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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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51/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 51

私は、一人、自宅で、悩んだ…


 悩み抜いた…


 考えれば、考えるほど、どうして、いいか、わからんかった…


 どういう顔をして、夫の葉尊と接すれば、いいか、わからんかったのだ…


 私は、悩んだ…

 

 悩み抜いた…


 一体、これほど、悩んだのは、いつ以来だろう?


 考えた…


 なぜなら、夫の葉尊のことを、考えたくないからだった…


 考えたくないから、つい、別のことを、考えた…


 つまり、夫の葉尊のことを、考えたくないから、無意識に逃げたのだ…


 そういうことだ…


 が、


 当然、逃げ切ることは、できない…


 いつまでも、逃げていることは、できない…


 だから、ほかのことを、考えるつもりでも、つい、元に戻った…


 夫の葉尊のことを、考えた…


 そして、そんなことを、まるで、メリーゴーランドのように、グルグルと、同じことを、考え続けた…


 まるで、メリーゴーランドが、いつまでも、同じところを、グルグルと回っているように、同じことを、いつまでも、考え続けていた…


 そして、考え続けていると、いつのまにか、つい、ウトウトと、してしまった…


 なにも、しないで、ただ、考え続けていたからだ…


 また、今日、空港に、お義父さんを迎えに行くことで、極度に、緊張していたせいも、あるかも、しれない…


 なにしろ、お義父さんの葉敬は、大物…


 台湾屈指の財界人だ…


 だから、緊張する…


 この平凡な矢田トモコは、緊張する…


 日本で、言えば、トヨタの会長に、会うようなものだからだ…


 だから、緊張する…


 本当なら、この矢田如きは、葉敬に会うことなど、できない…


 絶対できない…


 しかし、なぜか、この矢田は、葉敬の息子の葉尊に、気に入られ、葉尊と、結婚した…


 おまけに、なぜか、その結婚を、葉敬が、許した…


 これは、謎だった…


 この矢田が、いくら考えても、解けぬ謎だったのだ…


 しかも、


 しかも、だ…


 なぜか、この矢田は、葉敬にも、気に入られていた…


 これは、私の一方的な思い込みなどではなく、傍から、見ても、間違いなく、気に入られていた…


 これも、また、解けぬ謎だった…


 そして、いくら、葉敬に気に入られようと、私は、葉敬に会うのは、いつも、緊張していた…


 もちろん、今日も例外ではない…


 やはり、緊張した…


 そのせいも、あるだろう…


 私は、疲れていた…


 葉敬を迎えに、空港に、行き、帰って来た…


 それだけで、疲れ切っていた…


 いや、


 ここ数日、葉敬が、やって来るから、家の中の大掃除に、燃えていたから、それで、疲れ切っていたのも、ある…


 なにしろ、葉敬が、初めて、我が家にやって来るのだ…


 少しでも、いいところを見せねば、ならん…


 出来た嫁を演出せねば、ならん!…


 私は、そのために、燃えた…


 掃除に、燃えたのだ…


 それが、今日の葉敬との、再会を機に、燃え尽きてしまったというのは、ある…


 そして、さっき、明らかに、なった、ホントは、葉敬は、葉問が、好きだった…


 葉尊が、好きではなかった…


 その衝撃の事実を聞かされて、驚いた…


 驚いたのだ…


 そして、それもまた、私の悩みの種となった…


 なぜなら、ここだけの話、私は、夫の葉尊よりも、葉問の方が、気が合う…


 ずばり、葉問との方が、夫の葉尊よりも、話しやすいのだ…


 だから、夫の葉尊よりも、葉問の方が、好きなのか?


 と、問われれば、それもまた、微妙…


 実に、微妙だ(笑)…


 なぜなら、いかに、夫の葉尊よりも、葉問の方が、気が合うといっても、それが、イコール、好きとは、限らないからだ…


 これは、誰でも、同じだろう…


 わかりやすい話、私と同じ例で、言えば、夫よりも、夫の兄や、夫の弟の方が、話しやすいし、気も合う…


 だったら、今の夫とは、別れて、夫の兄や、夫の弟と、再婚すれば、いいのではないか?


 とでも、問われたら、違う気がする…


 それは、あくまで、気が合うだけ…


 話が合うだけだからだ…


 それと、男女の愛情は、違うと、思う…


 これは、男でも、同じ…


 同じだ…


 自分の妻よりも、妻の姉や、妻の妹の方が、自分と、気が合うし、話も、合う…


 だったら、今の妻と別れて、妻の姉や、妻の妹と再婚すれば、いいのでは?


 とでも、言われても、それは、ただ、気が合うだけ…


 話が合うだけで、結婚となると、また、違う気がする…


 なぜなら、結婚には、男女の愛情が、不可欠だからだ…


 ぶっちゃけ、いくら、気が合ったり、話が合ったりしても、それは、男女の愛情とは、また別のものだからだ…


 私は、そんなことを、考えた…


 そんなことを、考え続けた…


 そして、そんなことを、アレコレ、考え続けている間に、いつのまにか、つい、ウトウトしてしまった…


 ウトウトして、眠りについて、しまったのだ…



 そして、目覚めた…


 目覚めると、すっかり、あたりが、暗くなっていることに、気付いた…


 すでに、夜…


 が、


 家の中に、誰か、いることに、すぐに、気付いた…


 なぜなら、光が、漏れていたからだ…


 だから、誰か、いることが、わかった…


 この家に、誰か、私以外の人間が、いることが、わかったのだ…


 そして、当たり前だが、この家に、私以外の人間は、葉尊しか、いなかった…


 夫の葉尊しか、いなかったのだ…


 だから、夫が、帰って来たのか?


 と、思った…


 夫の葉尊が、会社から、帰って来たと、思ったのだ…


 そして、眠っている私を見て、起こすのは、可哀そうだと、思い、声をかけずにいたと、思ったのだ…


 だから、私は、眠い目をこすりながら、夫の葉尊の元へ、行くべく、歩き出した…


 歩き出したのだ…


 正直、怖かった…


 葉尊と会うのが、怖かったのだ…


 なにしろ、昼間、葉敬が、


 「…葉尊よりも、葉問が、好きだった…」


 と、衝撃の事実を聞いたばかりだ…


 だから、怖かった…


 怖かったのだ…


 正直、世の中には、知らない方が、良かったと、言うのがある…


 この事実も、間違いなく、その一つだった…


 知らない方が、良かった事実だった…


 その事実を知ったとき、幼い葉尊は、どう思っただろう?


 間違いなく、心に傷を負ったに違いない…


 正直、どこの家庭にも、ある話だ…


 兄弟姉妹が、何人か、いれば、親でも、好き嫌いが出る…


 当たり前だ…


 ただ、葉尊の場合は、親が、会社の経営者だった…


 それが、大きな違いだ…


 葉尊が、幼いときは、まだ、葉敬が率いる台北筆頭は、大きな会社では、なかったというが、それでも、父親が、自分を後継者にしないと、子供心にも、わかると、傷が、深いに違いない…


 大人になると、大抵の大人が、自分の子供のときのことを忘れてしまうが、稀に、ハッキリと、覚えているものも、いる…


 おそらく、葉尊も、その一人なのだろう…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 だから、葉尊が、大人になった今も、父親の葉敬とギクシャクしている…


 そういうことだろう…


 葉尊は、おそらく、子供時代に、葉敬から、受けた仕打ちが忘れられないのだ…


 だから、すでに、弟の葉問が、なくなり、葉敬の後継者は、葉尊ただ一人と、なった今でも、葉敬とうまくいかないのだろう…


 子供時代に受けた屈辱は、生涯忘れることが、できないのだろう…


 私は、夫の葉尊の気持ちを、そう見た…


 見たのだ…


 また、一方の葉敬…


 葉敬も、また、おそらく、どうしていいのか、わからないのかも、しれない…


 自分の後継者は、葉尊と、決まっているのだが、その葉尊と、うまくいかない…


 血が繋がった父子にも、かかわらず、うまくコミュニケーションが、取れない…


 そういうことだろう…


 私は、そんなことを、考えながら、葉尊のいる部屋に向かった…


 光を放った部屋に向かった…


 私が、葉尊のいると、思われる部屋に、入ると、葉尊が、一人で、酒を飲んでいた…


 葉尊が、いる部屋は、ダイニング…


 葉尊は、一人で、なにもしないで、酒を飲んでいた…


 テレビも、パソコンも、スマホも、せずに、ただ酒を飲んでいた…


 ウイスキーを、飲んでいた…


 あの琥珀色のグラスを、傾ける姿を見て、ウイスキーを飲んでいるのが、わかった…


 ただ、それが、ストレートで、飲んでいるのか?


 水で、割っているのかは、わからない…


 ただ、酒を飲んでいるのだけは、わかった…


 私は、驚いた…


 正直、驚いた…


 葉尊と、結婚して、半年ちょっと…


 葉尊と、いっしょに、このマンションで、暮らし出して、三か月あまり…


 だが、こんな葉尊の姿を見るのは、初めてだった…


 初めてだったのだ…


 もちろん、自宅で、酒を飲むのが、悪いと、言っているのではない…


 私といっしょに、この自宅で、葉尊と酒を飲んだこともある…


 まだ、いっしょに、暮らし出して、三か月ちょっと、だから、数えるほどだが、ある…


 しかしながら、今の葉尊は、傍から見ると、例えば、女に振られたとか…


 あるいは、会社で、嫌なことがあったとかで、家に帰って、一人で、やけ酒を飲んでいるように、見えた…


 もちろん、そう見えただけだ…


 昼間、葉敬が、葉尊を好きではないと、言ったことが、私の頭に、こびりついているから、そう見えただけかも、しれない…


 だから、ホントのところは、わからない…


 ただ、私には、そう見えた…


 そう、見えただけだ…


 そして、そんなことを、考えながら、葉尊の元に、行った…


 すると、近くに、私が、来たのが、葉尊にも、わかったのだろう…


 ウイスキーの入った琥珀色のグラスを見ていた葉尊が、顔を上げて、私を見た…


 見たのだ…


 それは、まるで、私を睨むような視線で、見たのだ…


 私を射すくめるような視線で、見たのだ…


 それに、気付いた私は、正直、ブルッた…


 思わず、足が、震え出しそうに、なるかと、思うくらい、ブルッた…


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