エリサが例の看護師風の服をまとって言うと、それっぽく見えるから困る。橿原もいつもの高校の制服姿ながら、微笑んだ。
「食事の準備や手配は任せてください。後ろにいますけど、もし前線の手が足りないようなら、言ってくれればすぐに駆けつけますから」
頼もしいね。実際、エリサにしろ橿原にしろ、前線でも十分以上に働けるスペックを持っている。
さて、今回は合同作戦である。俺たちだけでなく、雪辱に燃える冒険者が六十名ほど集まった。
「ジン、今回は世話になる!」
「今回も、じゃないですか?」
ヴォード氏の開口一番の挨拶に、クローガが苦笑しながら言うのだった。
冒険者グループは、ギルドマスターのヴォード氏を筆頭に、ラスィアさん、クローガ、ガルフのほか、ギルド襲撃の際に負傷したルティや、アインホルンのアンフィ、ブリーゼも討伐に加わった。
「あいつは必ずあたしが討ち取る!」
アンフィは憤怒の表情を隠そうともしなかった。相棒ともいうべき仲間のナギに一生涯残る傷をつけられた恨みを晴らさんというのだ。
ルティとパーティーを組んでるルング、ラティーユも参加を表明。他にもAランク冒険者三名、Bランク冒険者九名。C、D、Eランク冒険者がおよそ四〇名が討伐隊に志願した。
現在、王都にいてすぐに行動できる冒険者の半数近くの数だ。
残りは依頼遂行中で参加できない者、あるいは初心者過ぎて討伐に加わるのは無理と判断された者が大半だった。
一部のC、Dランク冒険者は、主力とも言うべき面々が留守のあいだに、急な依頼などで冒険者が必要になったときのためにギルドで待機することとなった。
さらに王国軍からは、王都騎士団から聖騎士ルインほか一部の騎士と、少数ながら近衛部隊が派遣された。
「ジン殿、我々もお供します」
聖騎士ルインは、魔法甲冑を操る操縦騎士たちと来たのだが、同時に申し訳なさそうな顔になる。
「残念ながらシュタールは持ってこられませんでした。騎士団上層部から、使用の許可が出ず、どうしても行くのならお前たちだけで行け、と言われまして……」
王国軍側の参加は、主に志願兵のみという扱いだったせいだ。
エマン王は正規軍の派遣を打診してくれたが、俺はやんわりお断りした。正直ダンジョン攻略については、冒険者より劣る騎士や兵士を大勢送られても邪魔なだけなのだ。
しかしシャッハは王都に炎の魔獣集団を進撃させた。これは王国に対する宣戦布告でもあり、売られた喧嘩を買わないのは王国側としてもよろしくない。
苦肉の策として、志願兵を送ることになったが、非常にやる気な王と違い、騎士団はもう少し冷静だったのだろう。ルインたちに魔法甲冑を与えなかったのは、ダンジョン内でどれほど活躍できるか疑わしかったからに違いない。
地形によってはその巨体が通れない場所もあるし、魔法甲冑の脚部の高速推進ユニットも、ダンジョン内では威力を発揮しづらいのではないか、と。
ある意味それは正しいが、ルートによっては魔法甲冑でも十分に動き回れる広さがあるので、間違ってもいた。
「構いませんよ、ルイン殿。魔法甲冑を操れる騎士たちには、うちのヴィジランティをお貸ししますから」
「え、よ、よろしいのですか!?」
ルインや騎士たちが驚くのも無理はない。彼らはウィリディスでの演習の折、シュタールよりも上位の性能をヴィジランティが持っているのを目の当たりにしている。それを貸してもらえると言うのは、むしろご褒美にも等しい。
王国軍にヴィジランティを貸すことについて、リアナはいつもの表情を崩さずに確認してきた。
「……よろしいのですか?」
「今回は冒険者たちが参加するからね。初めて魔法甲冑を見る者たちが、王国軍の機体と勘違いしてくれるだろう」
もし王国軍が参加しなかったら、ゴーレムという扱いで無人機のみ使うところだった。魔法甲冑の噂は、冒険者ギルドでも話題になっていたから、ちょうどいい目くらましになるだろう。シュタールが来なかったのは不幸中の幸いだったかもしれない。
本当は、騎士団上層部は、ルインたちも送りたくなかったのだろうが。どうしても行きたいならお前たちで行け、と彼らに言ったのは、機体を出さなければ諦めてくれると期待してのものじゃないかと思うのだ。
まあ、それはいい。王国軍の事情など些細なことだ。
かくて大空洞ダンジョン攻略隊が編成された。ウィリディス勢、冒険者、王国軍志願兵からなる攻略隊は、後方支援要員を除いた戦闘員で約200名ほどとなる。一番多いのはウィリディス勢を構成するシェイプシフターだったりする。
俺は、ワスプ戦闘ヘリと少数の戦闘機の護衛のもと、先んじて大空洞ダンジョンに向かった。冒険者や王国軍にのんびり遠足させるつもりはない。大空洞ダンジョンの手前にポータルと後方支援陣地を構築する。
シャッハが妨害したときに備えて、連れてきたSS兵の一個小隊はこの陣地警護を担う。そう考えるなら、実際にダンジョン攻略に回る人数は170名ほどということになる。
ワスプⅠの輸送コンテナに、兵と共にやってきた俺は、さっそくポータルを設置。SS兵が警戒しつつ、救護所や炊事所、その他簡易施設を組み立てる。
まず、ポータルでウィリディスよりSS中隊本隊を誘導。ヴィジランティを借り受けた王都騎士団たち、最後に冒険者グループを大空洞の手前まで導いた。
ポータルを初めて利用する者たちは、あっという間にダンジョン手前まで来たことに驚いていた。さらに冒険者たちは、王国軍の新兵器――ということになっているヴィジランティを見て、好奇心と驚きの混ざった視線を送っていた。
興味はあっても、王国軍の騎士たちがいるせいか、冒険者たちも迂闊に近づかない。冒険者は卑しい者と考える騎士たちが多く、そういう態度をとられることが多いので、近づくのを敬遠したのだろう。
王国軍の魔法甲冑という風を装わなければ、おそらく多数の冒険者たちがうちのパワードスーツを取り囲んでいただろうな。
冒険者グループを束ねるのはヴォード氏。王国軍志願兵グループはルイン。ウィリディス勢は俺、といきたいところだが、ベルさんに任せることになっている。
一応、エマン王から総指揮官として攻略の指揮を執るように言われている俺である。が、俺自身は、別件で忙しいのよね。
大空洞、第一階層。入り口入ってすぐのところに少数の護衛と共に俺は立つ。
さて、道を切り開こう。




