6 過去に戻りたい?
どうぞよろしくお願いします。
「そうね。
で、雅はその後、川上を振って、天堂先生……、先生がいっぱいで話しずらいな。
天堂に乗りかえて、妊娠して結婚した。
それは知ってるね?」
「はい、それで天堂さんについてアメリカへ」
「その後のこと、どれくらい知ってる?」
「……男の子が生まれて。元気にしてるって。
でも、さっき、トモちゃんに日本に帰ってきているって聞いて。
全然、そんなこと知らなくて」
「うん……。
今の雅、ちょっと気になることがあってね。
アメリカでどんな風に過ごしていたか、ちょっと調べたの。
雅、モラハラされてたかもしれない」
「モラハラ……ですか?」
アキとマユミが露骨に顔を顰めた。
「そう、雅自身はどう感じていたかわからないけど。
アメリカでは天堂に嘘をつかれて、周囲との関りを制限されてたみたい。
アメリカでしょ?
相談できる身内も友人もいないし、受け入れるしかなくて、おかしいと気づかずに従っていたみたいね。
で、日本に帰ってきて……、自分が天堂に束縛されて従わされていたことが異常だと気づいてきているみたい。
彼女、私達とは高校の終わりからなんとなく疎遠になってる。
私と加藤にはたまに連絡があったんだけど、川上を振って天堂を選んで、後悔しているとか言えないわよね。
だから、私達にもそういうことは隠していた」
「雅姉ちゃんは、幸せで元気じゃなかった?」
「そうね。周囲にいた人に聞いた限りでは、孤立していて、天堂しか頼れる人がいない状況だったみたいよ」
「そんな……、俺、てっきり……」
「便りのないのは元気な証拠って言葉もあるくらいだからな」と加藤さんが言った。
「トモちゃん! 1月3日、一緒に連れてってくんない!?」
ソウヤくんが真剣な表情で私に言った。
「うん……、いいけど。でも、雅さんはいないよ?」
都さんが笑う。
「雅はね、その日、私達と会う予定なの」
私は驚いて都さんを見た。
「川上と横川、先日会いに行って、これは朋佳ちゃんも一緒だったよね。
その時、川上とよりを戻したいっていうような言動があったそう。
『助けて』とは言えないから、自分が望んで元に戻りたいってとこかな。
最初は……、アメリカでのことを知らなかったから、ふざけんな! 無理でしょ! って私達は思ってた。
でも、雅が今、自分で今の状態から逃げ出そうとしているのは正常なことなんだと気づいたから。
とりあえず、実家に助けを求める手伝いくらいはできると思っている。
で、問題は、天堂がどう出るか。そして匠海くんをどうするのか……ってこと」
紗栄先生が言った。
「匠海くん、たぶんアメリカで引きこもりのような生活が長かったんでしょう。
発達が全体的に遅れてると言えるわ。
それもあって、天堂は、若宮さんにシッターを頼んできたのよね」
「トモちゃんに?」
ソウヤくんが私を見るので、私は頷いた。
「うん、日本語も英語も、もっと小さな子みたいな話し方をするよ。
ルールというかマナーというか、わかってないことも多いし。
でも知らないだけ。教えればわかるし、外に出たら周囲をよく見て、マナーを察して守ろうとしていたし」
紗栄先生が続けてフォローするように言ってくれた。
「うん、環境が整えば大丈夫だと思うけど。
雅には連れて出る気があるのか、わからない。
私と川上には結婚前の状態に戻りたいっていう感じで。
川上と恋人のままだったら?
大学を卒業して、就職して、仕事をして、そろそろ結婚なんて話が出る頃よね、なんて話してきたし。
匠海くんをどう考えているのか……」
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