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No Name's Trust  作者: 大道福丸
禁忌の魔石と不死殺しの炎
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眠りにつく者

 戦いを終えたトモル達一行は再びエレシュキガルとオルコの眠っていた遺跡にやって来た……別れを告げるために。

「これで……よし」

 見知らぬ文字の書かれた札を張り付けられたエレシュキガルを台座に置くと、ガシャガシャと箱に変形し、魔石の姿を隠しながら、床に沈んでいった。

「故障していた部分を修理したから、もう簡単には手を出せないはずだ。族がエレシュキガルをどうこうする前に我が目覚める」

「まぁ、そんなことになる前にウレウディオスが追っ払うけどね」

「本気でこの遺跡を守る気なのか?メルヤミよ」

「当然。またマゼフトのようなのが生まれたらたまったもんじゃないもの」

 あの異形の怪物との戦いを思い出し、メルヤミは思わず苦笑いを浮かべた。

「あまり現代の人間には迷惑をかけたくないのだが」

「今さらよ」

「今さらだな」

 オルコもまた自嘲するように口角を上げた。

「……さて、名残惜しいが我は再び眠りにつくとするよ」

「もうちょっとゆっくりしていってもええんやないのか?」

「我は過去の人間、今の時代への干渉は本来すべきではない。こうしてお前達と話すのも避けるべきなのだ」

「……せやな。ワイもわかっておるんやけど……こういうのは苦手や」

 ケントは寂しさを誤魔化すようにトレードマークである黄色と黒に染められた髪をかき乱した。

「もっとあなたと酒を酌み交わしたかった」

「我もだよ、ジョゼット。この時代の酒は美味かった。特にお前と一緒に飲む酒は格別だった。監視役がお前で良かったよ」

「気づいていたか」

「気づいていたさ」

「……そうか」

 結果的に一番オルコと長い時間を過ごしたジョゼットの寂しさもまた格別だった。しかし、彼はそれをおくびにも出さなかった。

「……これ以上話していると決意が揺らぎそうだな。とっとと眠りにつくことにしよう」

 オルコは迷いを振り払うようにみんなから背を向けると、元いた棺の中に入っていった。

「それでは諸君……さよならだ」

「眠るんならおやすみじゃね?」

「あぁ、そっちの方が……別れる感じがしなくていい」

「……そうだなアピオン、トラウゴット。おやすみだ」

 そう言うと、棺は締まりオルコは再び深い眠りにつく、出会うはずではなかった友に見送られながら……。

「あぁ!!」

「「「!!?」」」

「オルコさんストップ!ちょっとタイム!!」

 しんみりとした雰囲気を我らがトモル・ラブザがぶっ壊す!手でタイムのジェスチャーを取って、オルコを必死に止める。

「なんだ、トモル……いい感じだったのに」

「重々わかってますよ、空気が読めてないことは。でも、オルコさんに聞きたいことがあったのを思い出しました!今聞き忘れたら、ぼく一生後悔します!」

「我に聞きたいこと?好きな食べ物とか女性の好みとかか?」

「違いますよ!初めてここで会った時……ぼくのご先祖様について喋っていましたよね?」

「あぁ、人間を裏切りオリジンズ側についた桃色の竜のことか」

「それです、それ!!色々あってすっかり訊くタイミングを逃していましたが、知っていることを教えてください」

「教えるも何も大体察しがつくだろ。我が血相変えて、お前からエレシュキガルを守ろうとしたってことは……そういうことだ」

「エレシュキガルを……もしかしてぼくの先祖は誰かを生き返らせようとして……」

 トモルの答えに、オルコは力強く頷いて肯定を示した。

「我が聞いた話では、桃色の竜ラブザは愛する者を失い、その者を蘇らせてやると人間抹殺派のオリジンズに唆され、人類側を裏切ったとされる。だから我もてっきりお前が先祖のようにエレシュキガルで誰かを生き返らせようとしているのかと」

「そう……ですか」

 真実を聞いたトモルの顔が綻んだ。今までずっと気になっていた胸のつっかえが取れたように穏やかな笑みを浮かべた。

「その表情からすると、納得のいくものだったようだな、先祖の行為が」

「納得というと語弊がありますが、ずっと地位とか保身、人間に対する不信感なんかが理由だと思っていたんで、それよりかはまだ理解できるかなって。大切な人に生き返って欲しい気持ちは……わかります」

 トモルの脳裏に父親の顔が浮かんだ。もしもっと早くエレシュキガルのことを知っていたら……などと考えてしまう自分を否定できなかった。

「我としても気持ちはわかる……わかるが、生と死の輪廻はこの世界の絶対的な理、人間ごときが覆すべきじゃない」

「わかってますよ。理由を聞いて、先祖のしたことが改めて間違っていたと再認識しました」

「だとしても卑屈になる必要はない。先祖は先祖、お前はお前だトモル」

「それもわかってますよ」

「ならばよし」

 トモルがニコッと微笑みかけると、オルコもまた微笑み返した。

「そんなルーツを持つお前が不死殺しの力を手に入れたのも運命だろう」

「そう言えば皮肉だとか言ってましたね」

「この世界にはエレシュキガル以外にも死者を蘇生させる力がある。それらが悪意を持って使われた時に止めるのが、お前とドラグゼオに与えられた役目なのかもな」

「じゃあ、そんなことが永遠に起きないことを祈りながら、日々生きていくことにします」

「ならば我もまた交わるはずのなかった友の細やかな願いが叶うことを祈りながら眠りにつこう」

「今度こそ本当に……」

「あぁ……おやすみだ」

 オルコが目を瞑ると棺が閉じ、壁の中に沈んでいった。

 トモル達はそれを見続けていた。彼の穏やかな眠りがいつまでも続くことを祈りながら……。

「おやすみなさいオルコ。誇り高き守り人にして、ぼくの大切な友人……」


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