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今世と前世と罪と罰  作者: 月迎 百
第10章 川上健司
243/258

3 自分の中の

どうぞよろしくお願いします。

 後もう一年ほどで朋佳が泉学院を卒業する頃。

 大学は本人の希望で泉学院の短大、大学へは進学せず、他の大学に進学して教師になることを考えてくれるようになっていた。

 後から気がついたが、俺は彼女を無意識に誘導していたかもしれない。

 川上家としても教師であれば、家族に妻にしたい女性と紹介しやすくなる。


 そんな時、篠原が再び俺の前に現れた。

 彼女は昔は、俺と付き合っていた時は強がっていたことを知った。

 そして、天堂を選び、俺の前から去った篠原は、再び、俺に執着するかのように見えた。

 相手にせず、突き放そうとした時、朋佳や、高校の時からの友人である横川や都や加藤のおかげで、篠原の本当の気持ちを知ることができた。

 俺は今世で朋佳を愛することにより、俺に執着したり、精神を病んでいくような姿を見せた女性の気持ちも……、少しわかるようになった。

 

 確かに今の俺は……、朋佳に去られたら、壊れるだろう。

 彼女を繋ぎ止めようと、彼女を閉じ込めるということすらしてしまうかもしれない。

 そうなったら、篠原を苦しめていた天堂と同じじゃないか。

 同じ思いが俺自身の中にあることにぞっとした。


 そして、朋佳は高校3年生になり、大学受験のための勉強、学院の勉強に追われていたが、高校最後のクラブ活動やクラスの活動に活き活き取り組み過ごしている。

 朋佳は中学の時は落ち着いていておとなしい生徒と見られていた。たぶん、その見た目も影響していたんだと思う。

 黙っていれば美少女。寄ってくる悪意をかわすために、わざと冷たく装っているかのような。だから、何を考えているかわからないと評した教師もいた。

 本当は素直で裏表なく、喜怒哀楽がはっきりしている。正義感も強い方だ。

 朋佳と知り合い、彼女の本質を慕う者が集まってくる。年齢性別関係なく。

 前世で……、俺はそんな妹の姿を見ずに、閉じ込めて、孤立させ、壊した。

 罪滅ぼしの気持ちなのだろうか、今世、彼女が友人達と楽しそうに何かに取り組んでいるのを見ることが楽しみだし、誇りに思う。


 あと半年。朋佳が卒業すれば、晴れて、俺達は恋人と公言できるようになる。もう少し時が立てば、これから先、ずっと一緒にいると結婚という形で誓い合うこともできる。


 文化祭準備でクラスのリーダーのひとりとして、頑張っている朋佳を俺は眩しく見ていた。

 文化祭1日目、朋佳のクラスの『泉神社』はなかなか評判が良く、話題になっていると聞いた。

 まあ、ホテル王の娘の都がバックについているんだ。成功しないわけないだろう。


 都……、都とは小学校から、加藤とは中学から一緒だった。

 篠原と横川は高校から。

 都は子どもの時から少し変わっていて自分が『女性』ということに納得がいっていない……と俺には感じられた。

 加藤は都のことを、女でも男でもあるようで、そのどっちでもないって感じかなと言っていた。

 都的には加藤の言ってることの方がしっくりきたようだ。

 自分は男女、そのどちらでもない存在になれると。

 なので恋愛のことはよくわからないと言いながら、人の気持ちには敏感なので、人の感情や気持ちを救う仕事に就きたいと言って、医者になった。精神科の医者だ。

 ……自分の中にある怒りについても知りたいと話していたことがある。

 自分は一応社会的には女性のカテゴリーの中に入れられている人間であるが、女性の気持ちも男性の気持ちもわかる。そのような状況で、生きていてイライラすることがある。

 でも、見ていて、傷ついていたり、割を食っているのは女性が多い、というのが都の持論だ。


『だから、私はそういう女性の味方でいたい』


 篠原が俺を振って、天堂の元へ行った時、苦しそうに都はそう言った。


『篠原も苦しんでいる。

 だから、友達のチャンネルを切ることは……できない。

 私も篠原のしたことはひどいと思うよ。でも、それだけで切ってしまうことはできない』


 俺は『それでいいよ』と返事した記憶がある。


『川上は……、本当に雅を愛してたの?』


 そう聞き返されて、俺はその時は答えられなかった。

読んで下さり、ありがとうございます。

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