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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1050/2017

第1042話、先制航空隊


 大帝国第二艦隊が、エルフの里近くにまで(せま)っていた。


 世界樹がそびえる里を囲むは、広大なる古代樹の森。俺たち、ウィリディス艦隊はその守護者として上空にあった。


 青の艦隊、そしてエルフの艦隊と共に大帝国の侵攻を待ち構えている。俺は旗艦である巡洋戦艦『ディアマンテ』の艦橋にいた。


「閣下、敵偵察機が接近中です」


 旗艦コアであるディアマンテが報告した。


「間もなく、世界樹と展開中の本艦隊を目視確認すると思われます」


 エルフの里の状況を探ろうと送り込まれた偵察機だろう。そしてこちらの防備を見て、本隊に通報するのがその任務である。


「予定通りだな」


 俺は司令官席にいて、頷いた。


「こっちの陣容を見てもらえ。敵が通報したら、撃墜(げきつい)だ」

「はい、空中に戦闘機小隊を待機させてあります」

「結構」


 本来なら、情報を持ち帰らせないために、発見したら素早く撃墜するのがセオリーだ。敵に正確な数や陣形などを知られれば、弱点を探られることに繋がる。


 ただ、敵の偵察でこちらの全容は掴まれないことはわかっている。……だから間違った認識を持ってもらうために、敢えて見せようというのだ。


「さて、敵の指揮官は、こちらの陣容を見て、どう判断するかな?」



  ・  ・  ・



 ディグラートル大帝国第二艦隊、旗艦『ランポス』の司令塔にて、ヒュース海軍中将は、偵察機がもたらした情報を、幕僚(ばくりょう)たちと検討していた。


「敵は世界樹の手前にて展開。大型戦艦を含む戦艦19、巡洋艦16、空母3、小型艦20以上……」

「さらにこれとは別に、戦艦3、小型空母3、巡洋艦8、小型艦30以上の別動隊がいるようです」


 通信参謀の報告に、ヒュース中将は顎に手を当て、考えるポーズをとった。


「かなりの大艦隊だな」

「はっ。合計すれば戦艦22、巡洋艦24、空母6、小型艦は最低でも50以上……。数では我がほうが若干上回っていますが、ほぼ互角とみてよいでしょう」


 参謀長は言った。


 第二艦隊は、戦艦25、重巡洋艦25、空母10、フリゲート60からなる。


「つくづく、第四艦隊が失われたのが痛いですな」


 第四艦隊が健在ならば、敵の倍の戦力で圧倒てきたものを。参謀長が顔をしかめれば、航空参謀が発言した。


「閣下、敵は空母戦力が我が艦隊より劣っております。ここは、航空隊にて、先制攻撃を仕掛けましょう!」

「やれるかね?」


 ヒュースが問えば、航空参謀は力強く頷いた。


「報告によれば、敵は我がほうの空母より小ぶりの空母。それも6隻のみ! こちらは10隻、艦載機の数もこちらが上回っておりましょう! 制空権を確保すれば、艦隊決戦を仕掛けつつ、航空隊による同時攻撃を仕掛けることができます! さすれば、戦いを有利に進めることができるでしょう!」


 航空参謀は血気盛んに、早口にまくしたてた。


「敵は揚陸艦隊を攻撃しましたが、その数は少数機でした。そのわけがこの空母の数です。敵の航空兵力が、我がほうより劣っていることが証明されました。数があれば、そもそも一気に攻めることができたはずですから!」

「ふむ……」


 大帝国内において、空母と航空機の運用は始まって日が浅い。今回、空母航空隊にとって、本格的な会戦におけるデビューとなる。自然と航空参謀の鼻息も荒かった。


 正直に言えば、ヒュース中将は、空中艦隊の運用はともかく、空母戦と航空隊の扱いについて指揮をする自信がなかった。


 だが、これも無理もない話だった。急激な兵器の進化と、戦術、運用の変化。わずか数カ月前には存在しなかったものを、いきなり使いこなせと、いうのは難しいのだ。


 ダークエルフ兵を量産し、それで兵器の運用は問題なくなったとしても、指揮官の頭が進化するわけではない。


 新兵器に対応し、戦術に落とし込めるシェード将軍のほうが、むしろ珍しいタイプと言える。


「参謀長、どうかね?」

「航空参謀の言うとおり、空母戦力は我が艦隊が優勢ではあります」


 しかし、参謀長の表情は硬い。


「ただ、ここは敵地です。航空機の運用は何も空母だけでなく、地上からでも基地さえあれば運用できます」

「しかし、相手はエルフですぞ?」


 航空参謀が言った。


「原始的な亜人種族に航空機など使えるわけがない!」


 大帝国にありがちな、亜人差別が出た。ヒュース中将は『こちらもダークエルフ兵を使っているのだが……』と心の中で呟いた。


 知識と訓練があれば、エルフにだって戦闘機を操ることができるのではないか?


「エルフは自然の中でしか生きられない蛮族です。機械兵器とはもっとも相性が悪い。さらに他種族に対して排他的となれば、彼らが航空機に頼り、自らの領域に航空基地など作るなどあり得ません!」


 航空参謀の発言に、幕僚たちも同意するように頷く。……言われてみれば、もっともだ、とヒュースも思った。飛行場を作るために、森の木を切るという発想がエルフにあるわけがない。


「よろしい。では空母群に下命(かめい)。航空攻撃で先手をとる。攻撃隊を出撃させよ!」


 提督は決断した。


 第二艦隊司令部の命令は、艦隊後方に随伴(ずいはん)するコンカス級空母10隻にただちに伝えられた。


 コンカス級は全長240メートル。格納庫に60機の航空機を搭載する正規空母である。これに露天甲板に18機を載せており、1隻あたり78機の艦載機を運用できる。


 ただちに、第一次攻撃隊が発艦した。船体中央の飛行甲板と、艦橋のある上部飛行甲板の二段式空母であるコンカス級から、戦闘機の機首に円盤型胴体を持つラロス戦闘機、トンボのような見た目のリヴェルリ攻撃機が次々に飛び立つ。


 第一次攻撃隊は計380機――戦闘機180、攻撃機200の大編隊である。


 エルフの里の敵空母はコンカス級より小型であり、その艦載機数もせいぜい240から多くても300機くらいだと想定された。


 それぞれ戦闘機と攻撃機に分かれるため、敵が空母の戦闘機を全部振り向けたとしても、それを上回る数の戦闘機で圧倒できる、と考えられた。


 先手を取れたことに、第二艦隊司令部は満足し、その戦果を大いに期待するのだった。



  ・  ・  ・



 ウィリディス艦隊旗艦『ディアマンテ』。


 大帝国艦隊から、攻撃隊が発艦したという報告が、俺のもとに届いた。敵さんの行動は、観測ポッドとステルス偵察機により筒抜けである。


「敵、戦爆連合、およそ380、接近中!」

「まあ、こちらの空母が少ないと判断したんだろうね。足の長い航空機で先制は常道だ」


 それ故、読みやすいがね。俺はニヤリとした。


「では、こちらも航空機で迎撃しよう。直援空母より迎撃機を発進。それと、アーリィーの第三艦隊に航空隊の発艦を打電」


 我が第二艦隊の空母3隻、青の艦隊の空母3隻――そしてアーリィーの第三艦隊の空母『8隻』から、反撃の矢が放たれた。

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