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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1725/1884

第1715話、卵の正体


「ほーう、あれがその卵か」


 ベルさんは、実物を遠くから眺めつつ言った。

 ダスカ氏から話を聞いた翌日、俺たちは、大陸南部クレサータ地方の地下空洞に来ていた。


 ジャルジー王との話の後、案の定、エマン前王とお食事をしていたベルさんに、例の卵の写真を見せたが――


『これじゃあ、よくわからんな』


 とのお答え。これだけ巨大な卵を産む生物に心当たりがあるか聞いたら、ベルさんは――


『レヴィアサンくらいじゃねぇかな』

『レヴィアサン?』


 一瞬、レヴィアタン、リヴァイアサンが頭によぎった。海の化け物。巨大な鯨とかワニとか、悪魔とか言われていたが、マンガやゲームだと巨大な海の蛇とか、ドラゴン的な扱いをされていた。

 ベルさんに詳しく聞いてみると、どうやらそのレヴィアタンと同じようで、この世界ではレヴィアサン呼びなのだそうだ。


『まあ、サイズ的な話をしたら、って話だ』


 と、ベルさんは注意した。


『そもそも海の化け物が、陸地の地下に卵っていうのもおかしな話だしな」


 それはそう。でも俺はふと思う。

 地下空洞は、実は昔、海だったという可能性。今は大陸になっているけど、昔は南部クレサータ地方は海で、卵が置かれたのは、まだ海だった頃ではないか。


 とまあ推測はそれくらいにして、俺とベルさんは実物を見に、遥々地下空洞へやってきたわけだ。

 なお、子供たちも見にきたがっていたが、家で留守番である。小さな子を連れての地下探検はまだ早い。地下世界にも危険な魔獣がいるし、どこかではぐれて大捜索なんてのは御免蒙るね。

 ただまあ、子供たちが大きくなったら、一緒に地下探検もいいなとは思う。


「この空洞自体もでかいな」


 ベルさんは、天井を見上げる。

 頭上には、全長250メートルのドレッドノート級戦艦が浮遊静止している。航空型戦艦が余裕で飛び回れる広さと言えば、如何に広大な空間であるかわかる。


「レヴィアサンが果たして活動できる広さなのかとも思ってきたが、これならまあ、動けるか」

「どんだけデカいんだよ」


 俺は、レヴィアサンの大きさに呆れるのである。ベルさんは首を振った。


「同盟軍の戦艦がいるってことは、やっぱあの卵を警戒してか」

「そういうこと。今のところ、地下の巨大モンスターは例外なく人類に敵対的だからね」


 サイズ差を考えれば無視もできようが、探知すると襲ってくる地下の巨大生物たち。何でだろうね。

 人の中にも蟻を見つけたら、ちょっかいをかけるのがいるけど、大抵の人は相手にしないものだ。だけど、こっちのモンスターたちは見つけたら最後、追尾してくる。


「蜘蛛は、自分と同じかそれ以下だと襲ってくるっていうし」


 ベルさんが言った。この世界にはジャイアントスパイダー種という、人間や他の生物を襲うのがいる。たとえば普段みかける蜘蛛――人間より小さいそれらは、基本、攻撃はしてこないが、これらも人間がもし自分と同じくらいの大きさだったら襲ってくるのだそうだ。

 俺らが日常の中で見かける虫たちも、サイズ差で敬遠されているだけで、そうでなければ敵だらけだよ。


「で、ベルさん、鑑定したんだろう? 何の卵だったんだ?」

「聞いて驚け」


 ベルさんは不敵な笑みを浮かべた。


「あれはレヴィアサンの卵だったぜ」

「ほう、ベルさんの予想通りだったわけだ」


 まあ、それくらいしか、あのサイズの卵を産む生物に心当たりがなかったってだけなんだけどな。特異過ぎて、案外推定しやすかったとかいうやつ。


「ただ、普通の卵じゃねえな」

「まあ、これだけデカいとな」

「そうじゃなくてだな、こいつには魔法的な封印が施されているんだよ」


 封印? 思いがけないワードに、そっちのほうで驚いてしまったぜ。


「人の手が加えられているということか?」

「人かどうかはわからんぜ。ただ鑑定によると、産まれないように封がしてあるってこった」


 産まれないように、か。それで今まで産まれなかったということか。……というか、いつからこの卵がここにあるか知らないんだけど、封印云々という時点で、近年ではないのはほぼ確定だろう。


「吸血鬼……それとも大昔、地底人が済んでいたとか?」

「まあ、近くに遺跡の類いがあるんだ。地底人かはさておき、何か文明があったのは間違いないだろう」

「卵の封印も、その文明がやったかもしれない、か……」


 まあ、文明が滅びた後にここに産みつけられたって可能性もあるけど。つまり、たまたま場所が重なっただけで、まったく無関係ってこともある。そこは時代が一致するか、研究者たちに任せるところだけど。


「しかし、封印とは穏やかじゃないな」

「そうだな。このままそっとしておく案件じゃねえかな」


 ベルさんは単刀直入に言った。

 触らぬ神に祟りなし。産まれないように封印しているんだから、そのままにしておけ。卵から孵ったら、それは厄災的な破壊をもたらす……かもしれない。


「危険だから封印した、と考えるのが自然ではある」


 俺は考える。でも中身、レヴィアサンなんだよね……。


「これ、今ここ海じゃないけど、仮に生まれた場合どうなるんだ?」

「レヴィアサンは水の中じゃなくても、呼吸はできるから、海じゃないからって窒息死はしねえよ。陸地では動きは遅いが、海の方向へ這っていくんじゃね」


 海を感知できるとして、ここからそこに行くまで、町とか村ってあったっけ。地下を進むだけなら、地震で済むだろうか……?


「封印についてもそうだが、もうちょっと詳しい情報が欲しいな」


 地下遺跡と卵の封印は関係しているのか。何故、封印されているのか。その意図は知りたい。


「変に刺激する必要はないが、現状の把握も必要だ」


 万が一、封印が解ける事態になった時の対処法とか、そういうの。今だって封印されています、じゃあ大丈夫だね、とも言い切れない。魔法的な封印とベルさんは鑑定したが、それが永久的な保証もないわけで。


 封印が切れかかっているとか、あるいは時間制限があって、消えましたというのは洒落にならないからね。

 危険かもしれないというのなら、最悪に備えておく必要がある。

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― 新着の感想 ―
掘り起こされた悪夢が囁く、 古代文明(神)が忘れたプログラム、 生ける狂気地表に満ち、 平和の日々踏み躙る。 って事にならなければ良いですね。
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