妖精さんVS湯兎 ~年末の陣~
さて、そろそろ桜が咲くころである。
桜が咲くころであるが、湯兎が書くのは年末のことである。
新年一回目からぷりぷりエピソードをいれたくなかったので、箸休め。
いいのだ、書きたいときに書きたいものを書くのがこのエッセイであるのだから。
さて。
我が家には妖精が住んでいる。
それもかなりいたずら好きの妖精である。
どんないたずらをするのか。
とびぬけて多いのは、ものを隠してしまうことである。
そして年末、大掃除の時期。
妖精さんはそれはもう、はりきってはりきっていたずらをしかける。
こんな感じに。
「湯兎ちゃん、携帯電話がどこにあるか知らない!?」
湯兎はかたわらの新聞紙を持ち上げて。
「ここ」
「ありがとう!」
「湯兎ちゃん、マスクがどこにあるか知らない?」
「……? これじゃないの?」
「白いのじゃなくてピンク色の……」
「それは見てないなあ」
マスク捜索、失敗。
「湯兎ちゃん、手袋を見なかった?」
「電話機のところにあったよ」
「うーん、そっちの手袋じゃないんだよねえ」
それから数分後、外出用の靴の上にちょんとそろえられた手袋が発見された。
妖精さんの仕業なのだ、妖精さんの仕業なのだ。
異論は認める。
「湯兎ちゃん、はさみどこにあるか知らない?」
「あ。ごめん、私が使ってる」
犯人、湯兎。
バタバタバタ。
ある朝、廊下を走る音がして。
「湯兎ちゃん、お父さんのショールがどこにあるか知らない!?」
なぜそれを私に聞く、母よ。
「……薄紫色?」
「そう!」
「リビング入って奥のテーブルの左側手前にあったと思うよ」
「ありがと!」
右側にあったらしい。惜しい。
しかし、なぜショールの場所を覚えている、湯兎よ。
常から湯兎はけっこう妖精さんのいたずらの邪魔をしている。
湯兎は記憶力がいい。
特に何がどこにあったか、というものの場所の記憶はかなり長く覚えておくことができる。
ゆえに、家族はものを探すとき割と湯兎を頼る。
でも、妖精さんにはそれが気に食わなかったらしい。
いたずら好きの妖精は、大体において、あれがないこれがないと右往左往する人間の姿が見たいのだ。
けっして「あった!」と喜ぶ人の顔が見たいわけではない。
たぶん。
だから、湯兎へのいたずらはこんな形できた。
「ちょっっっと待って妖精さん、私の茶こしどこやったの!?」
茶こし。
茶こし。
皆様なら「え、茶こし?」と思うであろうが、お茶をいれるのが趣味で、日に二回、三回茶こしを使う湯兎にとってはとても、とっても、困る隠しものである。
お願いだから返しておくれ。
切なる願いはへそを曲げた妖精さんには届かなかった。
一か月探してあきらめ、新しい茶こしを購入した湯兎である。
……しかし、茶こし。
隠すにも割と場所を選ぶ隠しものであると思うのだが、なぜ見つからないのだろう。
妖精さんVS湯兎 ~年末の陣~ は、いいところまで行ったが、最後で湯兎の負けであったといえよう。
悔しい。
今回出てきた症状……ASD 空間記憶に優れる




