確信
しおり、修助に続き、有力候補の優奈の敗北。
図書室で、私は悩んでいた。
私は焦っていた・・・
「どうすればいいの?」
私自身が言ったところで、何も出来ない。
今まで現実から目を背けて本ばかり読んでいた私は、こんな時に何の役にも立ちはしない・・
なんで、私はこんなに惨めなのよ・・・
もう見たくないのよ・・・
こんなの・・・
その時図書室のドアが開く。
まさか・・と思って振りむくと・・・
ドアを開けたのは、山田だった。
山田は、私の視線に気づき、一瞬目をそらす。
気まずそうな感じで私の隣にやってきた
そして落ち着いた感じで、どこか重い口ぶりで山田は言った。
「彩夏、こうなってしまったのは俺のせいなんだ・・」
「どういう事?」
山田は、少し考えるが・・・
「あまり気持ちのいい話ではないけど、心の準備は出来てるか?」
私は即頷いた。
この状況を打開するには、聞くしかない。
山田は、俯き加減で話し始めた。
「この間、まあ3週間くらい前の事だけど、龍翔が裏庭のベンチで思いつめたような顔をしていたんだ」
「それで」
「俺は、そんな龍翔が気になって悩んでる理由を聞いてみた。そしたら・・」
ここで、少し間が空いた。
山田は、決意したように言った。
「俺は、しおりと対等なくらいの力が欲しいって言ったんだよ。」
私は、驚愕した。
でもそれなら納得がいく。
どうしてあんな風になってしまったのか・・・
「それでどうしたのよあなた」
「だから俺は、丁度一学年上に、裏の佐藤しおりの言われている先輩がそういう事に詳しいらしいって・・・」
すごい悲痛にゆがんだ顔で山田が言った。
ズボンを強く握り締め、辛そうな顔の山田。
私は、山田を励ました。
「あなたは、友達を助けたくてそうしたんでしょ?」
山田は、涙声で答えた。
「ああ。あんまりにも龍翔が悩んでいる姿に胸が痛んだんだ。だからつい・・」
「いいよ。あなたは悪くない。勿論龍翔も・・・悪いのはその先輩」
何をしたのか知らないけど、許せない。
人の人格から何からを変えてしまうなんて、極悪非道もいい所だわ。
力なく私にもたれかかる山田。
「頼む彩夏。もうこれ以上何もするな・・・」
「そんなの無理に決まってるでしょ?」
山田は、ボソッととんでもないことを口にした。
「龍翔は、薬物中毒だ。もう俺たちではどうしようもないんだよ・・」
私は、今までにないほどの寒気を感じた。
あまりにも信じられない言葉に、私は、もう一度聞いた。
「今なんていったの?」
山田は、もう一度言った。
「龍翔は、先輩の作ったあらゆる分野のアスリートの遺伝子を凝縮した薬を体内に何発も打ち込まれた薬物中毒者なんだよ・・・」
「何よそれ?」
山田は泣き崩れて言った。
「先輩が俺のところに来ていったんだ。俺の開発した人口エリート計画の最初の実験体として彼に薬を投与させてもらった。ご協力ありがとうって・・」
「それであなた何も言わなかったの?」
山田は、大声で否定した。
「そんなわけないだろ?でもお前は友の幸せを喜べないのかって言われて・・」
「それで何もいえなかったの?」
山田は、力なく頷いた。
私はやっとこの現象の意味と原因を理解することができた。
でも、まだ疑問があった。
「もしの話だけど、龍翔に勝負で勝ったらどうなるの?」