12 金魚葉
どうぞよろしくお願いします。
育ててる木……。
「あ、そうだね!」
私は立ち上がり、アキとリビングに戻りベランダに出た。
サンダル二足あるからね。
「わっ! けっこう大きいね」
「うん、でもここではこれ以上困るから、ちょっと大きくならないように切ってる」
「あ、この葉っぱだ。トモのアイコンの!」
「うん、柚子の金魚葉」
「本当に切れ込みが自然に入っているんだ!
なんか、かわいいね」
「でしょ?」
アキがリビングの窓の方を見て「川上先生も見たそう。代わってくるね」と戻って行き、川上先生が来た。
「柚子の木か。種から育てたとか」
「はい、でもせっかく育ってくれてるのに、ここじゃこれ以上大きくできなくて。
大きく育てたくて植えたのにな……」
「植えかえればいいよ。
卒業したら……、うちの庭に植えればいい」
確かに川上先生の家なら庭広そう。
番犬3頭いるんだっけ?
川上先生が金魚葉に触れた。
「朋佳の金魚……」
「金魚葉ね。赤い服の金魚じゃない」
「ああ、今の朋佳は観賞用じゃないからな」
む? なんかイラっとした。
前世で私……。
「何、怒っている?」
「怒っていません!」
私はリビングに戻ろうとして腕を掴まれて止められた。
「あっちのは桜か? 木の肌の感じが桜っぽい」
「ああ、そうです。それも種から育って」
私はベランダの端っこの桜の木の方へ掴まれたまま移動する。
もう夕方だ。リビングのカーテンが閉まっている窓の方だから、さらに暗く感じる。
川上先生がつかんでいる腕の部分だけが温かい。
急に抱き寄せられて軽くキスされた。
私は突然のことに目が点になる。
こんなところで!
油断も隙もないっていうか、私が油断してたってこと!?
慌てて出入り口にしているリビングの窓の方を見たけど、レースのカーテン越しに人影はない、な。
「ちゃんとそこは見てるよ」と川上先生が笑う。
寒っ!!
「戻ろう、寒い!」
私は慌ててリビングの中に入る。
「アキちゃん、泊っていけば?」
思いもよらない言葉がリビングで展開していて。
何故か、母がアキに泊っていったらと勧めている!?
「え、いいんですか!?」とアキも乗り気で……。
え、相原くん、ひとりで帰るんでいいんか?
結局、アキは泊まることになり、川上先生と都さんと相原くんは帰ることになる。
母がアキの家に電話を掛けに廊下に出た。
「おい、変なことはするなよ」
川上先生が少し焦ったようにアキに言って。
アキが「変なことって? トモを窓の死角に連れて行ってキスしちゃうとか!?」と言った。
「……見られてたじゃん!?
何が『ちゃんと見てる』だ」
私は呟いてしまい、川上先生は動揺した。
「……すまん。隠れてたのか!? 麻岡!?」
読んで下さり、ありがとうございます。




