変態の放し飼いはやめましょう。前編
明けましておめでとうございます〜!!
改稿していたら、長くなって来たので、この部分の話は二つに切っちゃいますね。
はぁー。
桃も食い損なったし、天馬達は城下町に入る事は出来ないと告げると、早々と城の方へと飛んで行っちゃうし。
どうせ飛んで行くのなら、巫子と言われているらしい自分も乗せて行けば良いのにさ。
あのケチが。
鬣全部毟り取ってやるぜよ。
拳握りしめ鼻息荒くフーフー言っている。
そんな変態丸出しのミーヤを放し飼いにして、ブラウと今後の事で話し込んでいるビーツ。
天馬を捕まえて、ケチとか禿げろとか言えるのは巫子くらいだろう。
なんだって、あの天馬達は高飛車なんだろう。
そりゃあ、神様のお使いかもしれないけどさ。
なのに、人の事を男だと頭っから信じているのは、なんだろうね。
ミーヤはブツブツと忌々しそうに聞き取る事が出来ないくらいに小さな声で呟いている。
カリカリ
これは、ミーヤが爪を噛んでる音。
何か不満がある時や、イライラしている時、不安な時は必ず親指の爪を噛んでいる。
たまに噛み過ぎて、深爪する事もある。
今回もまたそうだ。
「イタッ!また、深爪になった…」
ビーツ様から苦笑されても、まだ他の爪を噛み出した。
「そこまで、噛みたいか? なら、歯固めを作ってやるぞ」
それを聞いたミーヤは、ニンマリと微笑む。
「ビーツ様、本当に作って下さるんですか?それでしたら、ディレクとパルトの抱き人形とか。それだったら、頭から引き千切ってやりますがね。あ!!それよりも、やはり私の天使様であるブラウ様の…」
抱き人形が欲しいと顔を紅潮させたミーヤは、鼻息荒くハアハアさせながら、手で空中を抱くようにジェスチャーをする。
ゴツン!
ミーヤの頭にビーツの鉄拳が落ちた。
「酷い!!ビーツ様!!僕が巫子だと言っていたのはビーツ様でしょう!その巫子を大切にしないとね」
純粋無垢の子羊のような目で、手を組み合わせるミーヤを見てビーツは、赤くなった拳に息を吹きかけると盛大な溜息をついた。
余りの痛さに涙目になったミーヤに、ジャンガは溜息を付きながらも痛い子を見るような視線を送る。
何にも知らないブラウは、そんな三人の光景を見て「なんて微笑ましいんだろう」いたく感動していたそうな。
でも、あのお色気ムンムンのイケメン二人が、この子憎たらしい天馬(ディレク&バルト)達だったなんて…。
ミーヤの頭の中では、BLの想像ばかりをしていた。
コホン!
そんな邪なミーヤの思考を読んだのか、ディレクが物凄い殺気を放ちながら飛び去っていたのは、つい先刻のことだ。
何でも、天馬は人々の邪気に敏感で、すぐに邪気酔いしてしまうとか…。
「ミーヤ殿には、酔わないんですか?」
ほんわかした天使の表情でブラウが、まだ頭を踞って頭を摩っているミーヤの顔を覗き込む。
「あー大丈夫だよ。ブラウ様。なんてったって、この人は、邪気のかたま…グフッ!!」
「何言ってる。この駄犬!」
ジャンガが言い終わらないうちに、ミーヤの肘鉄が図体のデカイ彼の股間にモロ当たった。
本当ならば、鳩尾に当てる筈だったが、いかせん人よりも大きな体を持っているジャンガの鳩尾に当てようものなら、何度もジャンプしないと無理である。
踞るジャンガを尻目に、これでもかと足蹴にしているミーヤ。
グロテスクな桃から大歓迎?を受けたミーヤ達は、跳ね橋を潜り抜けるとそのまま城下町へと入って行った。
日本の時代劇みたいに城下町は、人で溢れていた。
ただ違うのは、彼らが着ている服が洋風の物で、髪の色が金茶色や赤茶色、少しくすんだ緑色だと言う事だけだ。
顔も、東洋人のようにすっきり?さっぱり?
とした凹凸が出てないものではなくて、目デカ!鼻高!口デカ!というように、小さな顔に対して個々のパーツが、主張し過ぎている。つまり、デカ過ぎるのだ。
この城下町に入ってからは、ミーヤはすっぽりと大きなフード付きのマントを着ていた。
それは、ビーツから再三に渡り、フードを深くかぶるようにと言われていたからだ。
勿論この季節、外はカンカン日照りで暑い。
誰だって、こんな暑い日に我慢大会じゃないのに、分厚いマントを着たいわけない。
ビーツに暑いからイヤだと講義するも、三枚のブラウとティレク&パルトの掌サイズの肖像画をミーヤに散らつかせた。
「さっき、魔法で描いたんだが、ワシの言う事が聞けんのなら、仕方無いのぉ~」
掌に乗せた肖像画を魔法で消そうと指を動かし始めるビーツは、チラリとミーヤの方に眼をやる。
「…った」
「ん?」
「分かった。着ます。着りゃあ良いんでしょ!」
こうなったら、やけっぱちである。
と言う事で、この暑い中に分厚いフード付きのマントを着ているミーヤである。
勿論、ミーヤの手にはツンデレイケメンのディレクと肉体派イケメンのバルト、そしてほんわか綿飴のような蕩ける星の王子様の掌サイズの肖像画がある。
「グフ。グフフフフ」
「………」
目立たないようにしたかったが、これ以上でない程に、目立っている。
その不気味な笑いさえ止めてくれれば、そこまで目立たなかったのに。
歩く度に奇妙な笑いを浮かべている声を聞いた子供達は、顔を引き攣らせ泣き出す。
女達は、自分達の体の中を見られている物だと勘違いを起こして、この暑い最中に分厚いフードを被った人間を見て自分達の体を抱き締めたり、慌てて家の中に駆け込んだりする者が出た。
歩く度に視界の端の方から、自分の事を怪しむ人々の声が聞こえて来る。
「この暑いのに…。あんな恰好されたら、こっちが暑く感じる」
「やだ…なにあの格好」
「あの不気味な笑い声…もしかして、あれは私達を売りさばこうとしてるカイサルーンの奴隷商人なのかもしれないよ」
「え…!! 大変だわ!! 早く子供達は家の中に隠さなきゃ!!連れて行かれちゃうわよ」
(ビーツ様。あの変態のタダ漏れ妄想を止めなければ、我々が危ないです!!)
(分かっとる!! じゃが、今下手にミーヤに声をかければ、あの変態のことだ。自らフードを取り去って『何?どうしたの?』などと言って来るに違いない!! ジャンガ…ここはとにかくこの街を出るまで、このまま大人しくさせるしか無い)
(そ、それじゃあ…我々にこの針の筵みたいな状況にいろと言う事ですか!!)
目でビシバシと会話をしているビーツとジャンガ。
ヒソヒソと聞こえる声は、変態笑いを出して道行く人達を恐怖に怯えさせている何て言う事は、ミーヤには分かっていないらしい。
歩きながらグフグフと聞こえる笑い声は、一緒に歩いているビーツ達にとっても不気味としか思えない。
許されるのなら、コイツとは関わりがないと大声で言いたいのをひたすら我慢しているビーツとジャンガ。
ブラウは、キラキラとした王子様スマイルをそこいら中に振りまいている。
黒髪に黒目と言うのは、王族の証であり、大いなる魔力を持つ者だけが許される事らしい。
それでも、風に煽られてフードが脱げそうな時のために、髪の色を変える髪飾りをブラウから受け取る。
ミーヤは長い髪を編み込みにすると、三つ編みが解けないように髪飾りを付けた。
真っ黒だった髪が、海のような青い色に染まって行く。
「ビーツ様。これで何処から見ても巫子様とバレることはありませんよ」
ブラウの言葉に些か不安はあったが、確かに髪の色さえ変えれば、ミーヤは何処かの国の娘にしか見えない。
多少心配は残るが、ビーツはミーヤの目をじっと見つめながら子供に言い聞かせるようにゆっくりと何度も言葉を繰り返す。
「いいですかミーヤ? あなたはこの国の事を何にも知らないんです。お菓子を貰ったからと言って、ホイホイと知らない人について行かないで下さいよ。あとー」
「分かったわよ。言葉は分かってんの。私は別に耳が聞こえない訳じゃないのよ。ただ、聞きたくない言葉(お小言)は聞こえないだけなの」
言葉は通じていると言うのに、何故か大きい声で言って来るビーツにミーヤは、プイと顔を背けると早く城へ行くわよと勇ましく歩き出した。
「ミーヤ。そっちに行くとさっき潜った門への道になるぞ。こっちだ」
ビーツに言われ、罰が悪そうに顔を紅葉させると、ジャンガの足を思いっきり踏みつけた。
「イデー!! 俺何にも言ってない!」
「あんたの顔が言いたそうにしてたから、踏んだだけよ」
ミーヤの言葉に、ブラウは顔を引き攣らせる。
「早くとっとと終わらせて、ここから出る!」
ミーヤの勇ましい声にブラウの声がかき消された。
「____なのに」
「え?何か言ったの?ブラウ?」
「いいえ。ミーヤ様の願いが叶えば良いなと思っただけですよ」
「そうね」
ブラウの言葉に、ミーヤはにっこり微笑んだ。
ミーヤの服の中では、モゾモゾと動き出す竜の雛。
「あら、起きちゃった?」
竜を懐から外に出そうとするとブラウが顔を真っ青にした。
「そ、それは?!」
「ああ、昨日拾ったんだ」
「拾ったって…まさか、親竜から奪って来たんじゃ…」
「そんな事するワケ、ナイでしょうが!」
怒ったようにムキになって来るミーヤに、ブラウとビーツが溜息をついた。
((やっぱり))
そんな二人の溜息を飛ばすかのように、それまで黙っていたジャンガがビーツ達の方を伺い見た。そして節くれ立った指を高々とあげると天を指差した。
「竜の卵、落ちた。 ミーヤ拾う」
ジャンガ…言葉足りなさすぎ…!!
考えるフリをしながらも、苦笑するミーヤに冷たい視線を送るビーツ。
「ミーヤ…お前と言うヤツは、この迷いの森の守護者だけでなく竜まで拾って来たとは…」
竜をマジマジと見ていたビーツは、三つ目の目を開けて驚いていた。
「ビーツ様の目が、三つとも開いているなんて!!初めてみました!!」
驚きと興奮で嬉しそうなミーヤとは、反対に可愛い子羊ちゃん(ブラウ)は背中に悪寒が走った。
どうやら、ドグーラであるジャンガもブラウと同じように悪寒が走ったらしく、毛深い体を摩っている。
この迷いの森の守護者と呼ばれているのだが、一応彼はお坊さんの袈裟のような感じの服を着ている。
毛モジャモジャの雪男か、キングコングみたいに何も着ていなかったら、目のやりどころに困るからね…。
一応、私も男ではなくって生物学上女なんだし〜。
それにしても、温かそうだわね。
こんなに温かければ、寒くないんじゃないのか?
それともその毛皮を剥ぎ取って、僕が着れば温かいのかも…。
黒いミーヤの思考を読んだかのように、ブルリと震えるジャンガ。
見た目温かそうなのに、あんた(ジャンガ)も寒いのか?
「ミーヤ。目 コワイ」
コホンとビーツの咳払いがするとミーヤは、ジャンガの毛皮から手を放した。
「ミーヤ。悪い事は言わん。その卵を元あったところに返して来なさい」
「何で?」
「竜の子が孵化すれば、親竜を呼ぶじゃろうが」
「あ…そっか」
自分の卵が人間に攫われたと親竜が知れば、その国は一瞬で灰になってしまうぞ。
ギラリと光るビーツの目に、ミーヤはしょんぼりと頭を垂れた。
この主人公ってば、変態になって来ました。




