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No Name's Trust  作者: 大道福丸
国を滅ぼす毒
98/100

閃光

「てやあぁぁぁっ!!」

 ツムゾルムは風連凰の頭上から飛び蹴りを仕掛けた……が。

「ふん」


ドゴッ!!


「ちっ!」

 あっさりと避けられ、地面に穴を開けただけに終わった。

「君ほどの戦士ならわかっているだろ?このフルメヴァーラと風連凰には、君の実力では決して勝てないと」

「やってみないとわからんやろ!!」


バババババババババババババッ!!


 ツムゾルムは後退しながら両手に装備したマシンガンとショットガンを乱射!しかし……。

「ならば改めて力の差を見せつけてやろう!防風輪!!」


ブオォォォォォォォォォォォォッ!!


 風連凰の前方で盾のように風が渦巻き、放たれた弾丸は全て吹き飛ばされてしまう。

「くそ!なら、これはどうや!!」


ボォン!


 へこたれることなくツムゾルムは今度は右腕に装備された砲口を突き出し、そこから手のひら大の球体を発射した!

「爆弾か?そんなもの……」

 難なく避けられると判断した桃色の鳳凰は悠々と回避運動に移ろうとした。

 その刹那、フルメヴァーラが長年の軍人生活で積み重ねたデータベースからもう一つの可能性が提示される。

「いや!これは」

「光れ!」


カッ!!


「うっ!?」

 球体の正体は閃光弾であった。風連凰の眼前で弾け、強烈な光を放ち、ディスプレイを真っ白に染め上げ、反射的に身体を縮こませる。

(もらった!)


ボンッ!!バッ!!


 即座に背後に回り込んだツムゾルムは脚部から電磁ネットを投下!鳥を捕獲しようと……。

「風連戟!!」


ザンッ!!


「な!?」

 網で捕獲を試みたが、予想を上回るスピードで態勢を立て直した風連凰が振り返り様に武器を召喚し、一太刀で斬り伏せてしまった。

(発動前に目眩ましやと気づかれたか!なんて忌々しい奴や!!でも、まだワイのターンは終わっておらへんで!!)

 フルメヴァーラが歴戦の勇士なら、ケント・ドキもまた百戦錬磨。すぐに気持ちを切り替えて、左腕の武器を発射する。

「喰らえ!!」


ボォン!!


「無駄だ!!」

 風連凰はまた反射的に向かって来る弾丸を斬り落とした……斬ってしまった。


ベチャッ!!


「――な!!?」

 発射されたのはトリモチ弾!斬ったことにより広がり、鳳凰の全身にまとわりつき、その動きを阻害する。

「ちいっ!なんと小賢しい!!」

「ワイみたいな奴は小賢しくてなんぼやからな!ましてやあんさんみたいな強い奴相手にするのに……正面から真面目にやるわけないやろ!!」


ボォン!


 ツムゾルムは身動き取れない風連凰にマシンガンの砲身の下に装備されていたグレネード弾を射出した。


ドゴオォォォォォォォォォン!!


 震え、焦げる大気!爆炎が鳳凰を包み、熱風が公園内を駆け巡った!

「やったか!?」

「何やってんの!?」

 爆音に続いて響き渡った怒声の方を向くと、ユリマキ将軍が地面に這いつくばりながら、鬼気迫る表情でこちらを睨んでいた。

「あっ!完全に女将軍様のこと忘れとったわ!熱かったやろ、悪いことしたわ~」

「ワタシのことなんてどうでもいいわよ!奴が……ワタシの教え子がその程度でやられるわけないでしょうが!!」

「その通りだ!!」

「!!?」

 爆風を吹き飛ばし、風連凰が再び姿を現す!まとわりついていたはずのトリモチは見る影もなくなっており、桃色の装甲にも傷一つついていなかった

「ちっ!完全に決まったと思ったのに、無傷かいな!!」

「トリモチも爆炎も全て我が風の前では無意味!!貴様のジャンク品では、風連凰に傷一つつけられん!!」

 桃色の翼を羽ばたかせ、風連凰は一瞬でツムゾルムと距離を詰めた。

「速ッ!?」

「ふん!!」


ザンッ!!


「くっ!?」

 戟の一閃によってマシンガンが破壊!さらにそのまま本体に……。

「はあっ!!」

「当たるか!!」


ブゥン!!


 繰り出された突きをツムゾルムはバーニアを全開噴射し、急上昇することに躱ひた。

「せっかく飛べるもん同士、決着は空で着けようや」

「風連凰に空中戦を挑もうとは……愚かにも程がある!!」

 黄色のマシンを追って、桃色も空へ!勢いそのままに下から再び突き上げる!


ガリッ!!


「くっ!?」

 トレードマークの黄色い装甲を抉り取られたがツムゾルムはかろうじて突きを回避!

「ようやってくれたなぁッ!!」

 入れ替わるように風連凰の下方に潜り込み、自らの破片を浴びながら右腕の砲口を天に突き出す!


ボォン!!


 閃光弾発射!けれど……。

「バカの一つ覚えが!!」


ヒュッ!カッ!!


 風連凰は軽く頭を傾げるだけで躱し、ターゲットを間抜けにも通り過ぎた閃光弾は、暫く天を昇った後に炸裂した。端から見ると、花火か何かとしか思えない、ただの賑やかしだ。

「くっ!?」

「最初に言っただろ!貴様じゃわたしには勝てないと!!」


ザンッ!!


 マシンガンに続いて、ショットガンも破壊!さらに……。

「この!!」

「遅い!!」


ザンッ!!


 トリモチを発射しようとした左腕の砲口も、何もさせずに斬り落とす。

「なら、もう一度!!」

「しつこい!!」


ザンッ!!


 お次は閃光弾を発射した右腕の砲!こうなると当然……。

「ちっ!そんならぁ!!」

「させるか!!」


ガギィッ!ガギィッ!!


 脚部の電磁ネット発射機も突きで小気味良く壊されてしまう。

「ほんなら!これでどうや!!」

 ツムゾルムは腰の後ろにマウントしていた手榴弾のようなものを投げつけた!

「何をやろうと……!」

 また今までと同様、一太刀で斬り落とそうと戟を振り抜こうとした瞬間、フルメヴァーラの脳に今までの一連の攻防の記憶が濁流のように流れ込んだ。

(手を変え、品を変え攻撃してきたのだからこれも何か特殊な……斬っていいものなのだろうか?)

 ケントによって、いつの間にか刷り込まれた疑念が鳳凰の動きを止めた。

 その一瞬の空白の時間に、手榴弾はその力を爆発させた。


ボッ!!バババババババババババッ!!


「――なッ!?」

 手榴弾が破裂すると、中から大量の針が勢い良く飛び出してくる!

「くっ!!」

 風連凰は慌てて風を起こすが……僅かに遅かった。


ザシュ!ザシュ!!


「――ッ!?」

 ほとんどの針は風によって吹き飛ばされたが、何本かは桃色の装甲に見事に命中し、突き刺さった……ほんの表面に。

(これは……痛くも痒くもない!ただの嫌がらせか?いや、この男がそんな無駄なことを……)

「それ、ただの針やないで」

「!!?」

「刺さるとピースプレイヤーが……ちょっとだけおかしくなるんや」


ビーッ!!


「な!!?」

 耳元で鳴り響く警告音!目の前のディスプレイにはところ狭しと“Error”の文字が並ぶ。

「風連凰!動け!動くんだ!!」

「まぁ、そんな強いもんやないから、そのうち動くやろ」

(そのうちだと!?戦闘中においてはコンマ何秒か動けないだけで命取りだというのに!だが、幸いにも奴の武装は全て破壊している!どんな攻撃だろうと……)

 瞬間、再びケントの戦いぶりが頭を過った。

(自分でとどめを刺すつもりなら、こいつならもっと早いタイミングで使っていたはずだ!だとしたら……!!)

 フルメヴァーラは拘束具と化した風連凰のマスクの中で眼球だけ動かし、周囲を見渡した。すると……。

「!!?」

 公園の外から、周囲に光の粒子を巻き散らし、背部から伸びた大砲でこちらに狙いをつけている黄色と黒の大柄なマシンを発見する。

「あれは……!?」



 時を少し遡り、フルメヴァーラの暴挙を止めるために、土地勘のあるトピが運転する車で公園を目指していた時のこと……。

「トピ、運転中悪いけど、ちょいと手を出してや」

「はい?」

 理由はわからなかったが、トピは言われるがまま片手をハンドルから離し、手を横に出した。

 後部座席にいたケントはその手に腕輪を置く。

「これは……」

「ケントセレクションの一つ、バルランクス・ギガキャノンや。こいつの火力は凄いで!贔屓目に言わせてもらうと、ドラグゼオにだって負けておらん」

「へ~それは凄いですね」

「まっ、破壊力のことだけ考えた結果、取り回しは最悪……くそ重いし、一発撃つのに、滅茶苦茶時間かかる……これをお前に預けておく」

「自分にですか?」

「ドラグゼオ抜きのこの面子で、フルメヴァーラが一番警戒するんは、一番の実力者であるエクトルさん……やなくて、一番何をしてくるかわからんワイや」

「だな」

 ケントの隣でエクトルが腕組みしながら相槌を打った。

「ワイが複数のピースプレイヤーを使いわけることを奴は知っとる。きっとワイが姿を見せんと、遠くからそいつで狙い撃とうとしても警戒されとるから、勘づかれてしまう。やけど、逆にワイが目の前にいたら……」

「目の前のケントさんに注意がいって、狙撃ができるということですね」

「せや。ぶっつけ本番で悪いけど、ワイが動きを止めた隙に、なんとかそいつのフルパワーシュートを隊長さんにぶち込んでくれや」

「作戦はわかりましたけど、その隙ができたかどうかは、どう伝えるんですか?普通に通信ですか?」

「いや、また妨害電波でも流されてるかもしれんし……ここはド派手に、空に閃光弾でもぶち上げるわ」



「トピ・ユロスタロか……」

 現在に戻り、いまだ動けずにいる風連凰の中で自分に狙いをつけるバルランクス・ギガキャノンを目にしたフルメヴァーラは積み重ねた経験から、今までのこと、これから起きるであろうことを全てを察した。

「さっき閃光弾を外したのはわざとか!!」

「ご名答。けど、気づくのが少し遅かったな」

「くっ!?」

「あんたは言った、ワイじゃあんさんは倒せないと。でも……ワイらならどうや?」

「貴様最初からそのつもりで……!!」

「せや!全てはワイの手のひらの中!思いの丈を全部ギガキャノンに込めて、ぶち込んだれや!トピ!!」

「……はい!」


ドシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥツ!!


「!!?」

 ギガキャノンが放たれた光の奔流は空を駆け、大気を焦がし、そして桃色の鳳凰を飲み込んだ……。

「今度こそ……やったか?」

 普通の相手ならば、そんな疑問など思う必要のないほどの致命の一撃。しかし、今回の相手は規格外の風連凰……ケントの不安は拭えなかった。

 そして悲しいかなその不安は的中してしまう。

「……たし……」

「……え?」

「わたしと風連凰は貴様らごときに負けるわけにはいかないんだ!!」

「!!?」

 光の中から、自慢の装甲が砕け、溶け、ボロボロになった風連凰が飛び出して来た!来てしまった!

「しぶと過ぎるやろ!!」

 ツムゾルムは臆することはなかった。バーニアを全開で噴いて、迎え撃ちに行く!

「そんなズタボロで!ワイに勝て――」


パンッ!ドゴッ!!


「――る!?」

 ツムゾルムの拳を軽く払いのけると、風連凰はお返しにキックを叩き込んだ!衝撃で黄色と黒のボディーが“く”の字に曲がり、強制的に酸素が肺から追い出される。

「君はよくやったよ、ケント・ドキ」

「ぐうぅ……!?」

「だが……ここまでだ!!」

 桃色の鳳凰はツムゾルムに撃ち込んだ脚を高々と上げたと思ったら、間髪入れずに振り下ろした!所謂踵落としだ!

「風連重落下!!」


ドゴッ!ドゴオォォォォォォォォォン!!


 ツムゾルムはまるで隕石のように地面に凄まじい勢いで追突!公園に大きなクレーターを形成した。

「ぐ、ぐっ……!」

「ほう……まだ意識があるか。だが……戦闘継続は無理そうだな」

 声を荒げることなく、天から地を這うツムゾルムを見下ろし、語りかける。この立ち位置こそが勝敗を何よりも明確に示していた。

「……ちっ!惜しかったな~、もう少しやったのに」

「あぁ、もう少し風連凰の回復が遅かったら、もう少し防風輪の発動が遅れていたら……戟だけでなく、わたし自身も果てていただろうな」

「ワイとトピの二人がかりなら、なんとかなると思ったんやけど……現実は厳しいな」

「君達はよくやったよ。けれど、これまで。そこで事の成り行きを見ていろ」

「せやな。そうさせてもらうわ」

「……ずいぶんと素直だな?口だけでも、抵抗し続けると思ったが」

「そりゃあ素直にもなりますよ……あんたがドラグゼオにやられるところを見られるんやから」


ボオォォォォォォォォォォォォッ!!


「!!?」

 耳元に聞こえる炎を噴射する音!噴射しながら、こちらに飛んで来る音!

 その不愉快な音色を聞いた瞬間、フルメヴァーラはケントの本当の作戦にようやく気付く。

「貴様!!」

「言ったやろ?ワイらで勝つって」

 黄色のマスクの下で不敵な笑みを浮かべるケント。

 その前に灰色の翼を生やした桃色の竜が降臨する!

「定刻通り……ではないですけど、ドラグゼオwithハネドラグ、ただいま参上…って、これ前にもやりましたね」


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