70.地上へ
――ユグドラシルB32層。
レイの行方が分からなくなった二年前。私達は階層を上がり始めた。
最下層ほど魔獣の強さは高く、もちろんノルンにフォローしてもらいながらだけれど少しずつ地上を目指し、ついにあと二日くらいで出られるところまできていた。
(......やっぱり、レイは凄い)
この二年で私は数えきれないくらいの死線を潜った。
そこで見えてきたのはレイの規格外的強さ。
聖騎士の一軍ですら相手にならない魔獣を、彼は全て一人で倒してきた。
しかしそこで一つの疑問が生まれる。ただしくは彼が魔界へ封じられたという情報を聞いたときに。
「......レイはこんなにも強いのに......なんで」
ぼそっと言った私の言葉にノルンが言う。
「負けた理由か。 まあ、大体想像はつく」
「そうなの?」
「うむ。 おそらくレイは影法師の存在を知らなかったんじゃろう。 まあ、仕方のない事だがの」
アトラが聞く。
「その影法師っていうのは?」
「歴史から消された一族じゃよ。 奴らの【影魔法】は魔力や神力、さらにはマナの働きを鈍らせる力がある。 高位の術者であれば、相手のオーラをかき消す事すら出来るからな......レイは影に捉えられマナが使えなかったんじゃないか」
「そんな一族が......聖騎士として学んだ歴史書や学書にも載ってなかったが」
「そりゃそうじゃ。 あれは歴史から葬られた一族だからな。 あの影のオーラはそれだけ脅威的じゃし......しかし、生き残りがいたとはな」
「なるほど......おそらくは暗部って奴だな。 国の歴史の闇か」
「うむ。 ちなみにわしら勇者の血統も影法師一族と同じで、その力故に皆殺しにされた。 いや、皆殺しではないが......とまあ、そんな感じでレイが存在を知らなくとも仕方ないな」
私は唇を噛む。
「でも、それでも......レイが負けるなんて信じられない」
「うむ。 ただの影法師だったらレイの対応力であれば簡単に返り討ちに出来たろうな。 多分、相手が悪かった」
アトラは頷く。
「フェイル達から聞いた情報だと、同時に王と大聖女も行方不明......遺体も無いらしいし、おそらくはレイと共に飛ばされたか。 いずれにしろあの二大勢力も同時に消してしまうとは、ただもんじゃないな、ソイツ」
「んまあ! そんなやべーやつがおるからな、王都では気をつけてな! ......あ、あと地上の魔獣、魔族のレベルがかなり高くなっとるらしいからそっちもな」
「魔界が開いた影響だね。 わかった、ありがとう」
「おう。 死ぬなよ」
ふと差した光。
地上への出口が見えた。
「なるべく早く戻ってくるね!」
ひらひらと手を振るノルンは少し寂しそうだった。
なんだかちょっと可愛い。
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