苦虫って、ザザ虫?
ザザ虫って、食べた事ありますか?
真っ黒い虫なんです。
栄養価は高いそうです。
愛馬のライラを口笛で呼ぶと、ライラは直ぐにやって来た。
ふらつきながらも、ライラに跨るとビーツの小屋へと戻って行った。
ビーツの家の前では、彼が石段に座り込んだ姿勢で眠っていた。
怒って飛び出した自分を責める事なく、ただ待っていてくれたんだと言う事に感激したミーヤは、彼の体を揺さぶり起こす。
三つ目の中の二つがこじ開けるように欠伸をしながら、ミーヤの方を見ている。
「ミーヤ…」
掠れたビート様の声。
「ゴメンなさい…ビーツ様…僕、ビーツ様が一緒なら、お城へ行きます」
じゃあ殿下と結婚を…
そう言って来たビートに、ミーヤはそれは有りませんときっぱり言い切った。
「じゃあなぜ…」
「ビーツ様にこれ以上ご迷惑を掛けたくないし、それに僕がまだ未成年だってライラに教えてもらったから♪」
「ミーヤ…」
「ですが、この男装は絶対にやめませんからね」
「うむ。それが良い。あのファティマ殿下の出方を見たいのじゃろ?」
「はい」
「そう言えば、この世界での結婚適齢期っていつなんですか?」
「十才だ」
「……それって、それが成人?」
「いや、成人は十二才で、仕事に就けるから成人と言われている」
茶目っ気たっぷりで言って来るビーツに、ミーヤはようやく微笑んだ。
ビーツは掌にチチマルの葉を乗せると、息でそれを吹き飛ばした。赤いチチマルの葉は、赤く光ると火の鳥となって飛んで行った。
「これで、明日にでも城へ行く事になるぞ。本当に良いのか?」
「構いません。男だと思わせておけば良いんですよ。あのバカ殿下にはね」
意地の悪い微笑みを浮かべるミーヤに、ビーツは呆れながらも城へ行く準備でもしましょうかと声をかけると、扉を開けてミーヤを先に通した。
「ビート様…女扱いは、しないで頂きたいんです…お願いします」
「そうか。ミーヤ、ワシは其方を時渡りの巫子として、お前を扱わねばならぬからな…」
「…………」
苦虫を100匹噛み潰したような顔をしたミーヤは、ムスッとした表情で家の中へと入って行った。




