集結する力
どこか似ているドラグゼオと風連凰、二体の桃色のピースプレイヤーは再び対峙した。決着をつけるために……。
「遅過ぎや」
「すいません」
「罰として終わったらビュッフェ奢れや」
「これからケントさんの命を助けることになるんで、ぼくからあなたへの貸しの方が大きいです。むしろ奢ってください」
「どこまでケチやねん。つーか、こんだけお膳立てしてやったんやぞ」
「……ですね」
激しい連戦で風連凰は全身ボロボロ、満身創痍の状態だった。体力も大幅に消耗し、まるで……。
「まるで昨夜のドラグゼオみたいですね」
「意趣返しのつもりか……?確かにわたしも風連凰も昨日の君のように万全じゃない。だが、君もこの短期間で完全に回復したとは思えない」
「ぼくの見立てでは、今のあなたを倒すには十分すぎるくらい休めたと思いますが」
「ただの強がりか、それとも……」
「ごちゃごちゃ言ってないで、その身体で試してみればいいでしょうが!!」
先手を取ったのは桃色の竜!体と同色の炎を噴き出し、風連凰へと突撃する!
「羽翔扇!」
対する桃色の鳳凰は巨大な扇を召喚すると、身体を捻った……あの時のように。
「落ちろ!蛇!!」
ブオォォォォォォォォォォォォッ!!
羽翔扇を振ると、凄まじい風が巻き起こり、周囲に一気に広がった、これまたあの時のように。しかし……。
「同じ手は食らうか!!」
今回はドラグゼオは完全に回避!噴射する炎の先にさえ、風を触れさせなかった!
「ちっ!!」
「はあっ!!」
ガァン!!
竜の拳を鳳凰は扇で受け止めた……が。
「もう一丁!!ドラグゼオ式サマーソルトキック!!」
ボッ!ガギィッ!!
「――ッ!?」
竜はさらに踵から炎を噴射し、宙返り!扇を下から蹴り上げ、弾き飛ばす!
「くそ!羽翔扇が!!」
「もう一つ!おまけ!!」
ドラグゼオは一回転し終えると、直ぐにまたパンチを撃ち込んだ!
「はしゃぐな!!」
ブゥン!!
風連凰は空に飛び上がり回避!
「ガンドラグ!!」
ドラグゼオは愛用の複合兵装を召喚!迷いなく風連凰に銃口を向ける!
「縦一文字葬炎弾!!」
「無駄だ!防風輪!!」
風連凰は自身の前方に渦巻く風の盾を生成した……した瞬間に、この状況のおかしさに気付く。
(炎が効かないことは、奴は痛いほど理解しているはず!今叫んだ技も昨日無効化したもの!だとしたら!!)
シュル!ガシッ!!
「!!?」
風連凰の脚に細長い炎の糸が絡みつく!盾を避けてガンドラグから伸びた炎の糸が!
「嘘つきが!!」
「上から目線でしか人を見ないから、肝心なところを見落とすんですよ!空を飛ぶ気持ち良さはわかりますが……たまには地上に降りて来い!!」
グンッ!ドゴオォォォォン!!
「――がはっ!?」
フレイムワイヤーを引っ張り、無理矢理鳳凰を住処から引きずり落とす!ツムゾルムの時ほどではないが、公園に新たなクレーターが刻まれる。
「こんなセコい手に!!」
ブオォッ!!
風連凰は脚部に風を発生させ、炎の糸を跡形もなく消し去ると飛び起きるように立ち上がった。
「桃闘拳、ドラグゼオ式フリッカー」
「ッ!?」
立ってまず視界を支配したのは桃色の竜!半身になり、振り子のように揺れる右拳は柔軟かつ軽やかにしなり、四方八方、あらゆる方向から風連凰に襲いかかる!
ガンガンガンガンガンガンガンガン!!
「――ぐっ!?」
変幻自在、それでいて正確無比な打撃に鳳凰は惨めに身体を丸め、防御を固めることしかできなかった。
(強い……!わたしの想定よりも回復していたのか……!?否、だとしたら今の弱ったわたしのガードなど無理矢理抉じ開けられているだろう。あくまでお互いの体力はイーブン……なのに差が出る!何故か!?わたしの動きを完璧に見切っているからだ!
昨夜、あの短い手合わせだけで、こいつはわたしの動きを全て把握してしまったんだ!
わたしはトモル・ラブザという男はドラグゼオという強力なピースプレイヤーを装着できるから強いのだと思っていた。
しかし!それは大きな勘違いだった!こいつが強いのは、ドラグゼオという強力なマシンの性能を十全に引き出せるトモル・ラブザの経験と知識、センスの賜物!
わたしはトモル君を過小評価していた……なんと愚かな……!!)
悔しさと情けなさで歯噛みするフルメヴァーラ。
一方で戦闘に特化した彼の思考は、この苦境を覆し、勝利するための策を冷酷に弾き出していく。
(彼に勝つには、これしかない……!卑怯と罵られようが……これしかない!!)
「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」
ブオォォォォォォォォォォォォッ!!
「――ッ!?」
サンドバッグ状態だった風連凰は全身から暴風を発生させ、ドラグゼオを吹き飛ばし、脱出!
再び本来の居場所である空に飛び上がると、両手のひらを合わせて、下にいる桃色の竜に向ける!
「ドラグゼオ……君は強い……強過ぎる!君を倒すためには、この風連凰最強の必殺技を放つしか手はない……!」
桃色の鳳凰の手の中に風が集まり、凝縮していき、小さな桃色の球を生成した。
「万里桃風……これがわたしの最高の攻撃」
(あれは……ヤバい!)
ドラグゼオは瞬時にそれがこの状況をひっくり返し、終わらせられる破壊力があることを看破した……した上で。
「だからどうした!そう言われて、何もせずに当たってやるような間抜けにぼくが見えるのか!?」
ハネドラグにエネルギーを集中。破壊力は凄かろうが避けてしまえば、何ら問題ない。そして、避けられるだけのスピードを自分は持っていると高を括っていた。しかし……。
「避けられるものなら、避ければいい。その場合……君は助かっても、君の友人は命を落とすことになる」
「!!?」
振り返り、肩越しに背後に倒れているツムゾルムの姿を確認すると、今の今まで感じていた余裕や闘志はどこかに吹き飛んでしまった。
もし自分が回避したら、あの技は背後にいる同僚に……。
「しまった!?ケントさん!!」
「ケント・ドキ、君のせいでここまで追い込まれたが、結果として君のおかげで勝利を得ることができた……!」
「やろう……!」
「そこまで堕ちたか!ラスムス・フルメヴァーラ!!そこまでして……今まで必死に守って来た国民を虐殺したいのかよ!!」
「国を再生するためには、痛みが必要なんだよ!!」
「そんな理屈……わからない!わかりたくもない!!」
「わかってもらおうなどと思っていない!わたしはわたしの信じた道を行く!その邪魔をする奴は……消し飛ぶといい!万里桃風!!」
ボォン!!
射出された桃色の球は容赦なく、混乱の最中にいるドラグゼオへと接近していく!
「くっ!炎竜壁!!」
桃色の竜は咄嗟に炎で壁を作った。けれども……。
「無駄だ!風連凰の風は全ての炎を吹き消す!」
ボォン!!
「ッ!?」
桃色の風の球に触れた瞬間、跡形もなく消し飛ばされてしまった。
(ドラグゼオの炎では防御も迎撃もできない!このままもろに食らったら、ぼくは……!?でも避けたら、ケントさんが……!?)
答えは出ないまま遂に桃色の球はドラグゼオに到た……。
「聖槍風車!!」
ボオォォォォォォォォォォォォッ!!
「な――」
「何!?」
万事休すかと思われた瞬間、ドラグゼオの前に四本の槍が飛来、そして回転!それが風連凰最強の必殺技を受け止めた!
「エクトルさんか!」
「そうだ!!」
声が聞こえたのは背後!パラディジェントはツムゾルムを肩に担いで、その場から離脱していた。
「ケントはもう大丈夫だ!だから君も!そう長くは持たない!!」
「はい!!」
指示通りドラグゼオが移動すると、限界直前の槍もそそくさと退散。
再び推進力を得た桃色の球は誰もいない空間を通り過ぎると、ツムゾルムのいたところに着弾した。
ブオォォォォォォォォォォォォッ!!!
「――ッ!!?」
「なんて威力だ……!」
着弾すると同時に球は凝縮していた風を解放!地面を大きく抉り、周囲にあるもの全てを無差別に暴風で引き裂いた。
「くそ!我が最大の一撃が……!ならばもう一度!!」
風連凰は第二撃を放とうと構える……が。
「させるかぁぁぁぁッ!!」
ドラグゼオ爆進!ガンドラグを再召喚、グリップから炎の刃を発生させながら、脇目も振らず一直線に突っ込んで来る!
(あの速度……回避はできない……)
「だが!相手が炎ならば!!」
風連凰は攻撃を中断、代わりに渦巻く風の盾を生み出し、防御を固めた。
「防風輪なら!あらゆる炎を!!」
「トモル君!受け取って!!」
「!!?」
どこからともなくデサフィアンテ来襲!からの愛銃イザワスペシャルをドラグゼオへと投げる!
「タモツさん……ありがとう!!」
イザワスペシャルを左手に構えるとビームソードを発生!そしてさらに加速!
「二刀流だと!?しかもあれは!炎ではないあの剣は!?」
「でやあぁぁぁぁぁッ!!」
ザザンッ!!ブワアッ!!
「ッ!?」
イザワスペシャルがXを描くと、光の刃が防風輪を四等分し、霧散させた!
つまり風連凰の防御が失われたのだ!
「く、くそおぉぉぉぉぉぉっ!!」
「エクススラッシュ!デュオ!!」
ザザンッ!!
「……がっ!?」
風連凰にもまた炎の刃によってXが刻まれた……。
その一撃で、力を失った桃色の鳳凰は地上へと落下すると、機械鎧から光の粒子、そして指輪へと姿を変える。活動限界を迎えたのである。
「トモル君!」
「タモツさんですよね?とにかく助かりました」
デサフィアンテは天から降りて来るドラグゼオに駆け寄ると、貸し出していた愛銃を返却された。
「終わったね」
「いや、まだ……」
「ミエドスティンマのコアストーンよ!!」
「!!?」
満身創痍のフルメヴァーラはその傷ついた肉体に鞭を打ち、毒石を高々と掲げる。そしてそれに応えるように石は妖しい輝きを放ち始めた。
「あいつ!まだ!!」
悪あがきとしか言いようのない暴挙を止めようとデサフィアンテは飛び出……。
「必要ないです」
飛び出そうとしたが、ドラグゼオが手を翳して制止した。
「どうして止めるんだ、トモル君!?あいつをこのままにしておいたら!!」
「まだ終わってない……だけど、すぐに終わります。ぼく達よりも幕を引くべき人の手によってね」
「え?」
「猛毒の石よ!その力でこの国に蔓延る毒虫どもを駆除――」
バシュウン!!
「――しっ!?」
狙撃一閃!フルメヴァーラの腕ごと毒石を弾丸が吹き飛ばす!心とのリンクが途切れたコアストーンは光を失いながら、コロコロと地面を転がった。
「がっ!?この狙撃は……」
フルメヴァーラは弾丸の来た方向に視線を移動させた。
そこにはボロボロの機仙・ダブル甲と、銃口から白い煙を昇らせているゲメッセンの姿が……。
「そうか……やはりトピ、君か……この国の人間に、わたしの部下である君に我が野望が砕かれるとは……まぁ、他所の奴にやられるよりは納得が……いく……」
「隊長……」
一気に血液を流出したフルメヴァーラは意識を失った。
倒れる寸前、彼の顔は優しく自分に微笑みかけているように、トピには見えた……。




