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竜騎士  作者: Blood orange
13/29

空から落ちるのは… 加筆

急な山道を天馬達の背に乗って前後左右に揺られながら、ゆっくりと降りて行く。

ふと天を仰ぎ見たブラウの姿に、ミーヤの妄想癖がムクムクと湧いて来る。


ああ!!あれって天を仰ぎ見る孤独の天使の絵!!


彼に竪琴でも持たせれば、素敵だよ…。

遠い目をしながらブラウの姿を見て顔が崩れそうなくらいにニヘラニヘラしているミーヤを見て、ビーツが溜息をついたのは言うまでもない。


「今夜は、この洞穴で暖を取ることにしましょう」


ブラウの言葉にミーヤもビーツも頷いた。

ビーツから肩を叩かれて一言注告されている。

完全に不貞腐れたミーヤは、少し出て来ると一言残すとディレクを置いて森の中へと入って行ってしまった。

急いで止めに行ったブラウは、ビーツに何を言ったんですかと怒り始める。


もう私達は迷いの森の目の前に来ているのですから、歩き回るにしても注意しない事には、タルフィーにやられてしまいますよと言うブラウの言葉に、ビーツは今更ながらではあるが、ミーヤの姿を探した。

天馬達は久方ぶりに人間の姿に変化すると、手足を大きく伸ばしている。


「ディラン、バルト! ミーヤを見なかったか?」


「ああ、あの変態男ならあなたの悪口を言いながら、そこの林の中に入って行ったが、どうしたんだ?」


欠伸をしながら興味無さげに視線だけビーツに投げるディランとバルト。

余程、ミーヤの事を毛嫌いしているようだ。

まあ分からんでもないが…。

だが、ミーヤが時渡りの巫子と言う事で、渋々ディレクもその背にミーヤを乗せているのだからな…。

存在な扱いだな…

彼らの姿はミーヤの好みである。

まずディラン。

彼は白銀に光る月光を一身に集めたような長い髪は、ゆるくウェーブが掛かっている。

紫水晶の色をした瞳。何も化粧はしていないと言っていたが、匂い立つ色香と言うのはこう言う物なのだろう。

先程、天馬から人に変化したばかりで、何も身に付けていないと言うのが、いかにもミーヤに取っては喉から手も足も出るほど彼らの姿を留めておきたいと思うだろうな…。


そして、バルトは天馬の時はディランとは対照的な色の青毛の馬だ。

彼の鬣は真っ赤な炎、人間に変化すればどうなるのだろうかと思っていたが、少しきつめの漆黒の双眸に燃えるような深紅の髪をしている。頬には黒いラインが古代文様のように入っている。

ディレクと並んで立てば、それこそミーヤが騒ぎ出す程喜ぶだろうな…


「ディラン…お主、ミーヤが今ここにいたなら、絶対に抱きつかれていただろうな」


「ビーツ殿。ご冗談はそのぽっちゃりの体だけにして下さいよ」


さも嫌そうな顔でビーツを見ているディランにビーツは高笑いをしている。


「それに、あの変態男は、私よりもバルトの方が好みだと思いますけど…なあ…バルト?」


いきなりディランに話をふられて、バルトは癒そうに眉を思い切りしかめた。


「まあ、どっちもミーヤに気に入られそうだな。だがな肝心のミーヤが何処にも見当たらんのだが…」


魔術で炎を出したバルトは、拾って来たパイルコーンと言う木の実を火の中に投げ入れた。

パイルコーンとは、ナマでは食べれないが焼くと焼き芋のようにほんのりとした甘みが口の中に広がる。食料が乏しくなる寒い時期にはとても重宝する貴重な食料の一つである。

夏よりも冬に収穫されるこのパイルコーンは、天馬達に取ってとても魔力を蓄えるための貴重な食料でもある。


「ビーツ様。ミーヤ殿は見つかりましたか?」


「あ…まだ見つからないのだよ。すまんねブラウ…」


ブラウが天を仰ぎ見ると、眉根を寄せた。

んん?雲の流れが変わったか…。




その頃、ミーヤは完全に道に迷っていた。

あの無神経な天馬に、言葉で責められて自分の怒りを治めるためにここまで歩いて来たのだが…。


「全くあの天馬は、小姑かよ!それとも私の母親か? 馬から生まれた馬太郎…ははは…馬鹿馬鹿しい」


ディランから、巫子と聞いていたから、もっとマシな人かと思っていましたが、何処をどう見ても変態にしか見えないじゃないですか。全く、ジュダイ神も変わった趣味をお持ちだ。

こんな物をこの世界に送り届けて来るとは…

あの馬は、そう言って呆れたように溜息を吐いて来た。

私だって…来たくてこの世界に来た訳じゃない!

望まれていないなら、私があの寒イボ王に会わなくても、良いって事よね。

大体、私が必要だからとか何とか抜かして、会いに来いなんて一体何様なのよ!

そりゃ…王様だって分かっているけど、あの男とクリソツな顔で愛を語られるこっちの身にもなってよね!

超頭に来るんだから!

思わずドカッと足でそこら辺の樹木に蹴りを入れた。


 

 ふと気が付くと、今自分が何処にいるのか何処に向かっているのかさえ分からない。

サーッと血が落ちるのが分かる。

見渡す限り同じ樹木がそこいらに生い茂っている。

一応目印を付けるために、ポケットに入れていた赤いビブの実で樹木に矢印を書くと、ミーヤはまた歩き出した。

だが、ミーヤはまさかその樹木が長い枝を伸ばし、赤いビブの実で書いた矢印を削り落としていたなんて知らなかった。


「あれ? ここってどこよ?」


こんな事をもう何時間も続けている。

じっと樹木を見ていたミーヤは、ナイフを取り出した。


「いっその事、削ってやろうかしら…」


パシンとミーヤのナイフが樹木の枝に寄って払われた。


「やっぱり…あんたたちが、私を迷わせてんじゃん! 木のくせに!人様を迷わせるんじゃねーよ! 大人しく私に削られて鉛筆になりやがれ! いいや、鉛筆じゃなくって、爪楊枝の方が良いかもしれない」


ミーヤの言葉に森中の樹木が一斉に目を開けると、ミーヤに突進して来る。

う、うわっ!!

何だよこれ!

白雪姫よりも、酷いじゃんか!!


恐ろしい樹木に追いかけられる事、数十分。

流石に、大きな樹木達は根っこを引き摺りながら走れる訳もなく、その場にへたり込んで行く。


「ふん!木のくせに人様に楯突こうなんて、百万年早いわ! わはははははははー!いて!」


まるで悪役のような捨て台詞を残して、その場から立ち去ろうとしていたミーヤの頭上目掛けて、水色の大きな卵が落ちて来た。

失神したミーヤの近くに卵が寄り添うにように、ゴロゴロと転がって行くとミーヤの服の中へと入って行った。


地表から水が湧き出て来ると天に向かって雨が注がれて行く。

この異世界の雨期がようやく始まった。










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