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襲撃の始まり

 二十日ほど、新居での生活は順調だった。

 塩が取れるようになったのでダラが上機嫌になっている。ここの村からの購入品で、貴重だった記憶があるかららしい。味付けが濃いめになってきたのは少し心配なくらいだ。

 俺はダイの狩りと自分の釣りでたまにはいるステータスアップと耐性などの取得を確認するほかは塩田の面倒をみては温泉につかって戻るという優雅な生活をしていた。

 一つ贅沢をいえば、布が圧倒的に足りない。ダラが麻を刈り取っては処理しているが、まだ布を織るところまでいってない。ふんわりしたバスタオルが恋しい。

 魚たちはレベル1向けなので特性をいくつか入手しただけだが、廃村で蛇たちから得たのとはまた違って居た。例えば毒耐性は主に蛇毒と植物毒だったが、動物性プランクトンのものなど海独自のものが加わった。ふぐのように他の生物から毒をわがものにする生き物が結構いるようだ。

つまり、毒もちが多かったということだ。小鬼漁師の記憶にあたって、処理の難易度の低いものはおっかなびっくりやっつけて食べてみたが、そうでもないものは捨てるしかなかった。いろいろ食べてみての感想だが、有毒の魚のほうがうまいものなのだろうか。

 警戒網に放った小動物たちからは報告はない。

 だんだんのんびりした感じになった。

 魔力リソースも少しづつのびてきている。これは釣りで一メートルくらいある大物のカマスのような魚(無毒、身は少しぱさぱさしているが塩焼きにするとおいしい)を仕留めたときに伸びている。魚からえられるのはほかに「鰓呼吸(鰓必須)」など人体では無理な能力なのであまり意味がない。いずれ人の姿を捨てることも可能になるのだろうか。

 そろそろもう一人くらい召喚できるが、誰を呼ぶか悩ましい。漁師がいいが、人間の漁師より小鬼の漁師のほうがいいのだけどもしここの住人が戻ってきたら死んだ顔見知りに出会うことになる。トラブルしかおきそうにない。

 人間なら大工という選択肢もある。ダイもダラも樫鬼流の日曜大工しかできないから、船の修理はできない。浜に引き上げて無事そうな船も放置が長いので木工の専門家にみてもらいたいところだ。

 船が使えれば人間や魔物の王からさらに遠く逃げることができる。

 そんなことを思いながら釣り竿をにぎっていたら、肩にぽとんと何かが落ちてきた。葉の緑もみずみずしいちぎられて間もない小枝だ。空を見上げると、小鳥が東に戻っていくのが見えた。

 この知らせは人間のような何かがある程度接近したことを示す。せまってくるなら知らせは次々くるはずだ。俺はダラに命じて緊急持ち出しの荷物を持たせた。ダイが戻るのを待って、いったん南西方向の森に隠れるつもりだった。

 だが、小動物たちによる注進はそれっきりだったし、ダイも戻ってこなかった。

 情報空間からダイの情報がごっそり消えていることに気づくのは日が暮れてうとうとしていた時のことだ。

 魔物の王の召喚した鳥をしとめたとき、あの鳥の情報が俺のところにはいった。あれは単に複写されたのだと思っていたが、もしかすると奪っていたのかもしれない。

 つまり、ダイは魔物の王の手先に倒されてしまったということだ。

 小鬼たちの記憶にあった村人狩り、それをここに誰かが戻ってきたことで再開したと見よう。

 魔物の王は気づくだろうか。それだけの注意力や知性があるかどうかわからない。だが、気づかれたらまずいことになるだろう。

 だが、俺は気づいていなかった。彼らの目的は知っている。そして今、ここには二人しかいないということを彼らが気づいているだろうということを。

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