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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第446話、洞窟捜索


 ワスプ汎用戦闘ヘリが、兵員輸送コンテナを抱えて、空を飛ぶ。


「ヘリに乗るのも久しぶりだ」


 マッドが言うので、俺は「だろうね」と返した。この世界に他にヘリコプターは存在しないだろう。

 西日が差し込む。そういえばつい先日もこの光景を見た。ゴーゴン討伐に出たルティとその仲間たちを助けるための移動で。


「もう夕方だが、いいのか?」

「何が?」

「魔法甲冑を探すまでに夜になるかもしれない」

「あまりに遅くなるようなら、ポータルで帰れる。心配ない」


 俺は明日も学校なんでね。宿題はないけど、出席しないと周りがうるさい。

 やがて、ワスプはボスケ大森林地帯に到達した。マッドとシュタール隊が魔獣との交戦中に落ちたという穴の上空に差しかかる。地面が陥没して、洞窟の一部が見える。

 リーレが声を張り上げた。


「先日のラミアどもの巣に近いな!」

「案外、地下でつながってたりしてな!」


 ベルさんが彼女の肩に乗る。俺はパイロットのヒンメル君に、ギリギリまで降下させるように命じる。

 安全に飛び降りられる高さになったのを確認し、俺たちは地上へと降りた。ポータルで帰るので、ワスプは帰投させる。

 さて……へえ、結構下の方まで斜面になってるな。薄暗いせいで、奥が真っ黒だ。


「甲冑は下の方だ」


 マッドがライトニングバレットの銃口を下に向けながら言った。……なにげに銃口を人に向けないところが、銃の扱いに慣れているのがわかる。


 俺はお決まりのDCロッドを使ってのスキャンを開始する。ボスケ大森林地帯にダンジョンがあるなんてなぁ……。今まで聞いたことがなかった。


 マップを表示、その地形を見ながら、マッドに確認すると、俺たちはさっそく下への斜面を下った。


 ホーリーライトの魔法で暗闇を照らす。リアナとマッドが射線を確保しつつ進む中、リーレと暗黒騎士形態のベルさんが前衛を行く。


「それにしてもよ」


 リーレが口を開いた。


「さっきの地図みて思ったんだけどさ、この洞窟、中の道がやけに広くなかったか?」

「確かにな」


 こんなに広いならバトルゴーレム連れてきてもよかったかなって思う。俺が後方に目をやれば、医療バッグを提げているエリサ、そして最後尾を守る姿形の杖ことスフェラがついてくる。


「オレ様の思っていることを言ってもいいか?」

「何だい、ベルさん?」

「この洞窟の道が広い理由さ。オレ様が思うに、何かでかいバケもんの通り道なんじゃないかって思うんだ」

「でかいやつ?」


 あまり聞きたくないなそれは。


「何だと思う?」

「地面を這うタイプじゃないな、まず」


 斜面を滑る音が、壁に反響する。俺は転ばないようにバランスをとる。


「ワームでもない。連中がいるなら、もっと壁や天井に穴が開いてるだろうからな」


 下り坂が終わり、地表からの穴から続く底の部分に到達した。魔獣の姿はなかったが、同時に思いがけない光景を目にする。


「ないな」

「あぁ、場所は間違いないはず」


 マッドが左右を見回した。彼の魔法甲冑を放置した場所に着いたのだが、その甲冑が影も形もなかった。


「俺は、魔法甲冑の脚がやられて動けなくなったと聞いていたんだが?」

「その認識で正しい」


 マッドは、今は何もない岩場を指さした。


「自力で動けるなら、こんなところに乗り捨てない」

「でもないじゃねーか」


 リーレがやれやれと腰に手を当てた。


「一人でにどっか行っちまったってか? それとも誰かが持っていった?」

「魔法甲冑を一人で持ち上げて? 普通の人間には無理だね」


 いったい何キロあると思ってるんだ。……いやまあ、リーレやベルさんの怪力だったら一人でも運べるだろうけどさ。


「誰が持っていくって言うの?」


 エリサが三角帽子のつばをいじりながら、やってきた。


「そもそも、天井の穴は偶然、陥没したものでしょ? それからさほど時間が経っていないのに、誰かがここに入ってきたということ?」

「偶然、通りかかって入ったって線もあるけど、どこかの運のいい冒険者パーティーが拾って持っていったのかも」

「団長」


 少し離れたところにいたリアナが片膝をついた姿勢から立ち上がった。


「足跡があります。大型の」


 特殊部隊出身のリアナは、痕跡を発見したようだ。


「それと近くの岩に、硬いモノがぶつかった跡。あちらの通路に移動してます」

「魔法甲冑の足跡?」

「歩けないはずだぞ?」


 ベルさんが突っ込めば、リアナは首を振った。


「人型の足跡はありますが、裸足です」


 裸足――俺とマッドは顔を見合わせた。

 リアナが見つけたという足跡は、一見すると岩と砂でよくわからなかったが、彼女がその形をなぞってくれたおかげで、ようやくそれがわかった。


「よく見つけたな、こんなの」

「何だと思う、ジン?」

「まあ人間ではないな。でかすぎる」

「巨人族か?」


 リーレが指摘するが、おそらくそれだろう。洞窟の通路の大きさを考えると、高さは四メートル未満だろうが、それでも十分に大きい。ビッグフッドかな?


「何だって魔法甲冑を持ち去るんだ?」

「お人形遊びの相手じゃないのか?」


 ベルさんが冗談めかした。魔法甲冑をおもちゃに戯れる巨人の図。……勘弁してくれ。


「どうする、マッド?」

「最低でも魔石コアは回収したい」


 魔法甲冑の動力、確かランクにしてAプラスの大魔石だったな。確かに甲冑を新調するにしろ、貴重なコアは取り戻しておきたいな。ウィリディスには、一応替えとなる魔石があるんだけどね。


「探索続行だな。リアナ、先導しろ」

「了解」


 ポイントマンに指名されたリアナは、ライトニングバレットを手に歩き出した。ちなみに歩兵分隊におけるポイントマンは、斥候(せっこう)として部隊の前を警戒しつつ先導する者を指す。

 俺たちの洞窟探検は、もう少し続く。

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リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

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