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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1949/1966

第1939話、長男というレッテル


 冒険者試験のダンジョン攻略は、何とも苦いものになってしまったようだった。

 俺は子供たちにそれぞれ声をかけて回った。

 ユーリ、ジュワン、レオナの後に、ラッタとも話した。


「僕は長男で、もっと皆の言動に注意を払うべきだった」

「長男かどうかは、あまり関係ないな」


 俺も長男だったけど、それは置いておくとして。


「その言い分だと、長男じゃなかったら責任をとらなくてもいい風にも聞こえる。リーダーなら責任をとらなければいけない。次男だろうが末っ子だろうが、それは関係ない。もちろん、リーダーじゃなければ責任を感じなくていいとか、それも違う」


 いいこと、悪いことに、兄弟姉妹の順番に関係はないのだ。


「俺はお前に、長男だからと押しつけるつもりはない。大体、お前もジュワンもユーリも、そしてレオナも同い年じゃないか。ちょっと生まれたのが早かったからって、余計な責任を背負い込むことはない」


 でもまあ、責任感が強いことはいいことだ。でも何事も強すぎるのはよくないな。


「バランスだよ。何事もね」


 極端なのはよろしくない。人生においてはね。


「歳は変わらないんだ。過剰に気負わず、何なら他の兄弟も順番にリーダーをやらせてもいい。そうすれば新しい知見を得られるかもしれない」

「僕にはリーダーは向いていない?」

「ダンジョンでは、いいリーダーぶりだった」


 映像を見ていた限りでは。


「もう一端の冒険者のようだった。ラッタたちが、まだ冒険者でなかったのが不思議なくらいだ」


 俺がそう褒めると、ラッタははにかんだ。少し照れが入ったが、褒められれば悪い気はしないが気恥ずかしく感じる年頃かもしれない。


「よかった……?」

「ああ。俺は、お前たちが今回の試験に合格するものだと思ってケーキまで買ったんだ。……まさか、場外乱闘で不合格とは」


 ディーシーもしっかり厳しいな。それだけの振る舞いだったということだ。親に代わって、しっかりよくないところを指摘したわけだ。


「乱闘はしていないよ」


 ラッタが言うが、もちろん、それは俺もわかっている。


「今のは言葉のあやというものだ。だが、確かに帰ってきてからの振る舞いはよくなかったね」


 現場は見ていないけど、ディーシーがそう判定したのだからアウトだ。そもそも試験ダンジョンにギルドフロアを追加したのは、実に教育的にできている。

 冒険者に限らず、あらゆる職業で、仕事以外の面での立ち振る舞いというのは大切なものだ。実際、そうやって人と接する時間というのも馬鹿にならない。


 冒険者で言えば、必ずギルドスタッフとコミュニケーションを取らなければいけないし、他の冒険者との絡み、付き合いなど、仕事をしていく上で避けては通れない道である。


「ジン・アミウールの息子だから?」

「それもあるし、そうでもないと言える。たとえ俺の子供でなくても、礼儀正しく振る舞うことは社会で成功する秘訣でもある。君たちの場合は、俺やお母さんたちのこともあって、人一倍紳士的であることを求められる」


 有名税というやつだな。


「もしそれが嫌だというのなら、偽名を使ってアミウールの人間ではないように振る舞うのだな。ただバレた時が面倒だし、アミウールの人間を名乗らなければ何をしていいということにはならない」


 駄目なモノはだめ。そこは人間として、名前は関係ない。


「偽名を使うなら、それで通す。アミウールの名前で行くのであれば、周囲から自分以上のものを押しつけられる。覚悟は必要だ。その点は、すまないな」


 親は選べない。だが物事は悪い面もあればいい面もある。


「ハンデを裏返せば、持ち味になって上手くいくこともある。すべては気持ちと考え方次第だ」


 アミウールの名前を利用できるのも、その子供である特権でもあるわけだ。何でもネガティブに考えるものではないということの一例だな。


「話が逸れたな。今日はいい教訓だっただろう。本番前でよかったな。次に同じような間違いないをしなければいいんだ」

「次……」

「挑むんだろう? ダンジョン試験」


 俺は立ち上がった。


「まさか、今回のことで冒険者になるのを諦めるなんて言わないよな?」


 ダンジョン部分は合格したのに。むしろ、今回の失格はダンジョン外の行動が原因なので、ここは冒険者とか関係なく改善しないと社会でやっていけない。


「そんな軽い気持ちで、命を賭けてないよね?」

「もちろん」

「ダンジョンでミスをした?」

「していない!」


 ラッタは答えたが、すぐに首をかしげる。


「ちょっと改善したほうがいいかも、というところはあったけど……」

「なら、それを実践するためにも、なおチャレンジしなければな」


 反省点があって直さないといけないとか、ちゃんと考えて偉い。――ほら、立ちな。ケーキがあるから食いにいこう。


「お前たちはツイているな。ダンジョン試験なんて、普通はやれないんだぞ」


 一部の貴族や冒険者の子供が、親や監督役が見ている中で冒険者登録前にダンジョンに行って体験することはあっても、専用のトレーニングダンジョンまで用意してある環境は、うちくらいなものだ。


「それはどうかな?」


 ラッタが気づいたとばかりに言った。


「僕らは試験に合格しないと冒険者になれないのに、他の人は試験なしで冒険者になれる。これって見方によってはズルくない?」

「まさに。物事のいい面と悪い面というやつだな。そしてお前たちはそれを上手く利用できる立場にいるわけだ」


 ぶっつけ本番でミスするより、事前に試せてミスが致命傷にならない場があるほうがよくない?

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