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竜騎士  作者: Blood orange
23/29

ジュダル神のお告げ

ファティマ王の侍従長の二人シュリーザとザイールが出てきます。

年は見かけでしたら、三十路でしょうか…。

中身は二百才以上なんですが、ジュダル神の怒りに触れて、王家の呪いを解くための見届け人として生かされています。

殆どトバッチリな二人です。

今日も彼らは我が侭な王子に手を焼いています。

「嫌だ!」

「あなたしかいないでしょうが!」

「嫌だって言ったら、嫌だ!」

ったく、もう成人しているくせに…なんて子供みたいに頑固なんだか…。

クィンザがブツブツと文句を言っている。

ようやく自分の役目が終わり、仲間達が眠る死者の国へ旅立てると言うのに、目の前の王は、さっきから時渡りの(花嫁)には会いたくないとダダを捏ねているのだ。

「ファティマ様。これは王としての責務でございます。あなた様に魔力を授けられるのは、時渡りの花嫁しかないのですぞ。お覚悟を決めなさい」

「嫌だ〜!男と結婚するなんざ、絶対に嫌だ〜!!この世の終わりだ〜!!」

死んだ方がマシだと言いやがる。

このヒトは…根っからの女好きですからね…。

でも、古文書では時渡りの巫女は元来女性だとしか書かれていないはずじゃあ…。

まあ、昔のヒトにも間違いがあったんですよ。きっと…。

全くこの人は仮にも大国の王だと言うのに、玉座の上で膝を抱えて指で「の」の字を書いている。


「母様に言いつけてやる」

「王!あんたは何才だよ!!」

拳骨で頭を殴ってやれば、涙目でこっちを見てるし。

「ザイールが暴力震った」

「王!あなたには王家と国家を背負って行く宿命があるのです。例え男とでも魔力のためならば、目を瞑って結婚なさい!」

「嫌だ〜!!」

こんな王に私達は自分達の将来(天国行き)を委ねているのか…。

呆れながらもシュリーザとザイールは一応我が主と言う事で仕方なく、今日も王を説得中だ。

彼らが王を説得し始めてからすでに、五日目。

しまいには、王が「そんなに花嫁が欲しいのなら、お前達があの男と結婚すれば良いのだろうが」と訳の分からない事まで言い出す始末。

「それではあなたにかけられた呪いが解けないでしょうが! ま、王であるあなたの後に産まれて来る未来の王達も、あなたと同じように魔力がゼロになりますがね」

「ザイールの言う通りですぞ。魔力なしの王族が産まれるのをここで終わらせるか。それとも未来永劫、魔力のない王族として他の国からいつ侵略されるのかと言う脅威に怯えながら過ごすか、どちらかになります」

さすがに愚王でもそこまで言われれたら、たまったものじゃない。

苦虫を噛み潰して飲み込むように、ごくんと喉を鳴らしてる。

一応あんた、王だろうが。

もう少し上品にしなさい。

「そ、それは嫌だ…」

おや? ちゃんと学習してるじゃないですか。

ならどうすれば良いのかぐらい分ってますよね?

「「なら!ご結婚を!」」

シュリーザとザイールは笑顔で王に詰め寄る。

「でも、それとこれとは話が違うだろ!俺は女専門だ!男と結婚?冗談じゃねーよ。絶対嫌だ!こっちから却下だ!」

二人は王の世迷い言をなんとか躱しながらも、説得を続けていた。

とにかく王が時渡りの花嫁と結婚さえすれば、全てが上手く行くのだ。

王には悪いが、ここは人身御供になって頂こう。

「シュリーザ、ザイール!聞こえたぞ!何が人身御供だ。おれは餌でもなければ、生け贄でもないんだ」

あまりに言う事を聞かない王に「縛」と声をかけると何もない空間から水の糸が出て王の体を縛り上げた。

「ザイール!お前ら〜!!王である俺になんて事をするんだ!! それでも侍従か!!?」

「「ええ、一応。王こそ忘れてないですよね? 私達は歴代王家の侍従長ですから」」

「……」

「こう見えても約五百年は生きてますからね」

「ええ、本当に」

約五百才だと言う割には、亡くなった自分の父王よりも若く見える侍従長二人。

亡き父からも、この二人の言う事は我の言葉と同じだと思って良く聞けと言われていた。

王の言葉など聞いていないシュリーザとザイールは他の侍従達に婚姻の儀式の用意をするようにと言葉をかけた。

「あ、そうでした。花嫁が城に入ったら、すぐに式を挙げますから、花嫁には登城される際に、必ず試着室で花嫁衣装に着替えて頂きましょう。それでももし、王が何か反抗的な態度でもなされば、こちらをお使いなさい」

他の侍従達に縛の紙を渡すと、二人は神殿の方へと向かって行った。



「全くあのオバカな王は何を言ってるんでしょうかね」

「全くだ。時渡りの巫女の気が城内に入っているが、あれはどうみても女性の気だ。またあのロクデモナイ口説き文句とかでも使って、思い切り振られたんじゃないのか?」

シュリーザとザイール達にはミーヤが女である事は既にバレていた。

だが、顔を知らないので、一体今回の時渡りの巫女がどのような女性なのかはまだ知らない。

「ザイール、御主はどう思う?」

「ふん。御主だって分っているだろうが。本物だ。何と言っても従えている共達の気が違う。まさにジュダル神のお告げの通りだな」

彼らが知っている時渡りの巫女の条件は、他の者達が言っているのとは少し違う。

ビーツやファティマ王達が知っている時渡りの巫女の条件は、ジュダル神の教えの中の一文に記されてる。

『我の教えを誑りし時、人の世が乱れる。神の光を前に愚王倒れ、地上に闇広がる。鬣のない獅子生まれる時、救いの光が始祖と現る。全ての種族の次なる長達を従え、黒髪黒目の巫女に鬣のない獅子が頭を垂れる』

ただこのジュダル神の教えには続きがあって、『時渡りの巫女姫から祝福を受ける者に世界を統べる魔力与えられし』とある。

つまり、時渡りの巫女と結婚をすれば、それが誰であっても世界を滅ぼすような巨大な魔力が与えられると言うわけだ。

始祖と現れるとあるが…すでに始祖の竜は随分昔に人間に寄って乱獲され、滅亡した。乱獲したのは…そう。言わずとも知れた男…かつてシュリーザとザイールが仕えていた王ーマナティー王、その人だ。


シュリーザとザイールの悩みは今日も尽きない。




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