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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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24/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 24

そして、私が、どう言おうか、悩んでいると、


 「…マリア…人間なら、誰でも、ちょっとしたことで、ケンカになることは、あることでしょ?…」


 と、マリアの母親のバニラが、助け船を出した…


 「…人間なら、誰でもある?…」


 「…そうよ…ケンカの原因っていうのは、大抵が、売り言葉に買い言葉…お姉さんが、アムンゼン殿下となにが、原因で、ケンカになったかは、知らないけれど、きっと些細なことよ…」


 「…些細なことって?…」


 「…取るに足りないような小さなことってこと…」


 「…」


 「…つまり、例えば、お姉さんとアムンゼン殿下が、いっしょにケーキを食べたら、お姉さんの方が、多く食べて、アムンゼン殿下が、怒ったとか、そんな話…」


 「…そんなことで、アムンゼンと、ケンカになったの? …矢田ちゃん?…」


 私は、心の中で、絶句した…


 心の中で、


 …そんなバカな…


 と、思ったが、一瞬、考えて、


 「…そうさ…」


 私は、答えた…


 その方が、都合が良いと思ったからだ(笑)…


 「…アイツが、生意気にも、私より、多くケーキを食べようとして…」


 私が、勇んで言うと、


 「…フーン…そんなことで…」


 と、マリアが、この矢田をバカにするように、言った…


 明らかに、この矢田を蔑視したのだ…


 3歳のガキが、35歳の矢田を蔑視したのだ…


 私は、正直、頭に来た…


 この矢田のプライドが、痛く、傷付いた…


 傷付いたのだ…


 が、


 しかし、だ…


 このバニラが、うまい例え話を出したことで、それに、乗っからない話もなかった(笑)…


 なにより、この矢田が、マリアに説明する必要がない…


 マリアは、子供ながら、頭がいい…


 が、


 所詮は、子供…


 3歳の子供に過ぎない…


 なぜかと、言えば、自分が、納得できないときは、ずっと、自分が、納得いくまで、根掘り葉掘り聞くからだ…


 これは、大人になれば、なかなか、できない(笑)…


 が、

 

 稀に、大人になっても、自分の納得の行くまで、根掘り葉掘り聞くものもいる(笑)…


 しかしながら、それは、少数派に過ぎない…


 普通は、誰もが、納得が行かなくても、それ以上は、根掘り葉掘りはしない…


 それは、なぜか?


 大抵が、それ以上、根掘り葉掘りすれば、相手が、嫌がることが、わかっているからだ…


 相手の顔色を見れば、わかるからだ…


 だから、しない…


 真逆に、それにも、構わず、根掘り葉掘りする人間は、よほど、鈍感か、自分勝手かの、どちらかだろう…


 他人が、明らかに、嫌がっているにもかかわらず、根掘り葉掘りすることは、普通は、できないからだ…


 それゆえ、今、マリアの母親のバニラが、機転を利かせて、うまく、ケーキの例え話をしたことが、嬉しかった…


 それで、マリアが、納得したからだ…


 だから、嬉しかった…


 さすが、マリアの母親だけあって、マリアにどう説明すれば、納得するのか、よくわかっている…


 そう、思った…


 そう、思ったのだ…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、今度は、マリアが、


 「…矢田ちゃん…」


 と、私に話しかけてきた…


 「…なんだ?…」


 「…アムンゼンと仲良くできないの?…」


 と、マリアが、ストレートに、聞いた…


 直球で、聞いた…


 だから、私は、


 「…アイツがいけないのさ…」


 と、言ってやった…


 「…アムンゼンが、いけないの?…どうして?…」


 「…それは、さっきも、言ったように、私より、多く、ケーキを食べたからさ…」


 「…そう、なんだ…」


 マリアが、悲しそうに、言う…


 「…どうした? …マリア?…」


 「…矢田ちゃんに、アムンゼンと仲良くしてやって、もらいたいの?…」


 「…どうしてだ?…」


 「…アムンゼンが、元気がないの?…」


 「…元気がない?…」


 「…それで、どうしてだか、アムンゼンに聞いてみたら、矢田ちゃんと、ケンカしたと、言って…それで…」


 「…それで、このマリアが、お姉さんとアムンゼン殿下に仲直りをしてもらいたいって、言って、今日、ここへ…」


 バニラが説明する…


 その説明で、今日、なぜ、いきなり、このバニラとマリアの母娘が、やって来たのが、わかった…


 わかったのだ…


 これは、渡りに船…


 実は、願ってもない、機会だった…


 正直、この矢田が、アムンゼンと争っても、メリットは、なにもない…


 デメリットばかりだ…


 しかしながら、この矢田の方から、アムンゼンに頭を下げるのは、嫌だった…


 死んでも、嫌だった…


 どちらが、悪いと、言っているわけではない…


 ただ、自分から、頭を下げるのは、嫌だったのだ…


 ホントは、この矢田と、アムンゼンでは、身分が違う…


 だから、この矢田と、アムンゼンを同列に考えるのは、おかしい…


 同列=平等ではないからだ…


 だから、おかしい…


 だから、ホントは、この矢田は、アムンゼンには、逆らっては、いかん…


 いかんのだ…


 自分でも、それが、わかっている…


 十分過ぎるほど、わかっている…


 だが、人間は、理屈より、感情を優先するものだ…


 この矢田も例外ではない…


 もちろん、この矢田が、アムンゼンと、仲良くなっていなければ、簡単に、アムンゼンに頭を下げただろう…


 なぜなら、身分が、違うからだ…


 しかしながら、仲良くなった今となっては、簡単に頭を下げるわけには、いかん…


 いかんのだ…


 私が、そう思っていると、


 「…矢田ちゃん…アムンゼンと、仲良くできないの?…」


 と、マリアが聞いた…


 だから、私は、


 「…アイツ次第さ…」


 と、答えた…


 「…アイツ次第?…」


 と、マリア。


 「…アムンゼンが、私に詫びれば、これまで通り仲良くしてやっても、いいさ…」


 「…矢田ちゃんに詫びれば?…」


 「…そうさ…」


 すると、バニラが、


 「…そんな…殿下に、お姉さんに頭を下げさせるなんて…」


 と、口を出した…


 当たり前だった…


 自分でも、それは、わかっていた…


 十分過ぎるほど、わかっていた…


 しかし…


 しかし、だ…


 繰り返すが、自分から、アムンゼンに頭を下げるのは、嫌だった…


 絶対、嫌だったのだ…


 だから、


 「…アイツが、頭を下げれば、これまで通り、仲良くしてやってもいいさ…でも、嫌なら、それまでさ…」


 私は、断言した…


 断言したのだ…


 が、


 私のその発言に、あろうことか、バニラが、怒った…


 文字通り、激怒した…


 「…ちょっと、お姉さん…いい加減にして!…」


 「…なんだと?…」


 私は、言いながら、やはり、このバニラは、私の敵かと、思った…


 この矢田の気持ちがわからん…


 やはり、このバニラは、私に立ち向かうために、この場にやって来たのか?


 あらためて、思った…


 思ったのだ…


 しかしながら、さにあらず…


 なんと、いきなり、このバニラが、


 「…お願いします…お姉さん…」


 と、私に頭を下げたのだ…


 文字通り、土下座せんばかりに、頭を下げたのだ…


 私が、驚いていると、


 「…お願いします…お姉さん…殿下と仲直りして下さい…」


 と、言った…


 私は、内心、呆気に取られながらも、


 「…どうしてだ? …バニラ…どうして、そこまでする?…」


 私は、バニラに聞いた…


 当たり前だった…


 このバニラは、いつも、この矢田を目の敵にする…


 だから、それを、考えれば、この態度は、あり得ないこと…


 実に、あり得ないことだったからだ…


 「…お姉さんが、殿下と仲直りしてくれなければ、葉敬が、困ります…」


 「…お義父さんが?…」


 「…ハイ…葉敬は、殿下の後押しで、サウジアラビアの事業も、軌道に乗り出したと、先日も、言ってました…それが、今、お姉さんが、殿下と、ケンカをしたとなると、最悪…」


 そう、言って、あろうことか、バニラが、涙ぐんだ…


 私は、それを、見て、絶句した…


 いや、


 間違った…


 それを、聞いて、絶句したのだ…


 なぜなら、葉敬は、この矢田にとって、大恩人…


 日本の取るに足りない、どこにでもある家庭出身の矢田と、台湾の大財閥の跡取り息子の葉尊の結婚を認めてくれた、大恩人だったからだ…


 だから、慌てて、


 「…お義父さんが、困るのか?…」


 と、バニラに聞いた…


 当たり前だった…


 「…いえ、すぐには、わかりません…でも、遠からず、その影響は、出ると、思います…」


 バニラが、泣きながら、言う…


 私は、それを聞いて、いてもたっても、いられんかった…


 「…バカ、早く、それを、言え!…」


 と、つい、バニラを怒鳴ってしまった…


 「…お義父さんは、この矢田の恩人さ…この矢田と葉尊の結婚を認めてくれた恩人さ…そのお義父さんが、私とアムンゼンが、ケンカしたことで、迷惑を被れば、困るさ…」


 私が、勇んで言うと、バニラが、頭を上げて、


 「…お姉さん…」


 と、目に涙を浮かべながら、この矢田を尊敬の目で、見た…


 「…バニラ…それが、わかれば、さっさと、アムンゼンのところへ、行くさ…謝りに行くさ…」


 私は、断言した…


 それから、


 「…バニラ、今、アムンゼンが、どこにいるか、わかるか?…」


 と、聞いた…


 「…たぶん、自宅だと、思います…」


 「…そうか?…」


 私は、言った…


 「…ならば、これから、言って、アムンゼンに詫びるとするさ…」


 「…これから?…」


 バニラが、怪訝な顔をする…


 「…どうした、その顔は?…」


 私は、聞いてやった…


 「…だって、お姉さん…殿下は、忙しい身です…これから、いきなり、行っても、会ってもらえるかどうか…」


 「…そうか…」


 当たり前だった…


 アムンゼンの身分を忘れていた…


 つい、この矢田と同じに考えてしまった…


 「…だったら、どうする?…」


 「…とりあえず、電話をして、これから、伺っても、いいか、殿下に聞いてみれば?…」


 「…そうか…」


 私は、言った…


 言いながら、思いがけない展開になったと、思った…


 まさか、バニラがやって来たことで、この矢田が、アムンゼンに詫びに行くとは、思いもしないことだったからだ…


 …もしや、図られた?…


 一瞬だが、私の脳裏に、そんな言葉が、浮かんだ…


 浮かんだのだ…


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