お兄さんの耳はどうして大きいの?
ミーヤが目を覚ますとそこは見慣れたビーツ様の小屋ではななかった。
背の低いビーツ家は、女のミーヤでも天井に頭がつきそうになるくらいだった。だけどここの天井は自分の身長の二倍ほどの高さだ。
「ここは…?」
ハッとして自分の体を見るといつも服を着ている。
「おや? 気がついたのか? あんた、あの泉で溺れそうになってた。服はさっき魔術で着せたから、大丈夫だ」
ーあんたですって…?
目の前の男に、自分の秘密を知られ、しかも裸まで見られた上に、あんたよばわりされて、ミーヤの顔が引きつってくる。
ーウッ…我慢よ、我慢…。
拳を振るわせてるミーヤ。
何が大丈夫なのかは分からないが一応お礼だけは言っておこう。
「た…助けてくださったのですか…あ、ありがとう…ございます」
そんなミーヤの心が読めたのか、男は直ぐにムッとした表情になった。
「いや…礼には及ばん」
男の鋭く尖った耳を見たミーヤは、目を大きく見開いた。
「大きな耳…」
こんな大きな耳を見た事はなかったから、ただ思った事を正直に言ってしまっただけだ。
ミーヤの一言で眉間にシワを寄せた男は、踵を返すと出口の方を指差した。
それは出ていけと言う意味。
「ご…ごめんなさい…僕は、この世界の人間じゃないから、知らなくって…つい貴方の嫌がる事を…助けていただいたのに…。すみません」
ミーヤの言葉を聞いた男は、大きく尖った耳をピクピクさせた。
エルフの耳は特別で、言霊に穢れー嘘偽りがないかを知る事が出来るのだ。
彼は、ミーヤの言葉に嘘偽りが無い事を知ると、お前…時渡りの巫女か…と呟く。
「そんなのはこの世界の人間が、勝手に決めた理であって、自分には関係ない。世話になった」
ミーヤは男にきっぱり言い切ると、ふらつく体に目を顰めながらも立ち上がると男の家を出て行った。