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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編  作者: トモサン


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10/84

35歳のシンデレラ アムンゼンの初恋編 10

正直、ありえん展開だった…


 このアムンゼンのことで、悩んでいるにも、かかわらず、その当人から、その悩みを聞いてやろうと、言われるとは?


 まさに、お笑いだった…


 だから、私は、遠慮した…


 「…いや、こればかりは、どうにも、ならんさ…」


 と、言ってやった…


 「…いかに、オマエでも、どうにか、なる話じゃないさ…」


 私は、言った…


 が、


 これが、いかんかった…


 いかんかったのだ(涙)…


 この言葉が、アムンゼンのプライドを傷付けた…


 アラブの至宝のプライドの傷を付けた…


 「…ボクの力でも、どうにも、ならないこと?…」


 「…そうさ…」


 「…よろしい…ならば、余計に、矢田さんの悩みを聞きたくなりました…サウジの王族として…アラブの至宝として、その矢田さんの悩みを解決しましょう…」


 アムンゼンが、断言する…


 これが、いかんかった…


 まさに、藪蛇…


 まさに、藪を突いて、蛇を出した…


 そういうことだった…


 そういうことだったのだ(涙)…


 「…さあ、矢田さん、こちらへ…」


 アムンゼンが、私の手を取って、強引に、私をどこかへ、連れて行こうとした…


 「…なんだ? …アムンゼン…私をどこへ連れて行く気だ? …まさか、地獄じゃ、ないだろうな?…」


 私は、うっかり、本音を漏らした…


 つい、うっかりと、本音を漏らして、しまった…


 「…なにが、地獄ですか? 矢田さん…ホントに、今朝、なにか、悪いものを、食べたんじゃ、ないでしょうね?…」


 「…食べて、ないさ…」


 私は、繰り返した…


 「…だったら、前夜に食べたのかも、しれません…」


 アムンゼンが、真顔で、返した…


 私は、それを聞いて、ふと、いいことを、思いついた…


 このまま、腹が痛いとか、頭が痛いとか、言って、自宅に戻れば、いいと、思ったのだ…


 そうすれば、アムンゼンの自宅に行かなくてすむ…


 もし、行ってしまえば、余計に、アムンゼンと、仲良くなってしまう…


 これまで以上に、親しくなってしまう…


 だから、腹が痛いとか、頭が痛いとか、言って、このまま、自宅に戻れば、いい…


 そう、思ったのだ…


 だから、すぐに、それを実践することにした…


 私は、突然、その場にしゃがみ込んだ…


 「…腹が痛いさ…」


 と、言いながら、しゃがみ込んだ…


 「…どうしました? …矢田さん?…」


 「…腹痛さ…いきなり、きてな…」


 私は、言った…


 実に、痛そうな表情を作って、言った…


 我ながら、名演技だった…


 アカデミー賞並みの、名演技だった…


 「…これでは、とても、朝食は、食べれんさ…家に戻って、ベッドに寝ているさ…」


 私は、苦しそうな表情で、言ってやった…


 すると、だ…


 思いがけないことが、起こった…


 「…そうですか…それは、大変です…オスマン…」


 と、アムンゼンが、連れの長身で、イケメンの甥を呼んだ…


 「…ハイ…わかりました…」


 オスマンが、スマホを取り出し、急いで、どこかに、連絡した…


 アラビア語か、なにかで、連絡した…


 当然、私には、なにを、言っているか、わからない…


 が、


 電話をした直後、いきなり、目の前に、金色のロールスロイスが、現れた…


 私は、仰天した…


 文字通り、仰天した…


 「…なにか、あったときのために、近くに、潜ませているんです…」


 アムンゼンが、言う…


 「…オスマン一人では、ボクの身を守れるか、心配です…ですから、他のボディーガードを常に近くに、待機させているんです…」


 アムンゼンが、説明する…


 そして、説明が、終わるやいなや、金色のロールスロイスから、慌てて、降りてきた、屈強なボディーガード数人が、私を取り囲んだ…


 「…矢田さんが、急病だ…さあ、早く、自宅に運んでくれ…」


 「…わかりました…殿下…」


 屈強なボディーガードの一人が言う…


 きっと、この男が、ボディーガードのリーダーなのかも、しれんかった…


 これは、大事になった…


 まずい…


 さすがに、まずい展開だ…


 私は、焦った…


 猛烈に焦った…


 が、


 さすがに、急に治ったとは、言えん…


 口が裂けても、言えん…


 だから、


 「…いや、オマエの自宅より、救急車の方が…」


 と、言いかけた…


 とっさに、口にした…


 その方が、アムンゼンの自宅に、行くことが、ないからだ…


 すると、だ…


 これも、またアムンゼンのプライドをいたく傷付けたようだった…


 「…なにを言うんですか? 矢田さん…ボクの自宅には、医者が、常駐しています…」


 と、アムンゼンが、言った…


 「…なんだと? 医者が、常駐?…ウソだろ?…」


 「…ウソでは、ありません…」


 アムンゼンが、答える…


 私の脳裏に、たしか、以前、一度だけ、訪れたことのある、アムンゼンの豪邸が、浮かんだ…


 美術館や、博物館か、なにかを、改装した豪邸だった…


 たしかに、あれほどの豪邸なら、医者が、常駐していても、おかしくはない…


 なにしろ、このアムンゼンは、金持ちだ…


 サウジの王族だ…


 だから、もしかしたら、あの豪邸に、手術室もあるかも、しれん…


 なにか、あったときに、あの豪邸で、手術をするかも、しれん…


 「…さあ、早く矢田さんを…」


 アムンゼンが、言うやいなや、私は、大勢の屈強なボディーガードにカラダを持ち上げられ、荷物を扱うように、楽々と、金色のロールスロイスに運ばれた…


 嫌もなにも、なかった…


 あっと、いう間だった…


 私は、どうして、いいか、わからんかった…


 わからんかったのだ(涙)…


 まさか、いまさら、腹が痛いのは、ウソだったとは、言えん…


 口が裂けても、言えん…


 だから、なすがまま…


 私の顔は、あまりの事態に、蒼白となった…


 血の気が、引いて、白くなった…


 私と、いっしょに、金色のロールスロイスに乗り込んだ、アムンゼンが、私の顔色を見て、


 「…矢田さん…顔が、白いです…」


 と、告げた…


 「…そんなに、痛いんですか?…」


 と、アムンゼンが、心配そうに、声をかける…


 さすがに、この状態で、仮病とは、言えんかった…


 いかに、私が、図々しくても、言えんかった…


 が、


 さすがに、それを、肯定することも、言えんかった…


 「…その通りさ…」


 と、言えんかった…


 だが、ウソをつき続けているのは、さすがに、心苦しい…


 だから、


 「…大丈夫さ…たいしたことじゃないさ…」


 と、言った…


 アムンゼンをこれ以上、心配させないためだ…


 「…いつものことさ…」


 「…いつものこと? ひょっとして、矢田さんは、カラダに持病を抱えているんですか?…」


 アムンゼンが、真顔で、聞く…


 私は、


 「…違うさ…そうじゃないさ…」


 と、否定したかったが、言わんかった…


 これ以上、なにか、言うと、話が、ドンドンとんでもない方向に、走ってしまうような気がしたからだ…


 だから、なにも、言わんかった…


 言わんかったのだ…


 「…そうですか…だったら、余計に、急がなければ、なりません…オスマン…電話を…」


 「…ハイ…わかりました…」


 私は、それを、聞いて、不安になった…


 「…どこに電話をかけているんだ?…」


 「…首相官邸です…」


 「…しゅ、首相官邸?…」


 私の声が、ひっくり返った…


 「…オマエ…どうして、そんな場所に?…」


 「…直接官邸に電話をかけて、そこから、警察に連絡した方が、早いでしょ?…」


 「…なにが、早いんだ?…」


 「…パトカーですよ…パトカー…」


 「…なぜ、パトカーなんだ?…」


 「…いくら、この金色のロールスロイスでも、街中を、早く走ることは、できません…パトカーに先導してもらうのが、一番です…」


 アムンゼンが、説明する…


 「…だったら、なんで、官邸なんだ? 警察に電話するのが、普通だろ?…」


 「…いかに、ボクでも、日本の警察を動かすことは、できません…官邸に電話をかけて、首相から、警察に電話してもらうのが、一番…」


 「…なんだと? …首相から?…」


 「…別に、首相でなくても、首相補佐官でも、なんでも、いいんです…首相の名前で、警察に連絡すれば、一刻も早く、パトカーが、やって来るでしょう…」


 アムンゼンの言葉が、最後まで、言い終わらない間に、


 ウー


 ウー


 と、サイレンを鳴らしながら、パトカーが、数台、やって来た…


 そして、一台のパトカーから、制服を着た警官二人が、ただちに、やって来た…


 オスマンが、


 「…自宅まで、先導をお願いします…」


 と、言うと、制服を着た警官二人が、敬礼をした


 「…ハッ!…」


 と、言って、最敬礼をして、頷いた…


 私は、それを、見て、驚いた…


 「…どうしたんだ? 一体?…」


 「…きっと、首相官邸から、警視総監に、連絡がいったんだと、思います…」


 アムンゼンが、説明する…


 「…警視総監だと?…」


 「…どんな組織も、上と交渉するのが、一番です…下の方が、人間が、真面目で、融通が利かない人間が、多い…」


 「…そうなのか?…」


 「…そうです…」


 アムンゼンが、したり顔で、言う…


 そして、まもなく、パトカーのサイレンが、なり、赤橙が、光った…


 パトカーが数台、列をなして、走り出した…


 それから、私たち3人、アムンゼン、オスマン、そして、この矢田トモコを乗せた金色のロールスロイスも、走り出した…


 正直、わけのわからん展開だった(涙)…


 この矢田が、つい、仮病を使ったばかりに、まさか、こんなことが?…


 考えもしない展開になった…


 まさに、悪夢…


 悪夢にほかならなかった…


 これで、もし、仮病がバレたら、目も当てられない…


 そのことを、考えると、思わず、カラダが、震えてきた…


 この矢田トモコの身長159㎝のカラダが、震えてきたのだ…


 すでに、どうして、いいか、わからんかった…


 わからんかったのだ(涙)…


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