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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第5章 白銀の章 氷の王国編 ー今、確かに目の前にあるものー
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はじまり -2

バチェル王家に歯向かう者達「反乱軍」。オレンジ髪の少女に連れられてそのアジトに訪れたダリア達は、反乱軍のリーダーとして紹介されたオルオから、バチェル王家の過去を聞く。












オルオ・トーカー、アイネ・リーダマン両名は、隣国ルーデシアからの攻撃に際し、自らの責務を放棄し、多くの国民を死に至らしめるきっかけを与えたとしてバチェル王の命で死罪が確定した。



その内容はすぐにバチェル国内を巡った。それに対するバチェル国民の反応は様々であった。


「戦争で名を挙げた聖騎士なんだろ?だったらこんな国に愛着が無くても当然だよな」


楽観する者


「あのお二人がそんなことをする訳ない!うちの家族は助けてもらった恩があるんだ!」


悲観する者


「だが、こうなってはもう……」


諦観する者




その全てのうごめきに答えを出すようにして、バチェル王城では二人の聖騎士に対する刑の執行が行われようとしていた。







「このような形でお前たちに会うことになるとはな」


バチェル王ヨルダン・ポートマンは、怒りに震えるオルオ、アイネ両名の前に姿を現した。


「こっちの台詞(セリフ)だ、バチェル王!」


アイネは普段の穏やかな表情とは打って変わって、血相を変えていた。その怒りの矛先は勿論、ヨルダンとサイザーに向けられたものだった。


「そう睨むな、若い騎士達」


ヨルダンは二人の顔をそう言ってまじまじと見つめた。オルオと目を合わせたヨルダンは、ニヤッと笑う。


「英雄気取りはこれだから困る」


その一言は、確かにオルオとアイネの琴線に触れた。


「貴方に何が分かる、ヨルダン殿……!」


その瞬間、オルオの目は確かに戦場にあった頃と同じ光を纏っていた。


「困るのだよ、君達のような戦争上がりの聖騎士達が国内に居るとね。どうも我々の箔が落ちてならない」


「それだけのために、国民を殺したというのか……!」


「殺したのは、ルーデシアだ。それに、()()()()()()のが、お前達二人だ。民に知らせる事実など、それだけで十分だ」


腐っている。


この国は、腐っている。





オルオは自分の力の無さと、圧倒的な巨悪に絶望していた。戦地で見た人間の醜さなどととは比べられないほどの巨悪と相対した。






「オルオ様ぁっ!」


その瞬間、アイネは自らを縛っていた鎖を解いた。彼女の体には禍々しい斑点が浮かび上がり、周囲の地面は崩れ落ち始めていた。


「アイネ、お前っ……!」


「貴方からは全てを貰ったのです。ここで死んでいい人ではありません」


アイネは素早く近くの兵に襲いかかると、彼らが防御の姿勢をとる前に一瞬で首元を抉った。


「お逃げ下さい、オルオ様」


その言葉をかけた彼女の顔は、自らの死を悟ったものだった。オルオはその覚悟を無下にすることなど出来ず、ただその場から離れることだけを考えた。


「何をしている、すぐにそいつを捕らえよ!」


サイザーの声に従って何人かの兵がオルオの行く手を阻んだが、アイネはそれらをも蹴散らした。その時、彼女の胸にあったエムブレムが音を立てて落ちたのだった。




「離れていても、私の心は貴方のそばにあります。どうか、生き延びてください」






それが、オルオの見たアイネの最後の姿となったのは、言うまでもなかった。




曇天が見下ろす中、オルオは人目もはばからずに大声で泣いた。アイネを思う強い気持ちが、彼の中に留まることを許さなかった。


「アイネ……アイネェェェッ!」






◇ ◇ ◇


ー 現在、反乱軍アジト ー


「僕とアイネは、この国の闇を見た。それはまだ、表面化していない事実と言うだけだ。そして僕達反乱軍のメンバーは、同じようにとは言わずともバチェルによって迫害を受けた過去がある」


オルオさんの言葉に反乱軍の人達は黙って頷いた。そうか、ここに居る人達はみんな、同じ思いをしたのだろう。


「アイネを失った僕は、牙を研いだ。背中を預けられる同士を見つけた。そして正に王国への反乱を起こそうとしていた時、予想外の事態が起きたんだ」


「ザバンの件ですか」


「そうだ。国を変えるために僕達はあらゆる情報を集めた。その過程でザバンで行われていた悪政が耳に入った。遠い異国の地でありながら、その国が変革されたという事実も」


オルオさんは俺の手を取った。


「君だ、ダリア。君があの国を変える()()()()となったんだ。だからこそ僕は思った、君こそがあの国の『革命の種』となったんだ」


その目は本気だった。本気で、国を変えようとする力がそこには眠っていた。


「オルオさん、一つだけ聞かせてください」


「……」


「あなたは革命が成功したとして、この国をどう導くつもりですか?」


「それは……」


オルオさんが顔を曇らせた時、奥から一人の人物が現れた。


「それは、『共和国』の成立。それが我々反乱軍の答えです、ダリア・ローレンス君」


その人物を、俺は見たことがある。レノバさんの宿で撮られた写真に写っていた子供の一人、それが成長した姿なのだとすぐに気がついた。



「私はバチェル王家第4王子、ナシェリー・ポートマン。反乱軍の意志を知り、同じく国を変えるためにここに居る」


「お、王子様ぁっ!?」


フィスタは声に出して明らかに動揺していた。無理もない。国の中枢とも言える人間が目の前にいるのだから。


「旅人のダリアです。貴方がこの国の王子……」


「はい、今はまだなんの力も無い若輩に過ぎませんが、いずれこの国の歴史に名を刻むつもりでいます」


ナシェリーと名乗った美しい青髪の青年は、堂々と言い放った。


「共和国の成立って……。そもそも共和国とは何ですか、ナシェリー様」


「ナシェリーで結構です、ダリア君。君と私はそう歳が変わらないのですから」


「いや、それは流石に……」




「まあ、じきに慣れるでしょう。それと質問についてですが、『共和国』は王の居ない国民による自治を指す言葉です」



「王の、居ない……?」






◇ ◇


ダリア達の居る世界では、王政の文化が初代五大英雄の時代から続いており、王の居ない国など存在していなかった。


どんな小国ですら一人の王を立て、その人物に付き従うことによって国内を治めていた。


その時代に「共和国」という新しい国の形態を取ろうとするバチェル第4王子のナシェリーの考えは正に異端という他なく、それに伴って反乱が成功した場合に想定される各国の動揺も既に分かりきっていたのである。





そしてダリア、オルオ、ナシェリー。3人の出会いからわずか3日後に、バチェル全土を巻き込んだ反乱は始まってしまうことになる。












作者のぜいろです!


ついに総合ポイントが400ptを突破しました!日頃から応援してくださっている皆様、大変ありがとうございます!これからも精進して参ります!


これを記念して明日、おまけ話②を投稿致しますので、よろしければご覧になってください!




よろしければ、いいね、ブクマ、評価、感想等お待ちしております!

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