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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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25/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 25

 …もしや、図られた?…


 そんな思いが、この矢田の脳裏に、浮かんでは、消えた…


 事実、その思いが、裏付けられるものが、あった…


 バニラが、私の目の前で、スマホを取り出して、電話をかけだしたのだ…


 「…バニラ、どこに電話をかけているのさ…」


 「…殿下のところに、決まっているでしょ…」


 バニラが、言う…


 それを聞いて、私は、


 …やはり、図られた!…


 と、確信した…


 このバニラは、最初から、この矢田に、アムンゼンに詫びさせようとしたに違いなかった…


 その証拠に、今、アムンゼンに電話をかけている…


 普通ならば、そんなに簡単にアムンゼンに電話をできるわけがない…


 この矢田にとって、アムンゼンは、身近だが、バニラにとっては、違う…


 十分、距離を置いている…


 それは、アムンゼンが、偉いこともあるが、それ以上に、バニラは、アムンゼンと距離を置きたいのだ…


 なぜなら、アムンゼンは、マリアを好き…


 だから、まさかとは、思うが、将来、マリアを嫁にもらいたいとでも、言われやしないか、母親のバニラは、ヒヤヒヤしているのだ…


 ヒヤヒヤ=心配なのだ…


 アムンゼンは、小人症だから、外見は、3歳にしか見えないが、ホントは、30歳…


 マリアは3歳…


 しかしながら、20年も経てば、結婚できる…


 しかし、そのときは、マリアは、23歳だが、アムンゼンは50歳…


 しかも、アムンゼンの外見は、今のままだろう…


 3歳児のままだろう…


 それを、考えれば、複雑になる…


 まさかとは、思うが、アムンゼンが、マリアと結婚したいと言い出せば、簡単に断れないからだ…


 なにしろ、アムンゼンは、現サウジアラビアの国王の弟であり、前サウジアラビア国王の息子…


 まぎれもないサウジアラビアの実力者の一人だからだ…


 だから、無下にできない…


 簡単に断れないからだ…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…ハイ…わかりました…これから、伺います…」


 と、バニラが、答えていた…


 「…これから?…」


 思わず、私は、バニラの言葉を繰り返した…


 電話を切ったバニラは、その言葉を聞いて、


 「…これからよ…お姉さん…」


 と、私に向かって言った…


 私は、それを見て、ますます、


 …嵌められた…


 と、気付いた…


 このバニラに嵌められたと、気付いた…


 が、


 怒るわけには、いかんかった…


 なぜなら、この矢田が、アムンゼンと対立しても、いいことは、なにもない…


 いいことどころか、悪いことばかりだ…


 だから、早急に仲良くなるに、限る…


 元通りの仲に戻るに限る…


 しかし、何度も言うように、自分から、アムンゼンに頭を下げるのは、嫌だ…


 しかしながら、頭を下げるにしても、


 …お義父さんが、困るから…


 と、考えれば、この矢田の面目が立つ…


 ホントは、頭を下げたくはないのだが、お義父さんのために、仕方なく、頭を下げたと、誰でもない、自分自身を納得させることが、できるからだ…


 そのように、私は、考えた…


 考えたのだ…


 だから、


 「…だったら、さっさと行くさ…」


 と、言った…


 「…善は急げさ…」


 と、私は、続けた…


 それが、いかんかった…


 いかんかったのだ…


 「…善は急げって…お姉さん?…」


 バニラが、怪訝な表情で、私を見た…


 私は、一瞬焦ったが、


 「…謝るなら、早いに越したことはないと言いたいのさ…」

 

 と、言った…


 すると、だ…


 「…どうして、早いに越したことはないの?…」


 と、マリアが、聞いた…


 私は、マリアを見て、


 「…それは、早く行けば、相手も嬉しいからさ…」


 と、教えてやった…


 「…嬉しい? …どうして、嬉しいの?…」


 と、マリア。


 「…それは、マリアが、自分の身になってみれば、わかることさ…」


 「…自分の身に?…」


 「…そうさ…これから、誰かが、マリアに謝りに来ると、聞いて、ちっとも、来なければ、マリアも、イライラするだろう…」


 「…ウン…」


 「…だからさ…」


 私は、私の大きな胸を張って言った…


 「…だから、急がねば、ならんのさ…」

 

 私は、断言した…


 「…さあ、行くゾ…」


 私は、宣言した…


 すると、だ…


 「…ちょっと、お姉さん…その恰好で、いいの?…」


 と、バニラが、聞いた…


 私は、いつもの普段着…


 白いTシャツにヨレヨレのジーンズだからだ…


 だから、バニラが、心配したのだ…


 だが、それが、この矢田トモコの定番…


 定番のスタイルだった…


 だから、


 「…バニラ…よく、聞けば、いいさ…」


 と、言ってやった…


 「…なにを聞けば、いいの? …お姉さん?…」


 と、バニラ。


 「…私は、いつも、この恰好さ…このスタイルさ…この恰好が楽だし、気に入っているのさ…それが、例えば、アムンゼンに詫びるからと、言って、派手なドレスでも、来て、行けば、アムンゼンも仰天するさ…かえって、心がこもってないと、思うさ…」


 「…」


 「…だから、いつものスタイルが、一番なのさ…変に着飾ったりすれば、相手が、どう受け取るか、わからんさ…」


 私は、力を込めて、説明した…


 バニラを納得させるために、説明した…


 が、


 実は、内心は、違う…


 自分のスタイルを正当化するために、強弁したに過ぎない…


 なぜなら、私は、目の前のバニラのように、長身でも、美人でも、なんでもない…


 身長159㎝のどこにでもいる、35歳の女だからだ…


 だから、どんなに着飾ろうとも、目の前のバニラの足元にも、及ばない…


 そんな私が、着飾っても、仕方がない…


 そういうことだ…


 なにしろ、目の前のバニラは、女ながら、身長180㎝の長身…


 おまけに、とんでもない美人だ…


 彫りの深い白人の顔…


 まるで、彫刻で、刻んだかのように、作り上げた顔…


 しかも、しかも、だ…


 あのリンダが、おとなしめのイメージが、あるのに対して、このバニラは、派手なイメージがある…


 もっと、言えば、野性的なイメージがある…


 しかも、どこか、セクシーなところがある…


正直、この矢田も、同じ女ながら、ドキリとすることがある…


ハッキリ言って、この矢田と同じ人間だとは、思えない(苦笑)…


それほど、キレイだし、美しい…


 が、


 それは、見た目だけ…


 見た目だけだ…


 中身は、なにもない…


 ビックリするほど、なにもない(爆笑)…


 しかしながら、美しい…


 実に、美人だ…


 私と、同じ人間なのに、どうして、この矢田とこんなにも、違うのか?


 と、悩んだことがある…


 しかしながら、話し出すと、バカ丸出し(爆笑)…


 知性の知の字もない…


 だから、まあ、所詮は、神は二物を与えずというやつだ…


 所詮は、このバニラは、元ヤン…


 アメリカの貧民窟の元ヤン=ヤンキー上がりだ…


 だから、知性もなにもあるはずがない(笑)…


 ただ、その圧倒的な美貌を武器に、運よくモデルとして、成功しただけだ…


 私は、思った…


 私は、考えた…


 なぜ、運よくと言ったのか?


 これは、皮肉でも、なんでもない…


 ハッキリ言えば、街中を歩いたり、大きなスーパーにでも、行けば、ごく稀にではあるが、ビックリするような美人を見たことが、誰でも、あるものだ…


 しかしながら、その美人は、一般人…


 ハッキリ言えば、自分のその類まれなルックスを生かして、それを仕事にすることは、できない…


 それを仕事にする=モデルや女優や歌手になることは、できない…


 そういうことだ…


 だから、私は、このバニラを見て、思った…


 思ったのだ…


 神様に愛されていると思ったのだ…


 しかしながら、外見は、いいが、中身はダメ…


 中身は、バカ丸出し…


 それで、バランスを取っている…


 それを考えれば、神様も、考えてくれている…


 このバニラに、ルックスも知性も、両方は与えない…


 そう、思ったのだ…


 私が、そんな思いで、このバニラをジッと見ていると、


 「…なに、お姉さん…そんな細い目で、私をジッと見て…」


 と、バニラが、聞いてきた…


 当たり前だった…


 「…いや、オマエを見ていると、ホント、美人だなと、思ってな…」


 私は、言った…


 正直に、言った…


 「…やだ…なに、お姉さん…いきなり…」


 バニラが、顔を赤らめた…


 「…ホントさ…ウソじゃないさ…」


 私は、続けた…


 「…オマエは、美人さ…ビックリするほどの美人さ…」


 私が、言うと、


 「…ありがとう…お姉さん…」


 と、バニラが、顔を赤らめながら、私に礼を言った…


 同時に、気付いた…


 なんに気付いたか?


 なぜ、あのアムンゼンはリンに夢中なのか?


 考えたのだ…


 なぜなら、アムンゼンの周りには、このバニラという美女が、いる…


 リンダもいる…


 ハリウッドのセックス・シンボル、リンダ・ヘイワースも身近にいるのだ…


 しかしながら、アムンゼンは、リンに夢中…


 これは、一体なぜか?


 私は、考えた…


 もしかしたら、身近すぎるからか?


 考えた…


 どんな美人やイケメンでも、親しくなりすぎると、ダメだ…


 仲が良くなりすぎると、相手を異性として、見れなくなるからだ…


 どんな美人やイケメンでも、今さらとなる(笑)…


 そういうことかも、しれん…


 私は、今、私の細い目で、眼前のバニラを見ながら、そんなことを、考えた…


 考えたのだ…


 この矢田トモコ、35歳…


 まだまだ、甘い…


 修行が足りん…


 後に、そう思った…


 そう、気付いた…


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