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No Name's Trust  作者: 大道福丸
傭兵達の日常
110/135

弔いは盛大に⑦ ワイルド

「喰らえ!!」


バババッ!!ババババババッ!!


 第二ラウンドの先陣を切ったのはアイトシルト。アサルトライフルを召喚するや否や哀れな亡者に浴びせかける。

「!!」


キンキンキンキンキンキンキンキン!!


「ちっ!」

 けれどFKTワイルドの装甲を貫くことはかなわず。その逞しい見た目に違わぬ硬さで難なく弾丸を弾き飛ばす。

「護衛を主眼に置かれて開発されたアイトシルトでは、奴の防御を破れそうにない」

「ならばメインアタッカーは私が務めます!援護を!!」

「了解!」


バババッ!バババッ!!キンキンキン!!


「…………」

 ガンメタリックのマシンは再び銃を乱射。結果は変わらず全て弾かれてしまうが、その場から動けなくする程度には効果があるようだ。

「本命いくぞ!!」

 隣で青黒のマシンが大剣と大砲が一体にになったバカみたいな特製複合兵装を呼び出し、砲口をワイルドの胴体のど真ん中、中心点に向けた。

「これならどうだ!!」


ボォン!!


 発射された砲弾はワイルドの平均的なピースプレイヤーよりも大きめな頭よりもデカかった。もちろんサイズに比例して威力もかなりのものだ。

(当たれば終わる……まではいかなくとも)

(かなりのダメージを与えられるはず。だから……当たってくれ!!)

 悲しいかな二人の祈りは天には届かなかった。


ガパッ!!


「「!!?」」

 平均的なピースプレイヤーよりも大きめなワイルドの頭が縦に開いた。中には砲口が隠されていた。


バシュウッ!!ドゴオォォォォォォン!!


「――ッ!?」

 頭部の隠し武器から発射された一筋の光が砲弾を貫き、爆破。攻撃は失敗し、アイトシルトとワイルドの間に煙のカーテンがかかる。

 一方ブラーヴ・ソルダ改二はというと……。

「ならば接近戦だ!!」

 すでに次の行動に移っていた!

 もう一本得物を召喚し、二刀流にすると煙を突き破り、ワイルドへと右手のは上から下に、左のは左から右に薙ぎ払うように、片方でも当たれば大抵のピースプレイヤーを再起不能にできる攻撃を繰り出した!

「!!」


ガッ!ガァン!!


「なっ!?」

 それをワイルドは刃を掴んで受け止める。片方だけじゃなく、両方を同時にだ。

「………」

「勝ち誇っているのか……?いい気になるにはまだ早いぞ!ふん!!」

 ならばとブラーヴ改二は全身に流れるエネルギーを両腕に集中させ、力任せに押し切ろうと試みた。しかし……。

「!!」


ググッ……


「ぐうっ……!!」

 いくら力を込めても身じろぎ一つさせることもできず。腕力に自信のあるジョゼットにとってはこれ以上ない屈辱であった。

(見た目からパワー特化型だと思っていたがこれほどとは……!!アピオンの話ではこれがオリジナルの刑天に最も近いようだし、私一人ではかなりの苦戦を強いられたことだろう。私一人ならな……!)

 ブラーヴ改二が交戦している間にアイトシルトはワイルドの背後に回り込んでいた。ナイフを片手に息を潜めながら……。

(一人ではきつくとも二人なら。ましてやタッグパートナーがあのハインツ・ベルクヴァインならば、敵などいない!情けなく卑怯極まりないが勝負に徹しさせてもらうぞ名も知らぬ戦士よ!!)

(今だ!!)

 アイトシルトは飛びかかり、ナイフを禁忌の兵器の背中に突き立てようとした。


グルン!!


「「――ッ!!?」」

 瞬間、ワイルドの頭部が人間ではあり得ない真後ろへと回転!砲口を攻撃をしようと動いた直後のアイトシルトに向けた。

「避けろ!!」

「シールド!!」


バシュウッ!ザシュウッ!!


「――ぐあっ!?」

 アイトシルトは驚異的な反応速度で回避運動に切り替え、さらに身を覆うような巨大な盾を召喚したが間に合わなかった。

 レーザーは回避も防御もすり抜け、ガンメタリックの肩口を抉り、溶かす。

「ベルクヴァイン殿!!この!!」


ガァン!!ブゥン!!


 仲間を傷つけられた怒りがジョゼットの更なる力を呼び起こした。強引にワイルドの手を振り払うと、今度は二本とも縦に、上から平行を保ったまま真っ直ぐと撃ち下ろした!


ヒュッ!ドゴオォォォォォォォン!!


「ちいっ!!」

 だがその憤怒の二撃も不発に終わる。ワイルドは機敏にバックステップをして、空振りさせると、大剣は何の罪もないアスファルトを砕き割った。さらに……。


バシュウッ!ジュウッ!!バギィッ!!


「くっ!?」

 頭部レーザーの引き撃ち!ブラーヴ改二も咄嗟に左の得物で防御したが、そのせいで大砲兼大剣は貫かれ、へし折られ、破壊されてしまった。

「よくも我が愛剣を!!」

 その破壊された愛剣をぶん投げる!こんな状態にしてくれたワイルドの顔面に向かって!


バギィンッ!!


「!!?」

 さすがに反応し切れなかったのか、ワイルドの首は勢い良くぶつかってきた質量の塊に耐えられず、グニャリと折れ曲がる。

「ちっ!刎ねられなかったか!!」

「そんな時のためにわたしがいる!!」


ガァン!!バギィッ!!


 アイトシルトの駄目押しの飛び回し蹴り!綺麗な弧を描き、炸裂したキックはサッカーボールのようにワイルドの頭をブラーヴ改二の前に弾き飛ばした。

「ナイスパス!」


ザンッ!!


 それを残った大剣で一刀両断!散々苦戦させられた恨みを込めてレーザー砲ごと頭を叩き切った。

「ここから一気に盛り――」

「!!」

 首無しになったFKTワイルドは両腕を広げ、対角線上に位置する敵機に今度は手のひらの砲口を突き出した!


バシュバシュウッ!!


「――ぐあっ!?」

「がっ!?」

 頭部のものより元々威力が低いのか、それともチャージが万全でなかったからか、放たれた光線はブルーもガンメタリックも貫くことができなかった。それでも相応の衝撃があったようで二体のマシンは不様に地面を転がる。

「ペースを掴ませてくれないか……」

「ベルクヴァイン殿!少し下がってください!」

「何!?」

「パワーにはパワーを。ここからの私は少し凶暴になります……フィジカルブースト!!」

 瞬間、ブラーヴ改二の内部で針が飛び出し、ジョゼットの身体を突き刺すと、特製の薬剤を注入した!すると身体中に今までにない力が漲り、神経が鋭敏になる!

「あれはAMOUの……」

「こいつは俺が倒す!!」

 ドーピングにより精神が高揚し、それ以上に身体能力が増強されたブラーヴ改二は両手で得物を握ると、踏み込みと同時に腰を回転させ、思い切り横に振るった!

「オラアッ!!」


ブオオォォォォォォン!!


「………」

「くっ!?なんて風圧だ!?」

 渾身の一太刀はまた空振りに終わる。しかし、えげつないパワーアップっぷりを証明するように凄まじい暴風を巻き起こした。

「ちっ!外したか!だが、すぐにぶったぎってやるよ!!」


ブオオォォン!!


 青黒のマシンは上段に大剣を構えたと思ったら、即座に振り下ろした!その速度と破壊力は先ほどを遥かに越えていた。なのに……。

「!!!」


ガギィン!!!


「な、何いぃぃぃぃッ!!?」

 ワイルドはそれを刀身を両手のひらで挟み込むことで止めた。所謂真剣白刃取りという奴である。

「俺の剣を二度も……」

「……フルパワーモード解放シマス」

「!!?」

 さらに悪夢は続く。

 淡々とした電子音声が流れると、FKTワイルドの全身の装甲を展開し、大柄な身体がさらに一回り大きくなる。

「変形完了」

「こけおどしだ!そんなも――」


ブゥン!!


「――の!?」

 こけおどしではないと証明するようにワイルドはそのまま大剣ごとブラーヴ改二を持ち上げた。ピースプレイヤーの中でも重量級とされるマシンと得物を同時に軽々と持ち上げたのだ!

「ちっ!!」

 このまま剣を握っていると投げ飛ばされると判断したブラーヴ改二は不服だが自らの得物から手を放した。すると……。

「………」

「こいつ……!!?」

 あろうことかワイルドはそれを空中に放り投げて一回転させてキャッチ。まるで元々自分のものだったかのように大剣を構えた。

「そういう風になった結果か、それとも生前からそうなのかは知らんがずいぶんと挑発的じゃないか……!!自分の方が上手く使えるとでも言いたいのか?」

「!!!」

 その通りだと言わんばかりに、さっきのブラーヴの動きをトレースしてワイルドは大剣を撃ち下ろした!

「てめえができて俺にできないはずが……」

 ドーピングによって気が大きくなっているジョゼットは真剣白刃取りをやり返そうと手のひらを開いた。その瞬間であった。


ザンッ!!


「ッ!!?」

 真っ赤な血を噴水のように吹き出しながら真っ二つに切り裂かれる自分の姿を幻視したのは。

(ミスった!?この一撃は受け止められるレベルじゃない!!?)

「!!!」

(終わっ――)

「はあッ!!」


ガァン!!ザンッ!!


「!!?」

「ッ!!?」

 刃が手のひらの間を通りすぎ、ブラーヴ改二の脳天に命中しそうになったギリギリの瞬間、横からアイトシルトの盾が飛んで来て青黒のマシンを弾き飛ばし、代わりに凶刃によって七三に斬り裂かれた!

「ベルクヴァイン殿……」

「こいつは同じ土俵で戦うべき相手ではない!野生には知性……ワイルドにはインテリジェンスだ!!」

(くっ!その通りだ……つい勝負を焦ってしまい、俺自身が亡者になりかけた……!)

 ブラーヴ改二は、ジョゼットは自分の安直さを恥じ、地面に着いた拳をワナワナと震わせた。

「そのパワーは最もいいタイミングで爆発させろ!!そのタイミングは……わたしが作る!!」


バババッ!!ババババババッ!!


「…………」

 アイトシルトは懲りずにアサルトライフルを浴びせかけた。相変わらず一切効いていないが、苛立ちはするようで、注意がブラーヴ改二から逸れた。

「それでいい!死人なんかに言いたくないが、わたしの所に来い!!」


バババッ!!ババババババッ!!


「!!」

 その言葉を理解しているかわからないが、ワイルドは踵を返し、ブラーヴ改二に背を向けてアイトシルトへと走り出した!

「!!!」

 そして勢いそのままに首を刎ねるような横薙ぎの斬撃を繰り出す!

「はっ!!」


ブゥン!グルン!!


 それをアイトシルトは重厚な見た目に似合わぬ軽快さでしゃがみ、前転し、躱し、後ろに通り過ぎた。

「こんなになってしまって……」

 そして先ほど分割された盾の七割の方を手に取ると、ワイルドの方を向き直す。

「お前の動きを冷静に観察させてもらった。もう攻撃を当てられると思うなよ」

「!!!」

 度重なる挑発に怒りを感じたのかは定かではないが、ワイルドはその名の通り野性的な斬撃を連続で放つ……が。


ブンブンブンブンブンブンブンブン!!


「ほらな」

 アイトシルトには当たらない。全て紙一重で避け、ガンメタリックの装甲の表面を空振りの余波が起こした風が撫でるだけだ。さらに……。

「避けるだけでは見切ったとは言わない!!」


バババッ!!ババババババッ!!


「!!?」

 さらに合間に銃撃を挟み込む。やはりダメージを与えられてないが確実に胴体に命中させる。

「痛みや恐怖は感じないみたいだが、疲れはどうだ?いつまでそのハイペースがもつ?」

「!!!」


ブンブンブン!!ババババババッ!!


 そこからは繰り返しだった。アイトシルトが避け、反撃でアサルトライフルを発射するがFKTワイルドが止まる様子はない……。

 ジョゼットはその攻防をただただ集中して見続けていた……脳みそをフル稼働させながら。

(ベルクヴァイン殿がタイミングを作ると言ったのだから、その時は必ず来るはず。きっとあの人には決着までの道筋が見えているのだろう。俺は……私がやるべきはあの人の作戦を確実にするために、いつでも動けるように準備すること……!!)

 頭は動かしても、身体は動かさずにリラックスして、少しでも体力を回復させようと努める。全ては自分を信じてくれたベルクヴァインの期待に応えるために。

「!!!」

「はっ!!」


ブンブンブン!!ババババババッ!!


 ジョゼットが考えをまとめている間も戦況は変わらなかった。その場にいる生者はこれがまだしばらく続くと思い始めていた。

 しかし、均衡は名も知らぬ戦士の行動によって一瞬にして崩れ去る。

「!!!」

「当たら――」


ピタッ!!


「――ん!!?」

 撃ち下ろされた大剣が急停止!アイトシルトの頭上でピタリと止まる!

 予期せぬ動きにこちらも思考を止めてしまったベルクヴァイン。そんな彼に即座に片手を離して、ワイルドはフック気味のパンチを繰り出した!

「!!?」


ヒュン!!


「くっ!!?」

 けれどもベルクヴァインの思考はギリギリで再起動を果たし、肉体に回避運動を取らせた。アイトシルトは仰け反り、ワイルドの拳は眼前を通過する。

「危なかっ――」


ザシュッ!!


「――た!!?」

 ベルクヴァインの脇腹に激痛が走る。

 反射的に痛みの発生源に視線を落とすと、鋭利な物体が突き刺さっていた。ワイルドの背中から尻尾のように伸びる物体が。

 瞬間、理解する。剣の寸止めも、パンチもこの攻撃から、本命から目を逸らす二重の囮だったのだと。今さら気づいても遅いが。

「………」

 そんな彼に、目の前で許しを乞うように膝をつくアイトシルトに勝利を確信したようなワイルドがとどめの一撃を放とうと、大剣を振り上げた!


バギィッ!!


「!!?」

 瞬間、FKTワイルドの脇腹に衝撃が走る。

 反射的に衝撃の発生源に視線を落と……したいが、頭部を斬り落とされているのでワイルド自身は結局何が起きたか理解できなかったが、そこはボロボロと装甲が崩れ去り、穴が空いていた。

「どうやら考え方が似ているようだな。わたしもとどめの一撃を食らわせる布石としてお前の脇腹を狙っていた。弱い攻撃でもあれだけ当てれば、穴も開くさ」

 アイトシルトは適当に銃を乱射しているように見えたが、その実一ヶ所に、脇腹に弾丸を集めていた。それにワイルドは一切気がつかなかったのだ。

「痛みを感じないってのも考えものだな。そんなになるまで放っておくなんて、わたしが医者だったら匙を投げるぞ」

「!!!」


バキバキィッ!!


 それでも痛みを感じないメリットがある!こうして傷口を広げながら攻撃できるところだとワイルドはダメージが大きくなることなど構わずに大剣を振り下ろした!

「満身創痍でハインツ・ベルクヴァインの首を取れると思うな!!」

 対するアイトシルトは盾を構えた。

 刃を受け止めるためだけでなく、受け流すために斜めに。


ガッ!ギイィィィィィィィィィィィン!!


「ッ!!」

 ベルクヴァインは力まず、全身を高性能のサスペンションと化して、衝撃を緩和。さらに最適な角度で盾を刃に当てたことでその表面を激しく火花を散らしながら滑らしていく。その結果……。


ガッ!!


 大剣はアイトシルト本体に当たることなくアスファルトへと着地した。

「はっ!!」


ガギィ!!


「!!?」

 アイトシルトは即座に立ち上がると、剣を踏み、持ち上げられないようにする。

 この瞬間こそ、ベルクヴァインが思い描いた力を爆発させる最適なタイミングだ。

「ジョゼットくん!!」

「応ッ!!」

 ブラーヴ改二は先ほど折られたもう一本の大剣の切っ先を手に取ると、ワイルドの背後に飛びかかった。

「!!!」

 ワイルドは剣から手を離し、慌てて振り返るが……手遅れだった。

「オラアッ!!」


ゴッ!ザシュウッ!!


「!!?!!?」

 刃は首があった所から侵入し、胸の奥まで侵入した。肉体と刃の間から鮮血のように火花が飛び散る!

「!!!」

 それでもワイルドは止まらず!最後の力を振り絞って右拳を繰り出した!

「ウラアッ!!」


ザシュッ!!


「――!!?」

 しかしあれだけの攻撃を食らってまともなパンチを打てるわけもなく、ブラーヴ改二の刺付きナックルガードによって横から前腕を刺され、無理矢理止められてしまう。

「もう一丁!!」


ザシュドゴオッッ!!


「!!?!!?」

 さらに伸びた肘に下から右拳を食らわせられ、貫かれ、人体的にはあり得ない方向に折られてしまった!

「!!!」

 だが腕はもう一本ある!ワイルドは今度は左拳を振り抜いた!


ヒュッ!!


 しかし、ブラーヴ改二は刺を引き抜きながらしゃがみ込んで回避。頭上で虚しく風切り音が響く。

「わかっているよ。すでに死んでいるあんたがこれくらいで止まらないことは……だから!!」

 ジョゼットもまた残る力を振り絞り、両拳に込めた。そして……。

「完全に破壊させてもらう!!」


ドゴオッ!バギィンッ!!!


 全力を込めた刺の付いた両拳を叩き込むと、亀裂の入ったワイルドの身体はバラバラに砕け散った。

 先のFKTファイター同様、こうなってはさすがに戦闘続行することはできない……。

「さらばだ、名も知らぬ戦士よ。どうか安らかに眠ってくれ……」

 ジョゼットは足元に転がる亡骸に、祈りを捧げた。


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