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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1726/1962

第1716話、貴重な卵だが、どうする?


 最悪に備える必要がある……そう言ったらこれだ。


「封印が消えたぞ」

「え?」


 ベルさんが、近づいて再度鑑定した時、卵にかけられていた封印が消えていることに気づいた。

 ダスカ氏や研究チームと合流し、改めてクソデカい卵を見上げた時にそれである。


「レヴィアサンの卵……」


 研究者たちは、初めて発見された卵に感動しているが、素直に喜んでいる場合でもなくなった。


「卵が孵ったら、このベースキャンプは壊滅だ!」


 卵の時点で100メートル。蛇型であるとしても、中身はそれ以上の長さになるのは確実だ。そんなものが地面を這うだけで、ここら一帯のものが潰れてしまうだろう。


「学術的には、とても貴重なものです!」


 研究者の一人が、興奮を露わにする。いや、それはそうなんだけどさ……。


「マスター・ダスカ、どうなんでしょう? これが孵って海に出ることになったとして、レヴィアサンが繁殖して海がとんでもないことになったりは――」

「レヴィアサンは、神話の世界の話しか知りませんからね……」


 ダスカ氏も困っていらっしゃる。古代の学術的文献にはこれまで記載はなく、聖書だとか神話の中でしか出てきたことがないから、詳しいことはほとんどわからないと言っていい。


「その辺り、どうなんでしょうか、ベルさん」


 多少、レヴィアサンのことを知っていそうなベルさんに助けを求める。ベルさんは腕を組んだ。


「まあ、レヴィアサンは図体がでかくて、基本的に天敵って呼べるものがいない」


 体の大きさもさることながら、その鱗はドラゴン並みに堅牢。そこらの野生生物では文字通り歯がたたない。デカさの時点で、噛みつく馬鹿はいなさそうだが……。クラーケンなら、あるいは……。


「つまりは、そう簡単に死ぬような生き物じゃないから、そうポンポン増えるものじゃない。海に出たからって、そこで大増殖することはないから、世界が滅ぶとか、そういうのはない。ないが――」


 ベルさんは首をかしげる。


「外洋を船が航行していたら、やられるかも」


 その辺りは、外洋の巨大水中モンスターと同様で、別段、レヴィアサンが特別というわけではないという。


「それはそれで自然のことだから、オレ様がどうこういうもんでもないんだがな。気になるのは、この卵が封印されていた理由と、その封印が何故突然消えたか、なんだ」


 ベルさんが問題点を口にする。


「どこの誰だか知らねえが、こいつを封印しなきゃいけない理由があって封印をしていたんだ。普通に考えりゃ、手に負えない、危険だから封じたって考えるところなんだが……」

「その理屈でいくと、卵から孵すべきではない」


 俺の言葉に、ベルさんは頷いた。


「そうなんだ。だから、今すぐこいつをぶっ壊すか、そうしないのなら、封印された理由を早急に突き止めて、以後の対策を練るべきだとオレ様は思う」


 実にもっともな意見だ。俺は、ダスカ氏を見た。


「近くの遺跡を調べて、わかりそうですか?」

「まだ、あの卵が、遺跡の文明と関係があるかは不明です」

「ですが、マスター」


 研究者の一人が挙手した。


「魔法的な封印が自然に施されることはあり得ないことです。何者か、人か、あるいは魔法を使える種族による手が加えられたのは確実です。その可能性が高いとすれば、やはりこの遺跡群の……」

「可能性は高いでしょう。それは認めますが、まだ現状、それを示す証拠は何も発見されていません。決めてかかるのは、視野を狭くしますよ」


 温厚な教師然とした口調で、ダスカ氏は研究者たちに告げた。過去の文明の遺物を調べる時、偏見や思い込みは真実を見落とすことになりかねない。

 人間というのは非常に都合のいい耳と目を持っているから、決めつけて動くとそれ以外を見落としやすくなる。


「専門家の見地からすると、どうすべきだと思う?」

「どうとは?」


 ダスカ氏が問うた。俺は答える。


「この卵、生まれる前に破壊すべきか、それとも調べるまでは壊すのは保留にすべきか」

「壊す……!?」


 研究者たちがざわめいた。いまだかつて見つかっていなかった生物の卵というのはわかる。新しい生き物の発見。それは研究者たちにとっては、ぜひ取り組みたいテーマでもあろう。

 だがこれが産まれた後、人類やそれに類する種族にとって危険をもたらす可能性は高い。危険であれば、排除する。それは人間としては自然な行動だ。


「軍を率いた人間の立場としては、産まれる前に処分、ですか……」


 ダスカ氏が心持ち低い声を出した。納得はしていないが、理解はできるという雰囲気だ。ベルさんが口を開いた。


「まあ、潰してしまったほうが面倒はないわな」


 ざわっ、と研究者たちが青ざめる。ベルさんは続ける。


「産まれる前に他の生物に食われるってのは自然界じゃ、普通のことだしな。これも一つの弱肉強食じゃないかね」


 何も特別おかしなことはしていないという口ぶりだ。卵ぶっつぶせ派だと思われるとあれなので、俺は自分の意見を言っておく。


「俺としてはまだ決めかねている。聞いたのは、専門家はどう思っているか純粋に知りたかったからだ」


 というのも、このレヴィアサンが封印されていたのって、悪い意味でそうと決めつけていないだろうか、と思ったからだ。

 九割方、危険だから封印されたのだと思うんだけど、残り一割は、人類の希望、未来を託すために、来たるべき日のために封印されていた、というやつ。


 これは元の世界のアニメとか怪獣映画を見てきたから持っている意見なんだけど、遠い未来に来る災厄に備えた人類の守護神――それがこのレヴィアサン・エッグの可能性はないだろうか?

 ……いや、たぶん考えすぎだ。危ないものの方の可能性が高いんだ。でもね万が一ってことがあっても困る。


「――というわけで、俺としては、封印の理由がわかるまでは、処分保留にした方がいいんじゃないか、と思う」


 どうだろうか、と俺が尋ねると、研究者たちは満面の笑みを浮かべていた。ダスカ氏は言う。


「私も、ジン君の意見に賛成します。まずは封印の理由を明らかにすべきです」


 研究者たちも頷いた。何故だか知らないが、やる気に満ちている。ベルさんが皮肉げな顔になる。


「それでいいのならオレ様も反対はしないがな。だが一つ問題があるぞ。封印が解かれた以上、卵の中身が動き出した。いつわからねえが、近いうちに産まれるぞ、これ」


 その前に、封印のわけがわかるのか? それなんだが――俺は言った。


「昔みた映画で、やっていたことがある。テラ・フィデリティアの技術で、もしかしたら時間を稼げるかもしれない」

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― 新着の感想 ―
羽化して最初に見たのがジンだったら懐いたりして。
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