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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1263/1939

第1255話、行動順位


 真・ディグラートル大帝国は、連合国の防衛部隊を各所で粉砕していた。


「わかっていたことだが、大帝国の進撃速度は早いな」


 俺は、各戦域から送られてくる偵察情報を戦術モニターで見ていた。


 旧連合国も含めて、各国の状況。


 ウーラムゴリサ:連合国。現在、真・大帝国に侵略を受け、壊滅状態。

 ニーヴァランカ:連合国。ウーラムゴリサ同様、ほぼ壊滅状態。

 セイスシルワ:連合国。現在、真・大帝国の猛攻を受けている。

 ネーヴォアドリス:連合国。東部より真・大帝国から攻撃を受けている。

 テレノシエラ:連合国。真・大帝国から無視されている状態。孤立中。


 カリマトリア:旧連合国。無政府状態。大帝国、スティグメ帝国によって無茶苦茶。

 トレイス:旧連合国。現在、大帝国植民地。


 プロヴィア:旧連合国。現在、シーパング同盟。

 クーカペンテ:旧連合国。現在、シーパング同盟。


「連合国がまったく相手になりませんからね」


 ラスィアは冷淡だった。


「兵器の性能差、練度不足。百戦錬磨の大帝国を相手に、連合国は今も昔もまったく勝てません」

「ジン様のご意向を軽視した報いです」


 エルダーエルフのニムは、きっぱりと言った。


「彼らがもう少し協力的であったなら、ここまでの大敗はなかったでしょう」

「連合国の貴族たちのお花畑具合には、心底うんざりさせられる」


 どうしてこうなった? 度重なる敗北で何も学ばなかったのか。


 ラスィアは同情するように顔を傾けた。


「大帝国の脅威を肌で知った者は死に、話でしか知らない者たちばかりが残ったのでしょう。機械兵器が揃ったことで、大帝国と互角になったと錯覚してしまった」

「愚かなことです」


 ニムは鼻息が荒かった。冷静で淡々としながら、内心の憤りが見え隠れしている。


「ラスィア、戦況を軽くまとめてくれるか?」


 モニターひとつに情報量が多すぎる。連合国とその周辺は混沌を極めている。


「はい、閣下。連合国はもはやガタガタです」


 ラスィアはキーボードを操作する。……元々事務も慣れているとはいえ、ダークエルフさんは鮮やかなキータッチを魅せた。慣れればファンタジー世界の住人でもこうなるんだな。


「すでに首脳陣を失い、国としての機能を喪失したウーラムゴリサ王国とニーヴァランカ国は、少数の地方領主と守備隊が残っている程度です。もはや大帝国の制圧軍がこれらを駆逐するのを待つだけの状態です」

「風前の灯火」

「シャドウフリートと大帝国解放軍が、大帝国に対して一撃離脱を試みており、現状は敵戦力の漸減(ぜんげん)を行っています」


 フィーバー作戦進行中。正直、救援は難しいな。


「連合国東に位置するセイスシルワは、国土の七割を大帝国に占領されている状態です」


 これまでもほとんど戦いを経験してこなかった国である。先日、吸血鬼帝国の攻撃があったが、おそらく本土を戦場にしたのはその1回だけだろう。大帝国の手も届かず、戦争についても後方支援が主だった。


「シーパングからの軍事支援を受けて、一応艦隊はありましたが。やはり戦場に対する認識不足が目立ち、各個撃破されている形です」

「……地図を見た限りじゃ、逃げ場がないな」


 北にあるウーラムゴリサ王国側からも大帝国は攻め込み、東方辺境領域も大帝国が蹂躙しているため、セイスシルワは、北、西、東と三方から包囲されている。ちなみに南は海だ。


「避難する人々は、王都方面に流れていますが、その王都も陥落は時間の問題でしょう。すでに国の首脳陣は南への避難を開始しています」

「何か、ここの王様、民より自分優先なところを感じるんだよな」


 俺は艦長席にあるパネルを操作する。ニムが首を傾げた。


「と、言いますと?」

「ディアマンテから報告がきた。シーパングへの亡命申請が来てる」


 セイスシルワの王族は、真・大帝国の攻撃に泡を食って国外へ逃亡を図ったのだ。いやはや、それにしても。


「判断が早いね」

「逃げ足の早さでしょうか」


 ほんと遠慮しないなエルダーエルフさんは。


「亡命を受け入れるのですか?」

「まあ、一応、同盟国だからね」


 クーカペンテとプロヴィアに比べたら、全然優先度は下だが。


「お古ではあるんだが、残存艦艇もまとめて逃げてくるみたい。投資した分、返ってくるなら、まあ回収しようかなと」

「だいぶ投げやりですね」


 ラスィアが苦笑する。俺も本音を隠さなかった。


「そりゃね、国を頼って逃げてくる民を見捨てて、というのが、どうもね。大帝国相手に無理なのはわかるけど、もう少し避難民への配慮や、少しでも助けようという気概くらいあってもいいと思わない?」


 せめて避難する民のために時間を稼ぐとか、そういうのがないってのは、どうにもいただけない。


「ちなみにプロヴィア王国にも来ているみたい。ネーヴォアドリスの地方貴族が難民の受け入れと亡命を」


 エレクシア女王から、俺宛てに連絡があったそうな。


「どうもネーヴォアドリスの地方貴族たちは、自国よりも、シーパング同盟に頼りたいって話みたいだ」

「都合のいいことを……。プロヴィアとエレクシア様が苦境の時、連合国は何もしなかったでしょうに」


 ニムが渋い表情を浮かべる。俺は手を振った。


「まあ、気持ちはわからないでもないが、ネーヴォアドリスはマシなほうだよ。そのプロヴィアが侵略された時も、ネーヴォアドリスの中には、プロヴィアの避難民を受け入れたところもあった」


 まったく何もしなかったわけではない。連合国や国が動かなかっただけで、地方の領主の中では救いを求めてきた人々を助けた者もいたわけだ。


 ただまあ、支援して欲しい時に国が動いてくれなかったのは間違いなく、プロヴィアの民の多くは不満を持っているだろうけどね。


「如何いたしますか?」


 ニムが聞いてきた。うん、まあ――


「大帝国に対する嫌がらせは続ける。とりあえず、セイスシルワの難民救助と、ネーヴォアドリスの支援を優先しようと思う」


 後者は、ファントムアンガーが介入する前から、大帝国に侵攻されて奮闘していた国のひとつだ。セイスシルワと違って民も国土も犠牲になっているから、大帝国戦への戦意、というか憎悪が高いだろう。


 個人的なことを言うと、俺はあの国の王様は嫌いじゃないんだよね。連合国首脳がジン・アミウールの排除を謀った時、ネーヴォアドリスの国王は関係してなかったからね。

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