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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第1257話、クィーン・オブ・シーパング


 シーパング同盟艦隊を名乗るこの艦隊は、シーパング本土防衛艦隊より臨時編成された遠征軍である。艦隊編成で言えばウィリディス第7艦隊である。


 今回、連合国難民を救助するために多数の輸送船を連れており、艦隊はその護衛のためについている。


 つまり、自力で逃げられるセイスシルワ王よりも、海から先に逃げることができないセイスシルワの民を救出すべく急行中だったのである。


 シーパング同盟艦隊旗艦『クィーン・オブ・シーパング』。


 全長328メートル。ウィリディス軍でもレーヴァテイン級に匹敵する大型超戦艦である。

 45.7センチ三連装プラズマカノン砲11基、マギアブラスター砲10門、魔導放射砲3門と重武装を誇り、シードリアクターによる無限動力、水晶結界防御ほか、ブァイナ装甲など、圧倒的性能を誇る。

『クィーン・オブ・シーパング』はシーパング国の象徴、艦隊旗艦として建造された。姉妹艦はない。


 女王座乗艦として、国の命運を賭けた戦いや、同盟の盟主として同盟各国軍を鼓舞(こぶ)するためにジンが建造させた経緯を持つ。


「――それで、あれからセイスシルワの王様は何か言ってきたかしら?」


 旗艦『クィーン・オブ・シーパング』の司令塔で、かつての魔法文明の女帝であるヴァリサは聞いた。

 シェイプシフター艦長であるクィン・シー少将は頷く。


「いえ、あれから何も」

「ふぅん、そう……。道を開けてって言ったのにね」


 白と青のシーパング軍服に袖を通しているヴァリサである。魔法文明から現代にきて、世界を見て回ったり、割と自由を満喫していた彼女だが、時々、シーパングの女王として行事に参加したりしている。


 ジンからは『仮』の女王を演じてくれればいい、と言われていたが、あいにく部外者を決め込んでばかりもいられなかった。


「世界が混沌としている」


 ヴァリサは腕を組んだ。


「自由に見て回るには、世界が殺伐とし過ぎているわ。大帝国、スティグメ帝国……」

「今回、真・大帝国は連合国を蹂躙じゅうりんしています」


 クィン・シー艦長の言葉に、ヴァリサは席にもたれた。


「わたくし、前々から連合国を旅行したかったのよね。テレノシエラに連なる山脈とかセイスシルワの南海岸とか」

「セイスシルワの海岸なら、もう間もなく見えてきますよ」

「うーん、わたくしは観光で来たかったわ」


 ヴァリサは苦笑する。クィン・シー艦長は首を傾げた。


「海岸を見るために今回、ご出陣を?」

「まさか。そうであればよかったのにね」


 手をヒラヒラと振るヴァリサ女王。


「女王はシンボルにならなければいけない。崩壊する連合国から、避難民を可能な限り収容する――シーパング国の慈悲深さをアピールすると共に、連合国残存兵たちの心を掴むイメージアップ作戦」


 それがシーパング同盟の象徴として完成したばかりの『クィーン・オブ・シーパング』が出撃した理由。そして女王はすっと席を立つと、芝居がかる仕草で胸もとに手を当てた。


「女王を演じることにかけて、わたくしほど適任はいないわ」


 魔法文明時代、アポリト帝国の女帝を演じてきたクローンであるヴァリサである。その立ち振る舞いは、すべて女王を演じるためにあった。


「お言葉ですが、女王陛下。危険な前線に立たれることはないのではございませんか? 我々シェイプシフターでも陛下の代役は務められますが」

「クィンシー。わたくしはね、自由に生きていいと言われたけれど、お父さんの役に立ちたいのよ」


 お父さん――ジン・アミウール、ここではジン・トキトモ。アポリト帝国の女帝の時、ヴァリサはジンの子供たち――魔術人形の兄弟姉妹たちの中に入れてもらったのだ。


放蕩(ほうとう)娘なんて言われたくないわ。皆、戦っているのだから」


 シーパング同盟艦隊は、セイスシルワへと接近する。旗艦『クィーン・オブ・シーパング』に従うは6隻のアイオワ級戦艦、3隻のヨークタウン級空母、アンバルⅡ級クルーザー8隻と護衛艦22隻、強襲揚陸艦6隻、輸送船20隻である。


 シーパング本土防衛艦隊の主力が出撃しているが、島自体はエルフ艦隊が残っており、発見されていない現状では充分な戦力があった。



  ・  ・  ・



 シーパング同盟艦隊の『クィーン・オブ・シーパング』が、セイスシルワの旗艦を()ねたという報告は、『バルムンク』の俺のもとにも届いた。


「何で避けないかな」

「『クィーン・オブ・シーパング』がですか?」


 ラスィアの言葉に、俺は首を横に振る。


「セイスシルワのほう。一目見れば、『クィーン・オブ・シーパング』のほうが大きいってわかるのに」


 ぶつかったらやばいのは、インスィー級改のほうだって子供でもわかりそうなものだが。


「抗議してきますかね?」

「来るだろうな。まあ、こっちも抗議するだけどな」


 少なくも無警告でぶつかるとは思えない。針路がぶつかりそうなら、相手に警告しているだろう。


「まあ、世論がどっちを支持するかだよな」


 民を見捨てて逃げた王様と、支援を求める声に応えて自ら駆けつけた女王様。これでシーパング同盟艦隊に救助されたら、セイスシルワの民はどう思うだろうね。


『閣下』


 シェイプシフターオペレーターが振り返った。


『第3艦隊より入電。「セイスシルワ王都周辺の制空権を確保。現在も多数の避難民が王都へ集まりつつあり」です』


 アーリィー率いる空母機動艦隊が、セイスシルワに侵攻する真・大帝国軍を押さえ込んでいるようだ。


『第6艦隊も地上部隊を展開。追尾してくる敵地上軍を迎撃しつつあり』


 青の艦隊には、AS・魔人機を搭載する機動巡洋艦が複数配備されている。

 フィーバー作戦で、連合国に転移してきた真・大帝国艦隊に打撃を与えてはいるが、残っている敵が、こちらに集中してくる可能性もあるか。


「避難民を守って戦うと、一撃離脱ができないからな。それだけが気がかりだ」

「ネーヴォアドリスとニーヴァランカでも、ウィリディス軍は動いていますから」


 ラスィアは言った。


「セイスシルワばかりに集まるとは限りません。うまくバラけてくれると思います」

「戦線を無闇に拡大した弊害(へいがい)ってやつだな」


 まったく、本当なら国がやるべき民の避難や誘導などを、こっちが肩代わりしてやっているんだ。セイスシルワの生き残りの軍と政府は、こき使ってやるからそのつもりでいろよ!

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