第1955話、年頃は同じ……?
ファッションモデルかな。
ニーゴは男の子の姿をしているが、ボーイッシュな女の子が着るようなパンクな服装を選んだ。……チェーンとか巻いたら、音楽やってそう、なんてイメージで語られそう。
男の子のセンスではないんだよな。ニーゴは男の子であり女の子でもあると聞いているが、外見だけでは性別を測れないかもしれない。
衣装の割に化粧しないから、どギツさはないが……ナチュラルに顔がいいんだよねぇ、この子。
少々驚きはしたが、まあ――
「中々似合っている」
「そうですか?」
ニーゴは微笑した。少し照れも入っているかもしれない。
「こちらではあまりいないタイプだな」
元の世界ではあるかもしれない。というかあるだろうな。俺はあまりファッションの先端についてはよくわからないが、何となく見た気がするあたり、どこかで見ているのだろう。
「変ですか?」
「俺のレパートリーが少ないだけで、全然ありだと思うよ」
新鮮な驚きというやつだな。似合っていない、ダサいなどという印象が微塵もないので、純粋に合っているのだと思う。
「ファッションに興味があるなら、専門誌や雑誌を取り寄せるよ」
シーパング本国には、一般にも本や雑誌が流通している。識字率が急激に上がった効果、ではあるんだよな。
やはり本は字が読めないと、手に取らないからね。
シーパング本国が誕生したのは、大陸戦争の最中。まだ二十年も経っていない。教育、勉強も幅広い層に広がって、難民、移民を受け入れてここ十年で急に伸びたというか、成果が出てきたというか……。
何もないところからきて、ここまできたというところだ。一日が農奴としては働いて終わる……とか、そういうのと無縁だから、色々やることができるというか。生活にメリハリがついているんだよな。
閑話休題。識字率で思い出したが、ニーゴ君はまだこちらの字は読めない。だがファッション雑誌なら写真を見るだけでも参考にはできるかもしれない。なんならデザイナー先生を紹介してもいい。
俺と同じく異世界から流れ着いたデザイナー先生――例のヴェリラルド王国で現代水着を流行らせ、王族貴族に娘たちのウエディングドレスは、デザイナー先生の作でなければいけないと言わしめるほどの影響力を与えた御仁である。
……などと少々飛躍してしまったな。ニーゴが記憶に問題があって、過去も彼の文化もわからないから、取っ掛かりができたかもと思って極端に走ってしまった。
話題に困っていたところに、急に話が弾むネタが見つかったら、全力でそこを掘り下げるよね……。
「うっわっ」
唐突に女の子の声。この聞き覚えのある、毎日聞いている声は、リンちゃんか。
「美人……!」
「やあ、リンちゃん」
俺は声をかける。まさか月のマギ研究所に来ているとは思わなかったよ。ポータルを通ってきたのだろう。間違っても宇宙船を操縦してきたわけではない。
「今日は学校は終わったのかい?」
「でなけりゃ、来れないわよ」
リンちゃんが言い返した。それもそうだ。やっぱり好奇心旺盛な子だ。学校から帰ったら、月に遊びにくるなんて。
「このイケメン君、誰?」
「俺の友達」
俺はニーゴの肩に手を置く。
「ニーゴ君。うちの娘のリンだ。――リン、自己紹介して」
「あ、えーと。リン・アミウールです、よろしく」
「ニーゴです。よろしく」
にっこり微笑むニーゴ。リンは頬を赤らめる。
「うわっ、なに、めっちゃイケメン過ぎない、この子!」
年頃の娘がそういう反応をすると、お父さん少し気になるね。まさか、一目惚れしたとか、やめてよね。
「ねえ、パパ。この子、異星人よね?」
「……本人を前に、そういう言い方、あまりよくないんじゃないか?」
ニーゴが困るじゃないか。俺への質問なのはわかるけど。
「裏でコソコソ言うほうが失礼じゃない? 悪口でもないのにさ」
リンちゃんが反論してきた。ああ言えばこう言うお年頃でもある。
「気持ちってものがあるだろう?」
「パパだって、あたしたちの気持ちが全部わかるわけじゃないでしょ?」
「わかるさ。パパだもの」
「変に意地を張らない。大人でしょう?」
リンちゃんには言われたくないな、それは。そのリンに、ニーゴは言った。
「僕が違う星の人間って誰かから聞いた?」
「いや別に。そんなんじゃないかなーって」
「どこか違う?」
「うーん、雰囲気? まあ、服もね。研究員じゃなさそうってなったら、どこぞの貴族のお坊ちゃんか、異星人かなって。……ほら、宇宙船が見つかったってニュースにもなっていたし」
などと言いながら、リンちゃんはしげしげとニーゴを見つめる。顔の赤らみは薄れ、興味のほうが勝っている感じであった。
「で、パパ。この子、ひょっとしてうちに来るの?」
「どうしてそう思うんだ?」
割とパパは、リンちゃんがどうしてそういう答えを導き出したか気になります。
「私服っぽい格好しているから」
リンちゃんは片方の眉を吊り上げた。
「施設の外に出るから、そういう格好しているって考えたら、隣にパパがいる時点で、うちに来るんじゃないかって思ったのよ」
「リンちゃん」
俺、ちょっとビックリだよ。
「君、探偵になれるかもな」
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