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五大英雄と殺戮の少年  作者: ぜいろ
第4章 獣の王国と魔導王朝編 ー生きとし生けるものの価値ー
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十帝会議 ep.3 変わりゆく世界

十帝会議で話題に挙がったダリアの名前。それを聞いてハピナスは、彼の中に眠る古代悪魔「ラグドゥル・フォン・ソロキオット」の存在をほのめかす。












ダリア達の議題が挙げられ、ハピナスによって解決された後、いくつかの細かい議題を消化した十帝会議は終了を迎えた。


そして覇者達はそれぞれの帰路に着く。




ー 国際会議場、北通路 ー


「フェンネル殿、今回もお世話になりました」


「初めてにしては良くやった方だ。世界の風向きが怪しくなっている今、大変な役割だっただろう」


竜帝フェンネル・ドラグーンは、大役を務めきった炎帝レオ・クラウドを励まし、そのまま会議場を後にしようとしたが、そこで踏みとどまる。


「レオ、気を付けろよ」


「……?」


「今回の十帝会議、嫌な予感がした。恐らく、裏で動いている者がいる」


「裏で……?」


「なに、年寄りの戯言だと思って聞き流してくれて構わんよ。ただ、気になる事があるだけだ」


竜帝の勘は馬鹿にならない。それが十帝の共通認識である事はレオにも十分分かっていた。


「忠告として受け取っておきます」


「ああ、そうしてくれ」







ー 国際会議場、南通路 ー


「全く、一杯食わされた」


「年の功ってやつかしらね」


雷帝ウィリアム・バッバーザードの帰りを見送るように、水帝ハピナス・ラハンは会議場の外で駄弁っていた。


「だが彼等にとって、決して楽とは言えん道だぞ。罪が消えぬという事は何よりも重い」


ウィリアムはダリアのことを案じ、そうハピナスに伝えた。


「運命は乗り越えるためにあるもの。ここで彼らの障害を私が完全に取り払っても、何の成長にもならないわ」


「スパルタだな。あんたがそこまで肩入れするもの珍しい話だ」


「期待してるのよ。これからの世界を導いていくのは、きっと若く才能に溢れた子供達。私はその手助けをするためなら、なんだってするの」


「ほう、ならば俺の子を預かってみねぇか?何人か筋が良いのが居るんだが……」


「全然良いわよ。貴方みたいに粗暴じゃないと良いけど」


「安心しろ、根は真面目だ」


「女癖と酒癖が異常に悪い親の言う事は信用ならないけどね」


「俺より優秀さ、中身はな」


「はいはい」


雷帝と水帝はそうして、国家を跨いだ教育の話に熱を注いでいた。









ー 国際会議場 ー


「トルシェリン君、帰らないの?」


十帝が去った会議場に残る人影に向かって光帝ミツル・シノハラはそう言った。姿の主は風帝トルシェリン・アルファであった。


「ミツル……。少し、考え事をしていたんだ」


「そういうの好きだよね、君。んで、何か発見でもあった?」


「私だけでは分からないことの方が多い、というのが正直な話だ。歴史には精通しているつもりだったが、私の知らない事はまだあるようだ」


トルシェリンは椅子から立ち上がり、ミツルの隣を横切っていく。


「考え過ぎは体に毒だよ?」


「……」


トルシェリンはミツルの横で一瞬立ち止まったが、そのまま会議場を後にして行った。




「ほんとに無愛想なんだから」


ミツルはニヤリと笑い、トルシェリンを追うようにして会議場を出て行った。










ー 国際会議場、東通路 ー


「……」


「……」


消帝フィルフ・ドグマと裁帝マギアは、奇しくも同じ道を通って国際会議場から出た訳であるが、元から口数の多い訳ではない二人の間に当然会話など生まれるはずは無かった。


「マギアさんは、誰の推薦でここに?」


気まずい空気に耐えかねてか、フィルフが先に口を開くことになる。


二人は時を同じくして十帝に就任したため、同期という括りにはなるのだろうが、年齢も性別もバラバラの十帝達にとってそんなことは特に関係の無い話であった。


「……賢帝様。幼い頃から近くに置いてもらって、私に沢山の知識を付けてくれたわ」


マギアはフィルフの問い掛けに端的に答えた。


「へぇ、僕は剣の方の剣帝様からだね。本当は僕なるはずじゃ無かったんだけど……」


「……と言うと?」


「僕は、ある組織に属していて、そこの副団長なんだ。剣帝様は初め、うちの団長を推薦しようとしたんだけど、いかんせん縛られるのが嫌いな人でね。代わりに僕が推薦された」


「組織……。もしかして、『スメラギ』?」


「え、知ってるの?」


「知ってるも何も有名な組織でしょう。独立国家を作った革命軍の果て、っていう話は有名よ」


「あはは、そうか」


「そうなると団長は、『ネクター・ヘイムウェル』ね?」


「そうそう!あの人は自由人にも程があるから、団員はいつも手を焼かされててさ……」


マギアとフィルフはお互いの身の上話をして、それぞれの理解を深めていた。










ー 世界連邦本部、連邦長室 ー


「これが今回の議事録になります」


連邦長セイバの秘書、リッパーは達筆な字でしたためた紙をドサッと彼の机に置いた。それを見てセイバは硬直する。


「これも、仕事のうちか……」


「加盟国の王族達に迅速に知らせるべき公文書になりますので、訂正や補足等があれば今日中にお願いします」


リッパーはそれだけ言って自分のカップに優雅にコーヒーを注ぎ始めた。


「リッパー……」


「何でしょう?」


「お前、一応秘書だよな?」


「はい」


「手伝ってくれたりは……」


「……」


「しないよな」


そこまで聞いてリッパーはニコッと笑った。何とも皮肉めいたその笑顔に、セイバの顔は思い切り曇る。


「今回は特に異例の決定もありますから、大役ですよ」


リッパーはセイバの机にコーヒーのカップを置くと、そそくさと自分の机の方へと向かっていった。


既に壊れかけたセイバの心は、象に踏まれたガラス板のように無惨なものとなった。


「今日も、帰れそうにないな」


セイバは諦めて議事録の紙をめくる。一通りの話は耳に入っているが、それでもやはり目を引くのは大罪人『ダリア・ローレンス』に関する決定事項。




「……あの子のことだよな」


セイバはダリアについてある程度詳細な記述がなされたページに目を通す。


そこには、水の帝国サドムでセイバが出会ったダリアの情報が記されていた。黒髪にオッドアイ、アーバの街出身の17歳の少年。それだけ見ると、やはり普通に思えてならない。


「水帝様が言ってた運命の子ってやつは、『古代悪魔』の器のことだったか……」


セイバは今回の会議で話題に挙がった古代悪魔、ラグドゥル・フォン・ソロキオットについて考え始める。


今までその再来が成されてこなかった唯一の古代悪魔、ラグドゥル。それがこのタイミングで依代を見つけ、再び現れたことにはやはり何か意味があるのだろうか。





セイバは考えを巡らせてみるものの、自分の中だけで解決することは出来なかった。


「あの人なら、分かるかもしれないな」


彼は一人の人物を想起し、心の中で思い浮かべる。それは、かつて賢帝と呼ばれた男であった。












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