↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 64

…なんで、コイツが、ここに?…


 …なんで、このアムンゼンが、朝っぱらから、この矢田の家にやって来たんだ?…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 そして、思いながら、このアムンゼンを見た…


 アラブの至宝を見た…


 この矢田の細い目を、さらに、細くして、見た…


 途端に、このアムンゼンが、


 「…矢田さん…そんな目をしても、なにも、わかりませんよ…」


 と、抜かした…


 「…矢田さんは、普段から、目が細いから、そんなに目を細めたら、ダメです…目が、今以上に、細くなってしまいますよ…」


 と、忠告した…


 こともあろうに、この矢田トモコ様に忠告したのだ…


 私は、思わず、


 「…オマエ…口の利き方に気をつけろ…この矢田トモコの目が細いのは、生まれつきさ…」


 と、言ってやりたかったが、言わんかった…


 なにしろ、相手は、アラブの至宝と呼ばれる、アラブ世界の大物だからだ…


 だから、言わんかった…


 口にすれば、どんな目に遭うか、わからんかったからだ…


 だから、言わんかった…


 とても、怖くて、口に出せんかった…


 が、


 態度には、出ていたらしい…


 私の表情にも、出ていたらしい…


 「…矢田さん…なんですか? その嫌そうな顔は…」


 「…なんだと?…」


 「…バレバレですよ…矢田さんの胸の内は…」


 アラブの至宝が、抜かした…


 この矢田の胸の内がわかると、抜かした…


 だから、


 「…私の胸の内って、なんだ?…」


 と、聞いてやった…


 「…なんで、こんなに、朝っぱらから、矢田さんの家に、ボクが、やって来たかと、思ってるんでしょ?…」


 「…その通りさ…」


 「…ボクには、ボクの考えがあるんです…矢田さんは、気にしないで下さい…」


 平然とアラブの至宝が、抜かした…


 気にするなと、言っても、ここは、この矢田の家…


 その家に、こんなに、朝っぱらから、やって来て、どうして、そんな横柄な口が利けるんだ?


 私は、思った…


 思ったのだ…


 ホントは、


 「…生意気な口を利くんじゃ、ないさ…」


 と、言って、張り手で、二、三発ぶん殴ってやりたかったが、できんかった…


 なにしろ、相手は、王族…


 れっきとしたサウジアラビアの王族だからだ…


 ここで、この矢田が、そんなことを、すれば、どんな目に遭うか、わからんかったからだ…


 だから、できんかった…


 できんかったのだ…


 そんなことを、考えていると、マリアが、


 「…なに、アムンゼン、矢田ちゃんの家に来て、威張っているの?…」


 と、アムンゼンを注意した…


 「…矢田ちゃんに、謝りなさい…」


 と、注意した…


 だが、アムンゼンは、謝らんかった…


 ただ、黙って、そのままの姿勢でいた…


 要するに、王族として、生まれてこのかた、チヤホヤされて、生きてきたのだろう…


 あまり、他人様に、頭を下げた経験が、ないに違いない…


 なにしろ、このアムンゼンは、3歳にしか、見えんが、ホントは、30歳…


 30歳のれっきとした大人だ…


 大人=成人男子だ…


 小人症だから、大きくなれないのだ…


 だから、3歳のマリアと、同じくらいの年齢にしか、見えないのだ…


 3歳のマリアと同じくらいの年齢にしか、見えないから、マリアは、このアムンゼンを仲間だと、思っている…


 自分と同等だと、思っている…


 そして、ホントは、このアムンゼンは、とてつもなく偉いのだが、それも、マリアは、まだ子供だから、わからない…


 それゆえ、マリアは、このアムンゼンを対等に扱う…


 自分と同等に扱う…


 が、


 それが、このアムンゼンには、心地が良いのかも、しれない…


 なまじ、サウジアラビアの王族に生まれたものだから、他人様から、同等に扱われたことが、ないのだろう…


 いつも、チヤホヤされて、生きてきたのだろう…


 だから、心地良い…


 変に特別扱いをしないので、心地良いのだろう…


 それになにより、このアムンゼンは、小人症…


 だから、大きくなれない…


 大人になれない…


 それゆえ、子供の頃から、周囲の人間は、憐みの目と言えば、言い過ぎだが、そんな目で、アムンゼンを見ていたに、違いない…


 そして、アラブの至宝と呼ばれるほど、人並み外れた頭脳を持つ、このアムンゼンは、容易く、周囲の視線の意味に気付いたに違いない…


 そして、それが、嫌だったに違いない…


 が、


 マリアは、違う…


 自分を同等に扱う…


 自分と大差ない存在として、扱う…


 だから、アムンゼンは、マリアを好きなのだ…


 尊敬も憐みも、なにもなく、同等に接するから、好きなのだ…


 また、なにより、アムンゼンが、マリアを好きになった、きっかけは、セレブの保育園に通うアムンゼンが、保育園の中で、孤立したのが、きっかけだった…


 孤立したアムンゼンに、なんとか、周囲の保育園児たちと、仲良くさせようとしたのが、マリアだったからだ…


 アムンゼンは、かつて、サウジアラビアで、クーデターを起こし、追放された…


 自分の代わりの者を王位につけ、自分は、国王を陰から操ろうとした…


 が、


 その目論見が、あっけなく、破れ、日本に追放された…


 追放されたアムンゼンは、自分の身分が、バレないように、保育園に身を潜めた…


 外見が、3歳にしか、見えないから、3歳児が、通う、保育園に身を潜めるのが、一番、無難だと思ったのだ…


 しかしながら、このアムンゼンは、ホントは、30歳…


 周囲の3歳の保育園児の中に、30歳の大人が、紛れ込んで、うまくいくわけが、なかった…


 いかに、外見が、3歳にしか、見えんでも、実際は、30歳だからだ…


 それが、同等に、仲間に入れるわけがなかった…


 考えてみれば、当たり前のことだ…


 そして、そんなアムンゼンに、手を差し伸べたのが、マリアだった…


 周囲の保育園児たちから、孤立したアムンゼンに手を差し伸べたのだ…


 そして、その行為にアムンゼンは、感謝した…


 心の底から、感謝した…


 なぜなら、地位も権力もなにも関係なく、見返りもなにもなく、マリアが、アムンゼンに手を差し伸べたからだ…


 いわば、無償の愛だからだ…


 だから、そのとき以来、アムンゼンは、マリアに頭が上がらなくなった…


 アラブの至宝と呼ばれ、アラブ世界で、絶対的な権力を持つアムンゼンが、ただの3歳児に過ぎないマリアに頭が上がらなくなった…


 私は、今、それを、思い出した…


 このマリアが、アムンゼンを叱っているのを、見て、それを、思い出したのだ…


 すると、マリアが、大声で、


 「…さっさと、矢田ちゃんに、謝りなさいよ!…」


 アムンゼンを叱った…


 叱ったのだ…


 しかし、アムンゼンは、謝らんかった…


 この矢田に謝らんかった…


 だから、余計に、マリアの怒りが、激しくなった…


 「…どうして謝らないの!…」


 と、激しくなった…


 それを、見て、バニラが、慌てた…


 マリアの実母のバニラが、慌てた…


 バニラは、当然、アムンゼンの正体を知っているからだ…


 だから、慌てた…


 「…マリア…殿下に、そんな口は、利いては、いけません…」


 と、マリアをたしなめた…


 さすがに、マズいと思ったのだ…


 が、


 アムンゼンは、バニラの発言に、


 「…いいんです…バニラさん…ボクが悪いんです…」


 と、言って、バニラを制した…


 いわば、母親のバニラから、娘のマリアを守ったのだ…


 それから、


 「…申し訳ありませんでした…矢田さん…」


 と、あっけなく、私に頭を下げた…


 これまでの態度が、ウソのように、簡単に頭を下げた…


 これは、きっと、マリアが、バニラに怒られるのが、忍びないからだ…


 だから、慌てて、この矢田に頭を下げた…


 私は、そう、見た…


 私は、そう、睨んだ…


 つまりは、このアムンゼンは、それほど、マリアが、好きだということだ…


 アラブの至宝は、それほど、このマリアを好きだということだ…


 だったら、あのリンは、なんなんだ?


 あの台湾のチアガールのリンは、なんなんだ?


 このアムンゼンにとって、どういう存在なんだ?


 私は、あらためて、思った…


 思ったのだ…


 そして、そう思いながらも、


 「…さっさと、家に上がれば、いいさ…」


 と、言った…


 バニラ、マリア、そして、アムンゼンの3人に言った…


 途端に、バニラが、


 「…それでは、失礼します…」


 と、軽く、私に頭を下げて、家に上がった…


 娘のマリアの手を取って、二人、いっしょに、家に上がった…


 そして、二人が、家に上がってから、


 「…では、ボクも、失礼します…」


 と、アムンゼンも、また、この矢田に軽く頭を下げて、家に上がった…


 私は、それを、見届けてから、


 「…目的は、なんだ?…」


 と、言った…


 小さな声で、言った…


 すると、すぐに、


 「…目的?…」


 と、敏感にアムンゼンが、反応した…


 「…そうさ…」


 「…それは、この矢田さんの家にやって来ることですよ…それが、目的です…」


 「…ウソを言うんじゃ、ないさ…ホントのことを、言えば、いいさ…」


 と、私は、言いたかったが、言わんかった…


 どうせ、そんなことを、聞いても、このアムンゼンが、ホントのことを、言うわけが、ないからだ…


 私は、すかさず、


 「…リンか?…」


 と、一言言った…


 「…リン?…」


 「…そうさ…これから、リンが…台湾のチアガールのリンが、これから、お義父さんと、いっしょに、この家にやって来るのを、知って、来たんだろ?…」


 と、私は、言ってやった…


 アラブの至宝に言ってやった…


 が、


 アラブの至宝は、認めんかった…


 またも、しらを切った…


 「…そうですか? …それは、知りませんでした…」


 と、平然と、言った…


 私は、


 「…ウソを言うんじゃ、ないさ…」


 と、怒鳴りたかったが、怒鳴らんかった…


 なにしろ、この矢田トモコも、35歳…


 酸いも甘いも嚙み分けた大人だったからだ…


 だから、怒鳴らんかった…


 ただ、一言、


 「…そうか…」


 と、だけ、言った…


 私の細い目を、さらに、細めて、言った…


 いわば、圧をかけたのだ…


 が、


 しかしながら、アムンゼンの反応は、


 「…そうですよ…」


 と、あっけないものだった…


 「…そうか…」


 私は、繰り返した…


 わざと、繰り返した…


 すると、アムンゼンも、


 「…そうですよ…」


 と、繰り返した…


 繰り返して、私を見た…


 私を直視した…


 私をアムンゼンは、いつしか、睨みあっていた…


 バチバチと、激しく睨みあっていた(怒)…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。