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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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46/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 46

…この女は許さん!…


 …断じて、許さん!…


 私は、誓った…


 私は、固く、心に誓ったのだ…


 すると、このリンも私の視線に気付いた様子だった…


 当然、このリンも、慌てて、この矢田の視線から、目をそらすと、思った…


 が、


 違った…


 違ったのだ…


このリン…


真正面から、この矢田の視線を受け止めた…


すぐに、睨み返した…


はっきり言えば、この矢田にガンを飛ばしたのだ…


これは、許せん!!


許せんかった!!


だから、当然、この矢田も、睨み返した…


このリンを睨み返した…


すると、当たり前だが、周囲も、すぐに、そのことに、気付いた…


この矢田とリンが、睨みあっていることに、気付いた…


…これは、マズい!…


私は、思った…


思ったのだ…


だが、


先に視線を外すのは、嫌だった…


このリンに負けたことに、なるからだ…


この矢田が、リンに負けたことになるからだ…


だから、自分から、先に、視線をそらすのは、嫌だった…


嫌だったのだ…


すると、だ…


またも、お義父さんが、


「…アレ? …どうして、リンさんは、お姉さんの顔を見ているの?…」


と、優しく、聞いた…


あくまで、ことを荒立てないように、聞いた…


すると、リンが、


「…いえ、お姉さんの顔になにか、ついていると、思って…」


と、言い訳した…


とっさに、言い訳したのだ…


それから、すぐに、


「…私の思い違いだったかも、しれません…」


と、付け加えた…


付け加えてから、この矢田から、視線を外した…


が、


外す瞬間に、一瞬だが、このリンが、笑った…


この矢田を見下すが、ごとく笑ったのだ…


これには、頭にきた…


文字通り、怒髪天が付くがごとく、頭に来た…


…この女、許せん!…


…断じて、許せん!…


私の脳裏に、怒りが、充満した…


怒りのマグマが、今すぐ、爆発する寸前だった…


が、


さすがに、この場で、マグマを爆発させるわけには、いかんかった…


いかんかったのだ…


だから、耐えた…


グッと耐えた…


と、同時に、考えた…


考えたのだ…


この女が、なぜ、この矢田と敵対するのか?


考えたのだ…


この矢田と敵対することで、この女に、なんのメリットがあるのか、考えたのだ…


普通は、ない…

 

メリットなど、あるはずもない…


むしろ、デメリットの方が、大きい…


なにしろ、私は、葉尊の妻…


そして、ここにいる、葉敬は、葉尊の実父…


その葉尊の実父の前で、私にケンカを売って、このリンによいことなど、決して、あるはずが、ないからだ…


私は、思った…


思ったのだ…


ということは、どうだ?


なにか、目的がある?


私に、わざと、ケンカを売る目的がある?


考えた…


考えたのだ…


それとも…


それとも、ただ、私が、気に入らないだけ…


この平凡な私が、葉尊の妻という、玉の輿に乗ったのが、気に入らないだけ…


そうとも、言える…


あるいは、ただ単に気に入らない…


単純に気に入らないだけ…


単純に虫が好かないだけ…


そうとも、言える…


が、


今現在の私の地位を抜きにすれば、それは、ありえない…


今現在、葉尊の妻という地位を抜きにすれば、それは、ありえない…


これには、自信がある…


根拠がない自信ではない…


きちんと、根拠がある自信がある…


なぜなら、この矢田トモコ…自慢ではないが、他人に嫌われたことは、一度もない…


まして、このリンのように、初対面の人間に嫌われたことなど、一度もない…


自分で、言うのも、なんだが、この矢田は、なぜか、他人に好かれた…


これは、なぜか?


正直、自分でも、よくわからない(苦笑)…


これは、同じく、いつも他人に嫌われる人間も、同じだろう…


なぜ、自分はいつも、他人に好かれないのか?


なぜ、他人に嫌われるのか?


本人に聞いても、わからないに違いない…


これは、頭の良し悪しは、あまり、関係がない…


他人のことは、わかっても、自分のこととなると、わからないのが、大半の人間だからだ…


だから、わからない…


私の場合は、しいて言えば、平凡だからかも、しれない…


平凡ゆえに、際立った個性がない…


個性が、ないから、目立たないから、かも、しれない…


出る杭は打たれるというが、これは、正しい…


ルックスでも、頭でも、家柄でも、なんでも、他人様よりも、ずば抜けて、優れていると、嫉妬の対象になる…


ずばり、妬みの対象になる…


要するに、悔しいのだ…


自分にないものを、他人が、持っているのが、悔しいのだ…


人間は、嫉妬の生き物…


誰でも、多かれ少なかれ、他人に嫉妬するものだ…


他人に憧れるものだからだ…


私も、大人になって、この事実に気付いたが、同時に、それは、子供の頃に、読んだマンガの設定が、実際には、ありえないと、気付いた…


なにが、ありえないのか?


それは、少女マンガによくある設定で、私のような平凡な女が、ある薬を飲むことによって、美人に変身できるという設定…


実に、昔から、少女マンガにありがちな設定だ(笑)…


しかし、もし現実に、そんな薬が、存在したとしても、現実には、対応ができない…


なにが、対応できないのか?


それは、自分が、置かれた環境が変わるから、対応できないのだ…


仮に私のような平凡な女が、佐々木希のような美人に変身したとする…


すると、どうだ?


これまでの、私の置かれた環境が変わる…


ずばり、激変する…


これまでは、平凡だった女が、佐々木希に変わったばかりに、周囲の男たちから、チヤホヤされまくる…


ずばり、周囲の男たちから、口説かれまくる…


すると、どうして、いいか、わからない…


どう対応して、いいか、わからない…


それまで、そんな経験は、一度もないからだ…


だから、どう対応して、いいか、わからない…


美人に生まれれば、幼いときから、周囲にチヤホヤされる…


大きくなれば、男たちに口説かれまくるだろう…


そして、そんな環境の中で、どう対応すれば、よいか、自分自身で、学んでいくものだからだ…


それが、マンガにあるように、突然、美人になれば、どう周囲に対応して、いいか、わからない…


だから、マンガのように、なることは、現実には、まず不可能とわかる…


これは、大人になって、わかったことだ…


もちろん、マンガは、マンガで、楽しい…


面白い…


だが、現実には、ありえない…


仮に、美人に生まれ変わる薬があったとしても、それを、飲んでも、現実には、対応ができない…


そういうことだ…


私は、そんなことを、思った…


私は、そんなことを、考えた…


そして、そんなことを、考えていると、


「…矢田ちゃん、どうしたの? みんな、もう歩き出しているよ…」


と、マリアが、言った…


私は、慌てて、みんなを見た…


たしかに、マリアが、今、言ったように、皆、歩き出している…


私が、つい、物思いにふけっている間に、皆、この矢田を残して、歩き出していた…


そして、この矢田が、ひとり、取り残されたことに、気付いた、お義父さんが、振り返って、


「…どうしました? …お姉さん?…」


と、声をかけた…


「…もう、行きますよ…」


私は、その言葉で、慌てて、歩き出した…


この矢田トモコ…


決して、他人に後れを取る女では、ないからだ…


他人に肩を並べるのではなく、他人を追い超す女だからだ…


だから、私は、慌てて、歩き出した…


他人に、後れを取っては、いかん…


他人に、後れを取るのは、恥…


あっては、ならん恥だからだ…


だから、慌てた…


実に、慌てた…


この矢田は、強気…


いつも、強気な女だ…


だから、負けることは、恥…


後れを取ることは、恥だからだ…


私が、慌てて、歩き出すと、なぜか、リンが、振り向いて、私を見た…


わざわざ、振り返って、私を見た…


そして、ニヤリと笑った…


笑ったのだ…


私は、それを、見た瞬間、まるで、瞬間湯沸かし器のように、頭にカッーと、血が上った…


冷静に、考えられなくなった…


私は、いつのまにか、歩くのでは、なく、駆け出していた…


リンに向かって、駆け出していた…


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