1 疲れている
どうぞよろしくお願いします。
第9章がスタートしました。
朋佳視点です。
私は紗栄先生と加藤さんの車を見送りながら手を振った。
今日はあのふたりが一緒に来てくれて、本当に良かった。
正直、1月3日、行きたくない気持ちが大きくなってる。けれど、匠海くんのこともあるし、もう約束していることだしね。
また来て欲しいと言われたら……。
うちに匠海くんを預かるとか、天堂家の伯母に預けてもらって私が天堂家の本家(?)の方に行くとかなら、考えられるかな……。
最後、バイト代を手渡され、手を握られた時、手を引き抜きたくなった。我慢してしまった。
匠海くんもいたし、紗栄先生や加藤さんもいたしね。
でも、気持ち悪かった。
家に戻り、母に今日会ったことを簡単に伝えた。
「えっ?
昼食を朋佳と横川先生で作ったの?
天堂さんの分も?」
「うん、天堂さん、匠海くん、私、横川先生、加藤さんの分だね」
「それは……、シッター? 家政婦みたいね。
横川先生来て下さってて、良かったわね」
「うん、匠海くんの相手しながら昼食作りとか無理だったと思う」
「その……、お酒の話。姉に伝えておくわ」
「うん、奥さん、あちこちに行かされてたみたいで、大変そうだった。
で、その話からかなちゃんの家のこと思い出して。
お酒を受け取りに行った時、他のお酒もいくつかくれて。これ、お父さんにもらってきちゃった」
「あら、お礼を言うべきかしら?
でも、内緒なのよね」
「うん、内緒にして欲しいって。お金もちゃんと払ったし、うちのお願いではなかったんだから……いいと思う」
「そうね。1月3日は大丈夫?」
「うーん約束してたから行くけど、はるみ伯母さんに聞いてみてくれない?
伯母さんの所で匠海くん預かれたりしない?
それなら、伯母さんの所に匠海くんに会いに行くんだけど」
「それも伝えてみるわ」
「うん、お願いします」
「お疲れ様。
先に風呂に入っちゃいなさい。疲れた顔してるわよ」
「うん」
私は自分の部屋に入って、ため息をついた。
lineを見る。
川上先生、今日はなんか私立の学校の会が午後にあるって言ってた。午前中は泉学院で中学入試の話もあったみたいだし。
ああ、会いたいな。
疲れているからか、余計に、なんだか、先生のことを思い出す。
lineに『今、無事に家に帰りました』と打った。
部屋着に着替えているとスマホが震えた。line電話だ。
「はい」
『疲れたか? どうだった?』と川上先生の声。
私は身体の力が抜けていくのを感じた。
「紗栄先生と加藤さんのおかげでなんとか。
雅さんのお買い物って、天堂先生の教授会で使う日本酒が見つかんないとかで大変そうだった。
それで、かなちゃんの家のこと思い出して。
聞いたら、なんか幻の日本酒とかで、それを紗栄先生と加藤さんと取りに行ったの。
いろいろあった……」
川上先生がふふっと笑う息遣いが聞こえた。
気持ちがふわっとした。目をつぶって気配を感じる。ああ、そばに行きたい……。
どうぞよろしくお願いします。




